夜襲
大変申し訳ありません。
最新話に投稿していた話を一旦削除させていただきました。
俺が貧民街で襲撃された翌朝、朝食を一緒に摂っていたアレイアにふと疑問を投げかけた。
「そう言えば、襲撃された際フィールデン殿下は自分で剣を握ったの?」
「えぇ、瑞樹様が何者かに呼ばれた日、殿下も下級生に呼ばれたと言われ護衛を伴って向かわれた際に襲撃されました。その際に護衛と共に応戦し何名かは負傷しましたが、殿下自身は無事でした」
なるほど、なぜ俺が呼ばれたのを知っているのかは置いとくとして、フィールデンには自分で抵抗できる力があるとわかった。
元々授業である程度剣術とかが出来るのはわかっていたけど、実戦で腰が引けるとかは無いようだ。
「それで瑞樹様に一つお願いがあるのですが」
「無茶なお願いじゃなければ」
自分で探偵の真似事はするけど、実際に襲撃の黒幕を探し出せなんて事は骨が折れるから勘弁願いたいんだけど。
「大丈夫です。あくまで護衛の範囲ですので」
いやさっきから俺の行動や心を読むのはやめて欲しいんだけど。
「昨日の襲撃で護衛が減ってしまいましたので、瑞樹様には夜警をと思いまして。いかがでしょう?」
「と言う事は、昼は他の護衛が?」
さすがに丸一日は勘弁してほしいと思って思わず言葉に出したけど、どうやらそんな無茶振りではなかった。
と言うのも、この襲撃の一件は既にセレナに報告が入っているらしく。これはセレナ自身からの提案だった。
「セレナ様は昨日の襲撃は単発ではなく、次が本命ではないかと考えております」
つまり、夜に本命が来るって考えているのか。
「了承しました。では私はこのまま昼間は休ませていただきます。このまま部屋でゆっくりしていますので、何かあれば呼んでください」
そう言うことなら、昼間は動かずにゆっくりしよう。
って言うか貴族街で潜入したあいつら、あのまま斬ってたら未然に防げたのか? それはそれで発覚した時が面倒か。
とりあえず時間が余ったから自室で魔法大全を広げ、今まで使ってきた魔法の復習と今の自分に使えそうな魔法を探していたら、いつの間にかお昼を過ぎて夕方前になっていた。
軽く身だしなみを整え部屋を出ると、そこには今朝と同じ佇まいのアレイアがいた。
「夕飯をご用意出来ていますが、いただきますか?」
「あ、よろしくお願いします」
まさか朝からずっとそこに立っていてわけじゃないよな?
「いえ、ひと段落して落ち着いてかいますので」
だから俺の思考を読むのやめて欲しいな……
とは言え、お腹が空いていたのも事実だからそれはそれでありがたく頂くとした。
そもまま黙々と食べ終わり、据え膳上げ膳でされるがままな俺はこう言うのも悪くないと言う思いを振り切って、思考を仕事モードに切り替える。
俺が食べ終わってもアレイアから何も入ってこないと言うことは、昼間の間は特に問題はなかったと言う事だろう。
と言う事は、本番はこれからか。
「アレイアさん、これから護衛にするにあたって内容を詰めたいのですが、寝室前で大丈夫ですか?」
「その通りです、瑞樹様が付いていただくのは殿下の寝室の前になります。それと居室前にも他の護衛を配置します。一応学園側としても由々しき事態なので警備の数は増やすそうですが……」
そりゃ継承者候補が狙われたとあれば、学園としても黙って見過ごすわけにはいかないよな。
けれどセレナにとっては安心できる材料ではないから、俺にどうにかしろと言うわけか。
夕食終え、フィールデンには寝室から出ないよう釘を刺して全員が寝静まった頃、俺は【探索魔法】を発動させた。
この学生寮を囲うように人が配置されているのは、学園側が用意した警備員ってとこか。実際廊下の窓から覗くと、見覚えのある鎧を纏った奴らが警備にあたっていた。王国軍から派遣された兵士が等間隔に並んでいるのを見て、思わずため息が出てしまった。
王位継承のうちの誰かが襲わせているのに、王国軍の兵士が守るってすごい皮肉だ。一周回ってマッチポンプって発想まで出るぞ。
だからと言って手を抜く理由にはならないから、改めて頭の中で展開された【探索魔法】で周辺の状況を探る。ちなみにこの魔法は今までのと違って、二次元じゃなく三次元に展開され色んな角度から見ることができるようになった。平原みたいな所なら今までの状態でもいいけど、今回みたいな建造物ならこの方が便利だ。
で、肝心の結果なんだけど……二ヶ所で気になる集団を見つけた。
一ヶ所は寮から少し離れた建物の影。そしてもう一ヶ所が、すぐ隣の建物の屋上だ。前者が二人で後者が四人ってところを見ると、候補者一人につき二人で襲撃って所か。
これを計画したのがエギルかリスタのどちらかって考えているけど、カモフラージュで自分のところにも襲わせるように仕向けているってことなのか。
どちらにせよ、フィールデンを守るってことには変わりないからな。
【探索魔法】に意識を向けていると、二ヶ所の反応が一斉に動き始めた。そのうちの二つの反応がフィールデンの寝室の窓の方に向かっていた。
動きから予想するに相当な手練れのようだ。ならこっちもそれなりに出迎えよう。そう考えて【存在遮断】を使って寝室に入り、襲撃者を出迎えようと静かに待ち構える。
二つの反応が学生寮の屋上から壁伝いに目の前の窓へ移動する。それを確認した俺は目を移すと、黒い二つの影が窓に取り付き魔法で窓を開けるのを確認した。
静かに入ってくる二つの影を観察してみると、刃物は持っているけどこの場での殺害は考えていないようだ。その証拠に一人は大きめのずた袋を持っており、それを広げて準備をしている。
さて、準備してもらって悪いけど、それ以上はやらせる気はないからね。
「残念でした、【麻痺魔法】」
「「なっ!?」」
自分たちとフィールデンしかいないと思われた部屋に、突然の背後からの声に反応するけど当然ながら遅い。
魔法によって体が麻痺しその場で崩れ落ちた二人組は、何が起きたのかを確認するために視線だけでも俺の方に向けようとするけど、それは却下だ。
「っむ……下から覗かないでください、変態」
「がっ……」
本当は情報を抜き出そうと思っていたが、思わず足が出てしまい二人とも気絶してしまった。体は美少女かもしれないけど、男に覗かれるのは流石に勘弁だ。
「お疲れ様でした、その二人はこちらで対応します。さすがにもう大丈夫かと思いますが、一応翌朝までこのままの体制でお願いします」
とりあえずこのこいつらはは縛るとしてこの後どうしようと考えていたら、静かに扉が開きアレイアが入ってきて攫おうとしてきた二人を引き取ってくれた。
黒幕を聞くにしても、そう言ったことを専門にやる人材くらいセレナの周りにいそうだし全部任せてしまおう。
にしてもフィールデンの奴、この状況で爆睡とは余程の大物か大馬鹿だな。咄嗟の時に動けないのは問題かもしれないけど、下手に怯えられて状況を悪くさせられないだけマシだと思っておこう。
夜も半ばを過ぎた頃かな、外にいる兵士たちは未だ気付いた様子がない。この国の今後が不安視される光景だけど、俺には関係ない。
思うだけで声に出さない俺は、部屋にあった椅子を引っ張り出して残りの時間をのんびりと過ごした。




