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斜め上だなぁ……

「遅かったな、瑞樹」


「ごめんなさい。話しが長引いてしまったので」


 ギルマスから警備隊への協力要請の書状を書いてもらい食堂へ戻って来ると、ケニーとトニーは退屈していたと言わんばかりにこちらへ歩み寄ってきた。

 それとほぼ同時に、ギルドの受付の方からも声がかかった。と言うか、一名ばかり俺の方に駆け寄ってきた。


「瑞樹ちゃーん! 元気だった? 怪我とかしてない?」


 この相変わらず高いテンションだ、抱きつかなくても怪我なんてしてない。

 それに『雀の涙』の残りのメンバー、ベリットにガリュウ、マルトも勿論一緒だ。

 皆、元気そうで何よりだよ。

 


「勿論元気ですよ。皆さんも元気そうで」


「オーク討伐以来だな。俺らも瑞樹に用があるんだよ」


 俺に用? 心当たりが思いつかないんだけど、何だろう?

 って言うか思い当たらないって言うだけで、何で呆れた顔するんだ……。


「本当に心当たりないのか? こんな貴重な物を人に渡しておいて」


 ん? あぁそう言えば武器を渡してたっけ。自分で使わずに死蔵されていた物だからすっかり忘れていたよ。


「いえ、たった今思い出しました。でも、それはあげるつもりで渡した物なので」


 あの時は名目上で貸すって言ってたんだけど、それを律儀に覚えていてくれたとはありがたい事だ。

 後で返してくれと言っておけば、頑張って生き残ってくれると思ったからな。


「けど、こんな高価な物は流石にタダで受け取るわけにはないな」


「かと言って、これを買い取るとなったら相当の額が必要ですしね……」


 マルトは武器の価値を調べたのか。

 俺はあまり興味がなかったんだけど、そう言われると気になるな。


「その武器、鑑定したんですか?」


「あぁ、申し訳ないと思ったのだが、これだけの性能の武器が一体どれだけの価値があるのか気になってしまってな」


「ちなみに私の弓、白金貨十五枚だった……」


 結構な額だな。それ売っちゃえば一生食いっぱぐれる事ないんじゃない?

 他の皆のも似た様な額が付いたそうだ。


「だから、これを俺らが買い取るのは不可能。惜しい気もするが、持ち主に返すのが筋だろうと言うことになった」


 ガリュウも淡々と答えるが、その表情はどことなく残念そうだった。

 まぁそれならそれで、良いこと思いついたよ。

 お互いがウィンウィンになれること間違いはない!


「そうですか。ならその武器を報酬として、皆さんに幾つかお願いをしたいのですが、どうでしょうか?」


 それなら皆も受け取りやすいだろうし、俺も知り合いの方がお願いしやすい事もある。


「その内容が何なのか気になるが、無茶振りじゃなきゃ構わんぞ。お前らは?」


 そう言いながらベリットがメンバーに聞いてみると、満場一致だった。

 お前らの仲の良さは目を見張るな。これが経験を積んだパーティってものなんだろう。 


「大きく分けて二つですね。一つ目は、遅くても明後日の朝あたりから行おうとしている作戦のお手伝いをして貰います」


「作戦?」


「最近、朝市などの売上金を狙った強盗が多発しているらしく、冒険者の巡回警備中にも発生しているようです。そしてこれを捕まえるべくギルマスから警備隊に協力してもらえるよう、書状をもらってきました。」


 確かにこの四人が手伝ってくれれば心強い。だからと言って警備隊が頼りないって訳じゃないぞ。

 ただ、戦力の補強は、行前にしておいた方が安心感が違うってものさ。


「と言う事はまだ作戦内容は完全に決まっていないのか?」


「そうですね。ですが、大まかな流れは既に考えています。後は、その案と書状を持って警備隊へ行って協力要請をするだけです」


 けど、もう一人だけ協力者が必要だ。

 それは後でお願いに行くとしてだ……。


「紹介が遅れました。この二人は、冒険者のケニーとその弟のトニーです」


 驚いていないで、さっさと挨拶しろよ。さっきから静かだと思っていたけど、もしかしなくてもずっとその状態で固まっていたのか。


「あ、あの初めまして! ランク『E』のケニーです! ずっと皆さんには憧れていました、挨拶できる事を光栄に思っています!」


 え……憧れ? 『雀の涙』に?

