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ロクでもない女神様に殺された挙句、振り回されます。  作者: 雷訓


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二日酔いとか……

「頭いてぇ……」


 早朝の巡回で呻いているのは、俺らの後ろから着いてきているアレンだ。

 結局昨日はどんちゃん騒ぎで、男どもはそのまま酔い潰れてしまい。


「あんた達いつまで寝てるんだい! さっさと仕事に向かいな!」


 と、今朝はお上さんに無理やり起こされ追い出されてしまっていた。

 まぁ、おだてられたマリンも調子に乗って何本も出して、その内きつめのまで出したから共犯の様なものだけどな。

 けどそこは、年長者のオラグ達が自制して欲しかったね。

 ちなみに俺とマリンは嗜む程度に飲んだだけだから、寝付きが良かった程度で済んだ。

 言っておくが、この世界では十五歳が成人だから飲酒は合法だ。


「もう少しゆっくり歩いてくれぇ……」


「今日で最終日なんだからがんばって」


 マリンも困った顔でアレンを励ます。

 けど、それだけに留まらない。


「気持ち悪りぃ……」


「吐きそう……」


「頭が割れる……」


 農場の方々から声が聞こえる。

 さっき言った様に、夜遅くまでどんちゃん騒ぎしたほぼ全員が二日酔いでゾンビの様に呻いていた。

 どうやら午前中どころか、今日一日仕事にならなそうだな。

 それでも農作物は生き物だ、がんばってくれ。


「お、おはよう三人とも。今朝は……アレン君以外は大丈夫そうだな」


 声をかけて来たのはソラグだ。

 昨日あれだけ飲んでたのに、見た目は全然大丈夫そうだ。


「おはようございます。ソラグさんは大丈夫なんですか?」


「多少体に違和感はあるけど、まぁ仕事には支障はないな」


 あれほど飲んだのに、多少で済むあたりアルコールには強いのか?

 けど顔が少しだけ赤いのは、アルコールがまだ体に残っているせいなのか?


「まだ顔が赤い様に見えますけど、大丈夫なんですか?」


「あ、あぁ大丈夫だ。三人も巡回よろしく頼んだ!」


 そう言いながらそそくさと作業に戻ってしまった。

 どうしたんだ?


「ふーん……なるほど、なるほど」


 マリンが何やら頷いている。

 何やら気味が悪いぞ?


「マリン、どうしたの?」


「何でもないよ〜ふんふふんふん〜」


 遂にはスキップまでし出したぞ……。

 マリンもまだアルコールが残っていたのか……?

 何て言うか、いろんな意味で皆大丈夫か?




「ただいま戻りました。って皆さん戻りが早いですね……」


「おかえり。男どもが情けない話だよ! 少しは二人を見習いな! は、今日はソラグ以外は使い物にはならないかねぇ」


 俺が苦笑いで話しかけると、お上さんも呆れた顔で皆に言い放つが、帰ってくる返事は呻き声ばかりだ。

 俺やマリンの場合、次の日に残さない程度にしか飲んでいないけど、ここは静かに流しておくべきだろう。

 それでも朝食は摂らないと、この死屍累々の状態で何かいいものは……。


「お上さんトマトと果物を貰っていいですか?」


「好きにしていいけど、どうするんだい?」


 お上さんに見ててと言って作ったのは、果肉を搾り残りは刻んで作った果物ジュースと、トマトを潰して炒めたご飯と、少量の調味料を振ったリゾットだ。


「今から食べれば、お昼頃にはだいぶ楽にはなると思うのですが……」


 魔法神アレフ様の所で、習った調理だ。男の時は料理なんて、これっぽっちもやらなかったぞ。もっぱら外食か、コンビニ弁当だったしな。


 よし、俺らも食うか。

 ちなみにアレンはと言うと、母屋の目の前で力尽きて倒れているぞ。お腹が空けば這ってでも来るだろう。


「瑞樹の料理、さっぱりしてて美味しいね!」


「ありがとう。昔、師匠が教えてくれたから。覚えてて良かったよ」


「大したもんだよ…………瑞樹、あんたうちに嫁ぐ気ないかい?」


「ブッ!!! えぇぇ⁉︎」


 ちょ!! 勢い余って吹いちゃったじゃないか!

