救出作戦
夏風邪は引くもんじゃないですね。
それと、ここの話はいずれ再編集します。
「早速だけど話を聞かせてくれる?」
「わかった。結論から言うとワイズって男の生存は確認できたし、救出もできた」
「が、あれを無事と言っていいのかは、私では判断できないと言ったところだ」
アルジェは報告を待つ俺のためなのか、まず初めに結論から先に教えてくれた。
どうやら救出には成功したらしい。が、それに続いた言葉を考えると、最悪を想定した。脳裏に蘇るナオの父親の姿。要するに、そう言う事だろう。
「そう……何があったか教えてくれる?」
「あぁ、そして手紙も預かってるぞ」
それなら一層のこと。そんな言葉を飲み込むと、手紙に一通り目を通してから、アルジェに報告を促した。
まず帝都に到着したアルジェは俺の言いつけ通り、『にゃんにゃん食堂 帝都本店』にいるララベルを尋ねた。
実は『にゃんにゃん食堂』と言うお店、ハルトナの冒険者ギルド独自の隠れ拠点だったと言うから驚きだ。このお店自体はきちんと繁盛しているようだが、実態はリザイン帝国を警戒するデンが随分前からリリベルとララベルと言う双子の元冒険者を使って諜報活動をさせてたと言う事らしい。
店員は冒険者と言うわけじゃないが、そう言った活動が得意な人たちを厳選して採用しているとか。
じゃあなぜ俺が指名依頼されわざわざ帝国まで調査に向かうことになったか。それはリザイン帝国で勝手に動いていることを、当時のギルド本部長であるダンに知られるわけにはいかなかったからだ。
ギルドを私物化していたダンに見つかれば当然自分の支配下に置きたいだろうし、その上で何かあれば勝手に動いたデンに擦りつけるのは容易に想像がつくものだ。
それらを警戒する為、表向きは指名依頼として俺たちをリザイン帝国へ派遣させつつ、リリベルとララベル達の元へ誘導させ、支援を受けさせたと言うわけだ。
話を戻そう、そう言った背景を以前の通信玉で知った上でアルジェ一人でも何とかなるだろうとは思ったが、隠密というか秘密裏に事を進めるような作戦は向いていない様に思えるからララベルにサポートをお願いしたのだ。
「私がララベルよぉん。瑞樹ちゃんからのお願いねぇ? 当然協力するけど、一応手紙を拝見するわぁ。むぅぅぅぅん……この事ねぇ、確かに暫く前に私たちのところに来たわねぇ。このワイズ男って言うかこの男、あと三人連れてたわよぉん。ナオのこともあるし、しかも最近はいよいよキナ臭さが増したし、うちの娘たちが危ないから調査は控えてたのよぉん。そんな時にデンちゃんがこの男達を派遣したらしいんだけどぉ、戻ってこないからちょっと気になってたのよねぇん」
当然、今のは店長であるララベルのセリフだ。
相変わらず濃い性格で謎の目力だ。しかも店員の皆の事を慮ってか、判断力も確かなようだ。じゃなきゃ、俺も無事に帝都から逃げれたかわかったもんじゃなかったしな。
とは言え、アルジェが到着した時点で状況は随分良くないことはわかった。
「そうか。戻ってこないということは、城に捕まっていると言うことで間違いないな?」
「十中八九、間違いないわねぇん」
「そうか、私の考えではそんなのは見捨ててもいいと思うが……」
「瑞樹ちゃんは助けろって言ったのねぇん?」
「そんな所だ」
「さぁすが、瑞樹ちゃん。情が深いわねぇん。わかったわぁん。さっきも言ったけど、当然協力するわぁん。と言っても、私たちも大っぴらに動けないから、案内するだけになるけどねぇん。歯痒いけど許してねぇん」
そんなララベルが案内したのは、俺が城を脱出した時と同じく地下水路だ。と言っても全く同じと言うわけじゃない。
今回の入り口は『にゃんにゃん食堂』の倉庫の最奥だと言うから驚きだ。
しかも、アルジェが案内されたのはララベルたちが独自に開拓したものだった。と言っても、使用するのはある程度同じ地下水路だが、案内された一部の通路が魔法で隠蔽されており近づけないようにされていた。新たに掘っても良かったらしいが、見つかった時のリスクが大きいから断念したとの事だ。
そして地下水路を案内されて行き着いた先は、意外なことに帝城の中庭の隅だった。
ララベル曰く。
「研究施設に直接繋げる方が異常なのよぉん。正面で鉢合わせしたら、一発で捕まるわよぉん」
だそうだ。言われてみれば確かにそうだ。思い返せば一度庭に出て、また危険な研究施設に戻る羽目になったんだ。
そう意味で言われれば、一度離れた場所から様子を伺いながら侵入すれば退路を確保できるから、一番無難だろう。
何も考えずに侵入した俺やナオが、いかにアホな行動だったかが伺えるだろう。
「じゃあ悪いけど、私の案内はここまでよぉん。これが見取り図ねぇん」
「わかった、案内感謝する」
「瑞樹ちゃんのお願いだしねぇん」
「主は……瑞樹は慕われているんだな」
「そうねぇん。ちょーっと無鉄砲なところもあるけど、何にでも一生懸命なところはステキなことねぇん。さぁ行って来なさいなぁ。確保したら一旦倉庫まで来るのよぉん」
「わかった、すぐに戻る」
そう言ってララベルはアルジェの背中を押すと、元の水路の奥へと消えていった。
アルジェも視界の隅でララベルを見送ると、敷地の隅にある目的の建物を注視した。
今回の目的であるワイズの救出。その任務自体はアルジェの実力なら事も無げにやり遂げるだろう。
しかし、問題はその方法だ。前述したのは、方法を選ばなければの話だと言うことだ。これがどこかの盗賊だったり魔物の住処であれば、真正面から殴り込んでもきっと救出しただろう。
けれど今いるのは、バレジア王国と秘密裏に手を組んで人間を魔物のようにしてしまう薬を作るような国だ。
加えて、ハルトナを領都とするアレンドリア領、現領主であるメルトリアを害したトバスがいる事も確認されている。
ぶっちゃけアルジェに知らぬ存ぜぬで一切合切破壊し尽くして来て欲しかったが、さすがに何も知らない国民にまで被害が及ぶのは俺の両親が咎めた。
だからここは慣れない作業ではあるが、アルジェに骨を折ってもらおう。