 トニー、どう言う事?


「兄ちゃんはずっと『雀の涙』を尊敬して止まないんだよ。特にリーダーのベリットさんにはね」


「直接言われるのは恥ずかしい気もするが、光栄だ。ケニー君だったかな、君はパーティとかには入っていないのかい?」


「…………」


 あ、いきなり地雷踏んだな。 けど、これも一応対策は練っている。


「ケニーは明日からパーティに入る予定です。けど、弟のトニー君が作戦の重要部分なので、今日は一緒に来てもらっているんですよ」


「そうか、じゃあ取り敢えず向かうか」


 ベリットがそう言うと、俺達はゾロゾロと警備隊本部まで歩き出した。

 道中、ユミルは「瑞樹ちゃんの愛の結晶がついに私のものに!」とはしゃいでいる。

 その弓に愛を注いだ覚えはない、普通に使え。

 他の三人もこの程度のお願いで武器が手に入るならと、依頼から戻ったばかりなのに足取りが軽い。

 そして、ケニーは俺に何か言いたそうだけど、すぐ横にベリットがいるからなのか、言うのを躊躇っている。

 何が言いたいか、わかるぞ。

 けど、それは今後のケニーには必要な事だからな。

 さらにその横、トニーに至っては完全にビビってる。

 初めに行かないと言っていた警備隊に行くんだから、自分が捕まるんじゃないかと不安なんだろう。

 そんな事はしないし、させるつもりも無い。

 今回の作戦の半分は、トニーにかかっているんだからな。


 「取り敢えず、ケニーとトニー、そしてベリットさんだけ着いて来て下さい。マルトさん達はここで待っていて下さい。話しがまとまった後に詳しく話しますので」


 着いて早々、受け付けで書状を渡した俺は、直ぐに本部長の部屋まで通される事になった。

 けど、流石にぞろぞろと全員で行くわけには行かないから、主要メンバーだけで行き、残りはロビーで待ってもらう事にした。


「初めまして、ランク『E』冒険者の瑞樹と申します。こちらは、ランク『C』パーティー『雀の涙』のリーダーのベリット。そしてケニーとその弟のトニーです。」


「初めまして、本部長のモールだ。冒険者ギルドからの書状を拝読させてもらった。代表者はベリットではなく、君なのかね?」


 モールとか言う男は、俺の顔を訝しげに見てきた。

 これは、さっきのケニーの反応と同じ事だ。

 俺にもわからなかった事だけど、『雀の涙』と言うパーティが、ハルトナと言う街では名の知れたパーティで、実力と実績があるせいだろう。

 それだけの実績を持つベリット達を差し置いて、俺と言うぽっと出の女が代表者だって言われたら、きっと俺でも似たような反応をしただろう。顔にまで出すかはわからないけどな。


「はい、私です。今回、この書状をギルドマスターにお願いしたのは私自身なので」


「そうか、この書状の内容については把握しているか?」


「はい。今回行われる作戦において、必要な人員等を相談し、適切な人数で行動せよ。そしてその際の隊長は、私こと瑞樹が取るものとするとなっています」


「そうだな。じゃあまず、そちらに割り振れる人員の数だがな……」


 あ、この目つきは絶対におかしなことを言い出す目だぞ。


「一名だ」


「「!!」」


 ほら来た! ベリット達なんて驚きすぎて声も出ないよ。

 これは断られると言う予想よりも斜め上だわ。

 要するに、名目の上で協力したぞと言うスタンスだけを取りたいんだな。

 巡回警備をやった時の現場の人達は優しい人だったけど、組織の長はひねくれ者だな。


「わかりました、その一名をこの場に呼んできていただきますか? 挨拶をしたいので」


 そっちがその気なら、俺も乗ってやるよ。

 PVだけ見ていると、大変多くの方が読んでくださっているのがわかります。

 これからも、皆さんが楽しいと思えるような話を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。


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