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あぁ、お揃いだよ!

 とは言え、相手は三人中二人。

 恐らく逃げる前に口封じで、地面で伸びている奴を殺すだろう。

 そして次に二手に分かれて逃げる。

 この辺りが常套手段かな?

 ともあれ、まずはユミルに指示を出す為に話しを引き伸ばす。


「無理とか言わずに話し合いに応じませんか? 多勢に無勢ですよ? 後ろで伸びている人も担いだまま逃げれるとは思えませんし……」


 そう言いながらポンチョ越しに手を背中に回して指先に少しだけ魔力を込める。

 そして背中越しに魔力の浮文字を生成する。


『合図で 右の男を 速射 お願い』


 魔力コントロールの一環で遊び程度だと思っていたんだけど、魔法神アレフに感謝だな。


「それは要らぬ気遣いというものだ」


「そう言わずに、どこへ逃げようというのかわかりませんが。あぁ、ひょっとして…………帝国に、ですか?」


 その言葉を発した瞬間、男達の雰囲気が一変した。

 当たりか。こんなコソ泥の様な事をして何をしたいのかわからないけど、もう一発蹴りを入れるか。


「否定しない所を見ると、当たりの様ですね」


「それこそ要らん詮索だな。貴様らこそ大人しくし、見なかったことにした方が幸せだったと思う日が来るぞ?」


「そうですか。と言う事は、この国に何かしようとしているのですね?」


 この男、黒ずくめで隠密っぽい事をしている割に喋り過ぎだ。

 本人も誘導されたと気づき行動を起こそうとしたが、俺の方がワンテンポ早い!


「ユミルさん!」


「待ってた!」


 俺が名前を呼び終える前には既に数本の矢を射ていた。

 弓の性能のせいもあると思うけど、実力もあるんだな。

 俺も同時にもう一方の男へ向かって走り出す。

 矢を射られた男は回避をしようとしたが、膝に喰らいその場で蹲った。

 これで残り一人だ。

 それを見た残り一人は一気に後退したかと思うと、懐から丸い物を取り出し地面へ投げつけた。

 爆弾か⁉︎ 一瞬警戒したけど、よく考えたらこの世界ってその類のものってない気がする。

 そう思ったのも束の間、辺りに煙が充満し始めた。なる程、煙幕か。


「ベリットさん達はその男を確保して下さい。私は追います!」


 逃がさない!

 広い所に出れば俺の方がやりやすい。

 俺は路地の壁を交互に蹴り一旦建物の屋上へ出る。俺の数少ない補助系の魔法。アイラやマルトだけじゃなく俺も使えると言う事だ。


探索魔法(サーチ)


 相手の魔力は覚えた。

 それを俺の魔力が拾い上げればいい…………街の端に向かってる? てっきり領主館か自分らの隠れ家かと思ったんだけど、どう言うことだ?

 取り敢えず方向はわかった。


「ベリットさん、そっちの男達は…………ダメでしたか」


「すまん、一人は確保しようとしたんだが見ての通りだ」


 伸びている男には首にナイフが刺さっていて、矢を受けた男は自害したのか、口から血を吐いて倒れていた。

 マルトを残していればどちらかが助かったかもしれないけど、いないものはどうしようも無い。

 しかし、領主館にいた男とは違い、徹底しているな。その前に喋りすぎていたけど。


「瑞樹ちゃんの方も見逃しちゃった?」


 いや、【探索魔法(サーチ)】掛かりっぱなしだから足取りは追えているよ。


「いえ、大丈夫です。行き先は終えてます。けど……」


「けど?」


「街の端へ向かっていますけど、あっちの方って何があるんでしょう?」


 そう言って俺は壁の方に指を刺す。

 向こうには門がない。だからあとは隠れ家だとは思うんだけど、やっぱり逃げただけかな?


「恐らくは地下水路から外に出るつもりだ」


 え、そんなのあったんだ。

 じゃあその方向の壁の向こうにあるのは?


「そしてこの方向に少し行くと小高い山があって、そこには鉱山がある」


 ガリュウが久しぶりに話してくれたと思ったら、結構有益な情報をくれた。

 いつもちゃんと聞いているのか不安だけど、案外一番頼りになる人かもしれない。


「わかりました。私はこのままそいつを追いかけます。ガリュウさんはギルマスに報告を、ベリットさんとユミルさんは後から追ってきて下さい」


「わかったよ、瑞樹ちゃん! あとね、これはお姉さんからの警告だよ!」


「な、何でしょう?」


 ユミルがあまりにも真面目な顔で何かを語り出す。

 こんな顔をするんだな。で、何の警告だ?


「スカートのままで、高い所にジャンプしない様にね? お姉さんにはご褒美だけどね!」


「な……⁉︎」


「結構大人なの履いてるね、上下お揃い?」


 この場面でとんでも無いこと言いやがる! しかも聞くとこはそこかよ! あぁお揃いだよ! こだわりだよ!

 思わず、スカートを押さえて男二人の方を睨むと、サッと目を逸らされた。

 見たんだな?

 と言うか、確保できなかった理由はそれじゃ無いよな……?


「そこの二人、あとで覚えておいて下さいね?」


 嘘でも見てないと言えばいいものを……正直者のパーティーだな。

 とにかく、そろそろ【探索魔法(サーチ)】から外れるかもしれないから、俺は追跡を再開するぞ。

 そう言って、今度は路地を走り抜けて追いかける事にした。

 まっっったく油断したよ!

 何だろう?

 シリアスな場面を書いていても最終的にユミルやマリン、アレン辺りが茶々を入れてくるんですよね……。

 そんなキャラには俺がしたんですけどね!


 そして、そんなお話で良ければ、評価や感想などしていただけたら嬉しく思います。

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