またか?
あれが鉱山か……。
【探索魔法】で追って行った男を目視で確認すると、鉱山の中には入らずに、その傍に立っている幾つかある建物の一つに入って行った。
鉱山を任せている責任者と帝国が繋がっているのか。はたまた、責任者も洗脳されているのか……。
どちらにせよトバスの言う事を信じるなら、この鉱山のどこかにも転移魔法陣があるんだろう。
そこから逃げられる可能性も大いにある。
それと、ここまで来たらワイズ率いる『猫の額』とも合流した方がいいだろう。
同じ様に【探索魔法】でワイズを探すと、少し離れた場所に反応があった。
「姉さん、お疲れ様です」
「偵察ありがとう。報告貰っていい?」
俺がワイズと合流すると早速報告をしてくれた。
やはりと言うか、鉱山の中に入って行った何人かが、その後出て来ていないと言う事だ。
ここの鉱山は一応食事と休憩もあるらしく、衣食住はそれなりに保証されるらしい。
鉱山送りと言うから、鞭を振りながら重労働を課していると思っていた。
そう言う意味で言えば、まだ人道的なのだろうか?
ともあれ、ワイズ達はそれらを含めて人の出入りを把握していたそうだ。
「それがっすね、別で連れられた奴らはその後に戻って来てないんすよ」
「どう言う事……?」
「朝入って昼飯食いに出て、で昼から入って一日の終わりに出て来ますよね? その一連の流れとは別で、連れられて行った奴がいるんすけど。二回ほど同じ奴が連れて行ったのに、出てくる時は一人なんすよね」
って事は、その鉱山の中に転移魔法陣があるって事で間違い無いのかな?
ともあれ、逃げた男を確保したいと思ったけど、その仲間がここにいるなら誰でもよく無いか?
「どうしやす、突入しやすか?」
どうしてそうなる!
いや、俺も一瞬だけ過ぎったけど、それは却下だ。
んー……。
「ワイズ、あの建物は何のためのかわかる?」
「あれは責任者とかが出入りしている建物っすね」
なる程、ほんの一日二日でよく観ているな、やっぱ優秀なのかな?
そして、その横にあるのが鉱山で働かされている奴らの寝床らしい。責任者達が入っている建物と比べると数段ボロい。
「ワイズ、これから話す事をよく聞いて。このままあの建物から出てこなければ、やりたい事があるから……」
そう言って俺らは火の沈むまでここでやり過ごす事に決めた。
その間に、ベリットとユミルも合流すると、これから行う作戦を伝える。
「いいね、この愛の弓と私の腕の見せ所よね!」
そんな名前じゃ無い。確か、『フォレスト・ボウ』とかそんな名前だったと思う。
名前で性能が変わるわけじゃ無いけれど、痒くなるから勘弁願いたい。
それから数時間、幸運にも建物からは男達が出てくる事はなく、代わりに鉱山から働かされていた男達がぞろぞろと、ぼろ屋に帰って行った。
そして辺りが暗くなり、月明かりだけが俺たちを照らしていた。
そう言えば、この世界も月は一つだけなんだな。
そう思っているとワイズから声がかかった。
「姉さん、そろそろ配置につきやす。多少警備の目がありやすが、手筈通りならそっちに注意が行くはずなので、確保は難しく無いでしょう」
「けど、油断はしないでください。では暫くの後に撃ち込みますので、それが合図だと思って下さい」
「はい!」
全員が配置に付きに行く。
俺も鉱山の入り口が見えやすい所まで移動すると、そのまま右手を上げて詠唱を始めた。
『炎よ炎よ我と舞え 舞いて我と通わせよ 通わせ我と形を成せ そしてその形咲き誇れ!』
詠唱が終わると、俺の右手の上には巨大な炎の槍が完成していた。
それじゃあ合図といこうか!
【フレイムビッグガン】
投擲の要領で手を振ると、目標の入り口まで信じれない速度で飛んで行って……。
ズガァァァァァァァァァァン!!!!
もの凄い轟音が響き、入り口は崩落どころか溶解してしまっていた。
うん、どうやらやりすぎた様だけど、注目を集めると言う意味では達成したと思う。
お陰でサボっていた見張りや待機していただろうその仲間達が、一斉に入り口の方に向かって行った。
「どうなっている⁉︎」
「なぜ入り口が爆発したんだ!」
いい感じに騒いでいるな?
さぁここから捕獲作戦の始まりだ。
少し短めですが、ここから佳境に入ります。
感想や評価などいただけたら嬉しく思います。




