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救出作戦3

やーっと投稿することが出来ました。

今後はもう少しペースを上げて投稿できると思いますので、よろしくお願いします。

「噂には聞いていたけど……これは……」


「とは言え、こいつは紛れもなくワイズと言う奴だ」


 アルジェが脱出して暫く。無事にララベルと再開したが、その当のララベルは驚愕に声を失っていた。当然だろう、無事に救出したと言われていた人物が人間の様相をなしていないのだから。

 いや、実際には知っていた。自分の店舗で働いているナオの父親も、拉致されて秘密裏に実験体にされていた。それをナオ本人が周りに隠していたのだから、ララベル自身も知らないふりをしていたのだ。

 しかしララベルも諜報員である以上、そう言う実験が行われていて酷い有様だとは知っていたが、初めて目の当たりにして自分の想像力が足りない事を痛感した瞬間だった。

 それはもういつもの語尾を忘れてしまう程に。


「え、えぇ……わかったわぁん。で、ワイズはこちらで預かると言う事でいいわねぇん?」


「あぁ、本当はハルトナのジジィの元にに連れ帰る方がいいだろうが、繋がりを悟られる訳にもいかんのだろう?」


 本来ならわざわざララベルに知らせずとも、アルジェなら直接連れ帰ることも可能なのだ。

 しかしアルジェがそれに成功しても、その後どこかで見つかった時にエンガイア王国の仕業だと知られるわけにはいかないからだ。


「それと、これも渡しておこう」


「あら、これはぁん?」


 そう言ってアルジェは胸元から紙の束をララベルに渡した。


ワイズ(そいつ)の横に置いてあったから丸ごと持ってきた。何かの役に立つかもしれんからな」


 そう言われてララベルがざっと目を通すと、それは研究資料の様だった。どうやらワイズを連れ出す際に一緒に持って来た様だが、これはワイズの救出以上に大きな成果と言える内容だった。


「これは大収穫よぉん! サンプルだけだと、時間はかかるかも知れないけど、資料も一緒に本国に送れば治療薬が完成するのが早まるわねぇん」


「しかし、こんなの大ぴらにしてやれば良いのではないか? これが良くない事なのだとしたら、どちらが悪か知らしめてやることが出来るのだと思うが」


「そうもいかないのよぉん。確かに国としての威信はなくなるとは思うけど、下手をすれば国が崩壊するわぁん。それに、それだけじゃ済まない事もあるのよぉん……」


 ララベルとしてもそうしたいのも山々だったが、それは難しいだろう。国が崩壊すると言うことは、良くて暴動。最悪の場合、勧善懲悪の名目として他国の侵略を受けるだろう。

 フェルダス五世と言う国の中心を失ったバレジア王国は動くことは難しいが、たった一都市の冒険者や領軍で持ち堪えたエンガイア王国の主力軍は健在なのだ。

 良王として知られるエンガイアの国王ならそんな事にならないと信じたいが、それとて絶対ではない。そうなれば不幸になるのは国民なのだ。

 それにエンガイア王国だけではなく、虎視眈々と狙っている国々はいるのだ。そう言った国々が好機と定めて動くとも限らないのだ。

 それとは別だが、ララベルはここでの暮らしが結構気に入っている。帝国の在り方は気に入らなが、だからと言って街の人や自分の可愛がっている従業員までがそうではない事をわかっているからだ。

 現在はかなり不安定な状態ではあるが、これまではそれなりに経済が回っていたのだ。フェルダス五世がどうであれ、臣下や帝国民が逞しければどうにでもなると言う皮肉がリザイン帝国の現状なのだ。


「それはしがらみと言うやつか。よくわからん感覚だな」


「何言ってるのよぉん。貴女が瑞樹ちゃんの指示で救出に来たのだって、しがらみの一種じゃないのかしらぁん?」


「なるほど、これもしがらみなのか」


 なるほど、と指を顎に添えて考え込む。救出の際に瑞樹に言われたのは、極力見つからないことと人を殺さない事だった。

 前者は全くと言っていいほど守られてはいないが、後者は意図的に加減した事によって負傷者は出ているかも知れないが、死者は出してないと確信を持っていた。

 アルジェの本来に気質からすればそんなことは気にしないと言った感じだが、瑞樹との従属契約をされている以上命令は絶対だ。


「それにねぇん」


「?」


「仕事とは言え、長いこといればその場所や周りの人たちにも情は湧くのよぉん。そんな人たちに苦しい思いはしてほしくないわよぉん」


「なるほど……そうか。だから瑞樹は……」


 今までアルジェに出された指示を思い返し、何か腑に落ちるところがあったのだろう。アルジェは独り言のよう自身の主人の名を呟いては微笑んだ。


「とりあえず、ワイズの事は任されたわよぉん。後の事は全部こっちで何とかするから、アルジェちゃんは早く瑞樹ちゃんの所に帰ってあげなさいな」


「あぁ、そうさせてもらう事にしよう。一部始終のことは私から伝えておく。ハルトナの方にはそっちで伝えておいてくれ」


「もちろんよぉん、それじゃぁねん。ありがとぉん」


「主人である瑞樹の指示だ。例には及ばん」


 そう言ってララベルはアルジェに礼を言って瑞樹の元へ戻る様にと促すと、さも当然と言うように返事が返ってきた。元々身一つでやって来たアルジェは自分のやるべき事は終えたとばかりに地上へ戻る扉を潜ると、そのまま瑞樹のいるバレジア方面の夜空へ跳躍していった。


「瑞樹ちゃんってばとんでもない化け物を従える様になったわねぇん。リザイン帝国も中々の災難だわねぇん」


 アルジェの出ていった扉を見つめてララベルは一人呟く。

 アルジェが城に忍び込んでから戻るまでわずか数時間。報告を聞いたララベルは随分と無茶をしたものだと内心冷や汗をかいたが、身元不明の女性が侵入したと解釈し、おそらくばれる事はないだろうと思う事にした。

 そうしてアルジェが一晩でやった事を思い返せば、ララベルやハルトナにとっては朗報ではあるが、リザイン帝国にとっては悪夢としか言いようのない夜だっただろう事は想像に難くない。

 侵入された理由が理由なだけに指名手配などが出来ないから大ぴらに動くことは難しいだろう。が、アルジェがバレジアを匂わせる事を発言したことから矛先はまず向こうへ行くだろうから時間は稼ぐ事はできる。

 謎の薬が出回ってからおよそ一年、出所が発覚しそこからまさか戦争につながるとは誰も思わなかっただろう。

 しかし、その真相はごく一部の人しかわからない。だが今はそれで良いとララベルは思っている。だからこそ報告を受け取ったであろうエンガイア王国も、ハルトナのデンも瑞樹も何も言ってこない。

 時期を狙っているのだろうって事はわかっている。どのタイミングかはわからないが、今はやれる事をやろう。


「今は瑞樹ちゃんたちを信じるだけよねぇん。アンタもよぉん」


「あァ……もちロンだ……」


 ララベルは変わり果ててしまったワイズに向けて言ったつもりだが、それは自分自身にも言い聞かせていた。

 そしてワイズ自身も(あね)さんと慕う瑞樹が助けを寄越してくれた事に涙を流しながら、今一度気力を奮い立たせた。

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