 ごめん、マリン掛かっちゃった……。


「あの子が気を許すなんて初めての光景でね、それでこう言う場所柄嫁いでくれる子も中々見つからなくてね。どうだい?」


 お上さん気は確かか? 確かにこう言う所に根を下ろすのも悪くない。けど、来たばかりだし、まだまだ色々やりたい事もある。

 そして、あの女神エレンは何処まで俺の行動を想定しているのか。と、言う事もある。

 だから……。


「ありがとうございます。お上さんの娘になると言う幸せも、捨て難いと思います。でも私は親も兄弟もいない流れ者です。その様な者がこの家に嫁いでしまっては、名前に傷がついてしまいます。ですので、この話しは私の良い思い出としてしまわせて下さい」


 そう言って俺は、立ってお上さんに深々と頭を下げた。


「流れ者とか気を使わなくてもいいんだよ! 私は貴方のその器量さが気に入ったんだし、息子もあんたの優しさに惚れたんだと思うよ。…………けど、何かやりたいことがある様だね」


「はい。やるべき事があります。それがどれだけ続くのかもわかりませんから。ですので……」


 まぁ正直言って俺自身がこの世界での目的が見えてない。

 女神エレンはただ過ごすだけでいいとは言ったものの、いきなり嫁入りって言うのは正直どうかと思う。

 それに、ギルマスやメルの件もあるしな。


「わかったよ、頭を上げとくれ。私こそいきなり変な事言い出してすまないね。あんたみたいな美人で器量よしはなかなかいないと思ってね」


「そんな事はないと思います。それに、今のソラグさんなら市場へ出向けばいい人くらい見つかると思いますよ」


「そうかねぇ。でもいいこと聞いたわね、今度早速荷物を卸しに行く時に同行させようかしら」


 よし、お上さんの意識が逸れた。

 朝から変なこと言い出すから意識しそうになるけど、取り敢えず今日で残りのホーンラビットを片付けてしまおう。


「よし、アレン、マリン出ようか。残りのホーンラビットを片付けるよ」


「わかったけど、瑞樹が吹いたこの服洗わせて!」


 そうだった、大変済まないね。

 じゃあ洗ってさっさと終わらそうか。


「じゃあお上さんお先に行きます」


「あいよー! 頑張っておいで!」


 そう言って俺はそそくさと母屋を後にした。

 そりゃね…………あの話し、食堂にいる全員。そう、二日酔いで潰れているオラグたちどころか、普通に朝食を摂っているソラグまで丸聞こえなんだって!

 俺もだけど、ソラグまで顔が真っ赤だったわけよ!

