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追跡

 昨晩はハルトナのみんなと色々とお喋りをしていたら、いつの間にか日付を大きく超えていた。楽しい時間というのはあっという間というのを実体験し、これからも何かあれば連絡すると約束をして通信を終わった。

 そこから数時間後……。


「眠い……」


 朝日の眩しさに目を細めながらのっそりと体を起こしてベッドから離れる。いくら昨日に何があろうと、起きる時間は変わらない。仕事は仕事。勤め人と言うのも嫌いじゃないけど、こう言う毎日のルーティンに縛られる生活ってのは中々大変だ。

 冒険者稼業が長い人ほどこう言う貴族相手の長期依頼は大変そうだな。ランク『A』パーティーのオーグとアイラ達ならその辺りの事は詳しそうだ。次に会ったら聞いてみるのもいいかもしれない。 そんなふうに考えながらいつもの服に着替えてリビングに行くと、食欲を唆るいい匂いとともに誰もいないはずのソファーに見知った人物がいた。


「アルジェ、おはよう。どうやって入ったの?」


「おはようございます。瑞樹も食べますか? 結構イケますよ」


 会話を無視して差し出してきたのは、出来立ての串焼きだった。恐らく俺のところに来る前に朝市で出ていた露店にでも寄ったんだろう。紙袋に目一杯入っているうちの一本を俺に差し出した。


「ん、ありがとう、いただくわ。…………おいしい」


「でしょ、ハルトナのもなかなか美味しかったのですが、ここのも意外とありですね」


 朝から串焼きとか胃に重いんじゃないかと思ったけど、味付けがあっさり目なのもあって結構イケるな。

 そこからは一本また一本と貰うと、いつの間にか二人で完食してお茶を啜っていた。うん、朝から肉もアリだな。


「ありがとう、ごちそうさま。ところで朝からどうしたの? 昨日のあいつらはどうなった?」


「えぇ、もちろん大丈夫です。ある程度は吐かせましたよ。その為に来たのですから」


「さすがはアルジェ、早速教えて貰っていい?」


 昨日の夕方に預けてもう情報を引き出すとか、かなり優秀じゃないか。一体どんな手段で吐かせたのか気になるけど、手段を選ぶなと言った事を思い出し、想像はしない方がいいと思って次を促した。きっととんでも無い事になってるだろうな。


「まず昨日のあいつの事ですが、フェルダス五世って奴の直轄のバレジア王国戦略研究所って所で、実験部隊を束ねてたんです。それでその研究所は、魔法もそうですが魔獣化と言うのを重点に研究していたそうです。で、この研究所なんですが、国の暗部も兼ねていたようですね」


 なるほど、あの時廃屋から出てきた黒ずくめは暗部の連中だったのか。国の研究所と繋がっているってのが妙な話だけど、フェルダス五世の直轄って所が色々と物語っているよな。


「それで、私を襲うように依頼した奴はわかった?」


「残念ながら大元には繋がりませんでした。接触してきたのは貧民街の奴らしく、そいつが裏の連中しか知らない依頼所へ手紙と金を持って来たそうです。その研究所へ乗り込んだのですが、既にもぬけの殻でした」


 身元が割れる恐れもあるから、切り捨てるに困らない貧民街の住人を使ったか。そう簡単に尻尾を掴ませてくれるほど依頼者も馬鹿じゃないってことだな。


「一応その手紙らしき物を見つけて持ってきました」


「行動が早過ぎて感謝しかないわ、ありがとう」


 フットワークが軽すぎるアルジェに感謝をして、半分に折り畳まれただけの手紙を受け取って中身を確認する。

 書かれていたのは、俺を貧民街に誘い出すからそこで亡き者にして欲しいとただそれだけだった。宛名もなければ、それに繋がる情報も書かれてない。さらに、魔法的な何かしらの仕掛けもない。本当に徹底しているな。


「黒幕を追いますか?」


 手紙を見て関心している俺にアルジェが声をかけてくる。確かにこれを出した黒幕に辿り着ければ、俺の護衛の負担もいくらばか減るかもしれない。

 けど、それはアルジェの仕事じゃなく、どちらかと言えば俺の仕事だ。


「そうね、けどそれは私の方でやるわ。アルジェは当初の予定通り、リザイン帝国へ行って情報を集めて。あとその際にワイズって言うスキンヘッドの男がいたら、そいつは私の知り合いだから協力するようにね」


「わかりました。瑞樹も気をつけてくださいね」


 それだけ言うと、アルジェは窓から一蹴りで遠くの屋根まで飛び移り見えなくなった。鍵がかかってなかったところを見ると、来るときもここから入ったのか。セレナやフィールデンに紹介していないから正面からは入れないしな。エンガイア王国とリザイン帝国との問題もある事だし、アルジェにはこのまま裏方で頑張ってもらうとして、俺の方はとりあえず放課後にまた動くしかないね。


 それから日中はいつもの通りフィールデンの護衛を勤めた。俺が無事だった事でエギルやリスタに何か変化がないか注意深く見たけど、特に変化はなかった。あの二人の預かり知らない所で指示されていれば見たところで意味はないんだろうけど。それとも全く関係ない第三者かな。


「まぁこれで多分わかるんだろうけどね」


 そして放課後、フィールデンを部屋に送った後すぐに街へ繰り出しから路地裏の人気のない場所で、昨日アルジェから預かった手紙を取り出して魔力を込める。


「走れ走れ彼の元へ 走りて言の葉巡り合おう【追跡者(チェイサー)】」


 魔法を使われた手紙は仄かな光を発すると俺の手から中に浮き、勝手に動き出した。とりあえず効果はありそうだ。

 と言うのも、これ初めて使う魔法なんだよ。今日の昼間に何かいい魔法無いかと魔法大全を読み漁っていたら、この魔法を見つけたってわけだ。

 本来は落とし主を探す目的で作られた魔法らしいんだけど、まさかこんなふうに使われるなんて魔法神アレフも予想外だろうね。

 あとは、これがどこに辿り着くかだ。


 そうして手紙を追いかけること少し、行き着いたのは昨日と同じ貧民街。

 その中でもさらに奥まった所にある朽ち果てた家屋。この貧民街ならどこにでもあるようなボロ屋だ。その中の一つのボロ屋に手紙は迷う事なく向かい、俺もそれについて行く。

 そしてその中には最悪な結果が待ち受けていた。

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