よくよく考えてみる
だいぶ遅くなり申し訳ないです!
その日は昼間に軽く寝たあと再び魔法大全で色々学び直し、夕方にはまた街へ出る事にした。
あの騒動でアレイアはセレナの所へ報告に行ったが、まだ戻ってない。向こうで何か情報が掴めていればいいんだけど。それだけじゃ時間を持て余すし、ちょっと気になる事があるから外に出たわけだ。
「そこのかわいいお嬢さん、一本どうだいおまけするよ!」
「じゃあいくつか貰おうかな?」
「格好からして、冒険者かい? この辺は平和だしこれと言った依頼はないんじゃないか?」
「そうですね、でもあまり美味しい依頼がないですね。王都って常にこんな感じなんですか?」
「そうだな、王都周辺じゃ頻繁に魔物も出ないしな。一年以上前の戦争中は盗賊とか脱走兵が周辺の森や山に住み着いたとは聞いてるけど、今はそれも駆逐されたって聞いてるしな。それ以上にあれだよ、王位継承の問題もまだ片付いてないからな」
「噂には聞いてますけど、そう言うのって誰が優勢とかあるんですか?」
「いやぁ誰ってのはあまりないかな。ってか候補者三人より、候補者の母親の方が力があるからな。そう意味じゃセレナ様の息子のフィールデン様が優勢なんじゃないか? 噂じゃ決闘までにそれぞれの母親が何かしでかすんじゃないかって話だぜ? あ、あまり大ぴらに言う事じゃないから今の内緒な?」
「穏やかじゃないですね」
夕飯もまだだったし、俺を呼び止める言うおっちゃんに捕まりつつ城下に出回る色々な噂話を仕入れてみる。他にも何件か梯子して聞いて回ったけど、どこも似たような噂話だったのは、予想した通りだった。
国民の間でもフェルダス五世の王妃や側室が力を持っていたのはわかっていた様で、とりわけ今回の王位継承者の三人の母親力が強いと言うのはわりかし有名だったようだ。
うーん、正妃であるセレナの力が強いのはわからないでもないけど、エギルとリスタの母親がなぜ力が強いのかがわからんな。
まぁ後宮のあれこれに首を突っ込みすぎると、ろくな事にならなさそうだから深入りするとろくな事にならなそうだけど。
ちなみに俺が露店で買い食いしながら情報を集めていたのとは別に、気になっていた事を実行していた。それは、攫われたエギルの行方だ。
これは、エギルを救出するためではない。フィールデンを攫おうとした奴らと同じ集団だから、こっちで黒幕のアジトを突き止めれないかと思ってのことだ。
ちなみにどうやって探すのかというと、昨日【探索魔法】の機能改善をした仕様の一つにマーカー機能がある。これをサーチで定めた人物に付加すると、【探索魔法】の地図の中の点が任意の形や色に変更できるようになるのだ。
とりあえずエギルには似顔絵付きの旗を刺しておいた。画力は聞かないでおくれ。
話を戻して、露店を回りながら【探索魔法】を使って情報収集と同時にエギルの捜索をするが、反応がない。
当然ながらこれは想定していたことだ。ちなみに、俺の【探索魔法】の範囲は直径千メートル以上だ。
しかしながらバレジアの王都は無茶苦茶広い、ざっくり見積もっても直径だけでも五千メートルはあるだろう。そんな王都をくまなく探すのは流石に骨が折れる。
だからと言って当てずっぽで歩いても疲れるだけだし、屋根の上を走って移動したらそれこそ不審者だ。
「ある程度当たりをつけて、時短かな」
そう一人ごちて移動する。行くとしたらどこかと考えると、もちろんつい先日歩いた場所をなぞる事になる。
初めはこの露店の最奥にあたる貧民街だ。けど貧民街自体がそんなに大きい区画じゃない、王都全体のほんの数パーセント程度の広さだ。
だから貧民街の入り口に到達する前に【探索魔法】エリアが貧民街の一番奥にある王都の外壁に到達してしまった。その結果、こっちにはいない事が判明した。
次に向かうのは貴族街だ。
貧民街とは真逆に位置するこの場所は、さっきいた露店街や貧民街と違って格段に人通りが少ないく、以前と同様俺が歩くと逆に目立ってしまう。
なので前回と同じく【気配遮断】のお世話になろうと考えて発動させた直後、目標のマーカーが【探索魔法】の一番端に現れた。ふむ、この場所って……。
そう考えながら到着したのは、つい先日潜入したどこぞのお屋敷だ。
「大人しくしていれば無事に帰すので、馬鹿な考えを起こさないで下さい。あとほんの数日です、その時には全て終わりますから」
「くっ、お前らどこの者だ!? こんな事をしてただで済むと思うなよ!?」
「私らも指示を受けた身ゆえ、ご理解を頂けたら嬉しいのですが……」
マーカーのある場所へ向かうと、この間と同じように地下へ潜るように降りた階段の先に、声が響いた。
やはりだ。地下の一室には攫われて扉越しに叫ぶエギルと、身なりの良い二人の男が何やら話している。内容からすると、どうやら決闘の日までエギルをこのまま閉じ込めておくつもりらしい。
エギルの様子からすると手荒い事をされた様子はないし、命まで取られる事はないようだ。なら放っておいても良いよな。俺の目的は攫おうとした黒幕を見つける事だし。何だったら決闘当日までそのままで居てくれたら、不戦勝になるだろうし。
と言うわけで、この地下室には用はない。残るは地上の部屋と屋敷である本館なんだけど、【探索魔法】で見る限り俺らの四人しかいない。こいつらから聞いても良いけど黒幕から遠そうだし、ここで捕まえるとエギルにも見つかる可能性があるから後回しだな。
って事で本館の方なんだけど、こっちは人がそれなりに反応が多い。動きからしてただの使用人とかが殆どだ。
その中で俺はいくつかの反応に注視した。他の反応は常に複数で動いているのに対し、二階の三つの反応は単独で周囲に人はいなさそうだ。と言う事は、この三つのうちどれかがこの屋敷の主人の可能性が高い。
別館にエギルを監禁する様に指示を出したのがこの館の主人なら、そこから首謀者にたどり着くかもしれない。
王族を攫うなんて大胆なことをしでかす奴らの顔を拝んでやろうと思った矢先、ふと我に返って立ち止まってしまった。
俺はそれを知ってどうするつもりなんだろう?
昨夜、護衛依頼の一環でフィールデンの誘拐を未然に防いだ。
それはいい。が、アレイアは襲撃犯どもを連行しフィールデンは俺以外の護衛を伴っていつも通り学園へ行ってしまった。
よくよく考えたら俺は休んでくれと言われただけで、依頼主であるセレナはで犯人を割り出せだなんて一言も言われてない。って事は俺は余計な事をしている?
それどころか、下手をすればいらないことに首を突っ込もうとしている可能性すらある。
そう考えると頭の中はスッと冷えてゆき、俺は無言で館を立ち去りそのまま寮へ帰った。