 お上さん、せめて色恋の話しは本人のいない所で言ってくれ…………。

 恥ずか死ぬわ。


「瑞樹モッテモテだね!」


「恥ずかしいから、蒸し返さないで……」


 くそうマリンめ、ここぞとばかりに茶化しやがる。

 こう言うのは本当、女の子の格好の餌だよな。

 でも、正直なところ、これだけ多くの人と色んな話題で触れ合うのは、新鮮な気分でもあり感情だ。

 百年も修行しているうちに少しずつ色んな感覚と疎遠になっていたけど、これからはもっともっと楽しんでいこう。




「瑞樹、この昼間にホーンラビットは来ないんじゃないの?」


 俺ら三人はデッドラビットと戦った場所に再び来ていた。

 あいつらが来てたのは主に早朝と夕方って話しだけど、それはあくまでデッドラビットがいた時の話だ。

 ならあいつがいなくても条件を一つでも整えれば来るかもしれない。


「ちょっと試したい事があってね。二人は前を警戒してて」


 そう言って前の様に二人を立たせて俺が後ろに下がる。

 けど、そこから俺は片手を上に上げて魔力を集中させる。


「風よ風よ頬にそよげ 頬にそよいで安寧とあれ……【リフレ】」


 それだけ言うと、何処からか爽やかな風がおこり木々を揺らし始めた。

 そしてそれがしばらく続くと…………案の定柵の向こうから異音が聞こえた。


「二人とも構えて!」


 やっぱりだ。

 ホーンラビットが来る条件は風が吹く日。

 デッドラビットがホーンラビットにそれを習慣付けさせた形か。


「瑞樹来るよ!」


 大丈夫、今回の方が明るいから、より的確に行ける!


「一!」


「二!」

 

 マリンが一体目を倒すと、続けてアレンが二体目を倒す。

 よし順調だ!


「三!」


「よん……うぷ……」


 急に動いたせいか、アレンがリバースしそうになった。

 四じゃないよ、かすってもいないよ。


「はい、四ね、マリン穴の方を警戒しといて」


「オッケー!」


 マリンが警戒をして、俺がホーンラビットの絶命の確認をする。

 よし、大丈夫だな。


「瑞樹、こっちも来ないみたい」


 よし! これで依頼達成だな。

 三日で終わるのはまだ早い方だな。

 これで、イタチごっこになると、泥沼にはまりかねない。


「母屋に戻って報告しようか。アレン行くよ!」


「うぇぇぇぃ」


 こりゃダメだ。

 まぁ母屋に戻って報告が優先だ。

 アレンはゆっくりと歩いてくればいいさ。


「オラグさん、残りのホーンラビットは倒し終えました。これで依頼は達成かと思われますのでご確認ください」


「仕事早いね。ランク『E』とは思えないな」


「私の場合は色々と慣れてますので」


「そうだったね。失礼なことを言ってしまった。すまない」


「いいえ。大丈夫ですよ」


 ここれでオラグから依頼達成のサインをもらったから、あとはギルドに行って報告するだけだ。

 あと、ふたりには関係ないけどギルマスに話さなきゃいけない案件も出来たしな。

 出来れば昼下がりにでも戻って話しておきたい。


「じゃあマリンギルドに戻ろうか。アレンは?」


「今来たところだ」


 やっと追い付いたのか。

 まぁ街までは近いけど、歩きが辛そうだな。


「何なら今から街まで作物を卸しに行くから、一緒に乗って行くか?」


 お、渡りに船だ。

 流石にアレンの歩きの速度に合わせると遅くなるから、ここは是非ご一緒させてもらおう。


「じゃあお願いしますね。マリン、アレン乗るよ!」


「やったね、ラッキー!」


「マジか、揺られるんだろ……?」


 わがまま言うくらいなら、酒を次の日に残すなよ……。

 まぁ明後日まではお休みにするから、それまでに治してくれ。


「三人ともこれ持っていきな、採れたてだよ。あと、あんた達ならいつでも遊びに来な。歓迎するぞ!」


「オラグさん、ありがとうございます。お上さんも、ありがとうございました!」


「いつでも遊びに来なさい!」


 こうして、俺らは荷馬車に揺られて農園をあとにした。

 ほんの数日の依頼なのに、ソラグとの蟠りも溶け、皆とも仲良くなってしまった。

 何だかんだ言って結構楽しかったし、隣の二人もそれなりに経験になっただろう。


 さて、荷馬車の揺れが気持ち良いから、少し寝させて貰うかな。

 何でって? 御者がソラグで気恥ずかしいからよ!

 寝よ寝よ!

さて、ここでアレンとマリンの初討伐依頼が終わりになり、次回からは別の話になりますので、お楽しみください。


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[良い点] 瑞樹ちゃんモテモテ! 超可愛いだからね~
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