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久しぶりの声4

みんなとの挨拶もここらで一旦区切りです。

「少しはハルトナの様子がわかったかの?」


「えぇ、全員と会えなかったのは残念ですけど、それでも有意義な時間でした」


 あの後アレンたちと談笑し、さらにユミルが舞い戻ってきて場が混沌とし出したからその場は一旦お開きとなった。俺としてももっと話をしたかったけど、それは無事に戻ってからにしよう。

 それで今回来れなかった人たちの中で、まず俺の舎弟を名乗ったダンクは事情聴取のためエンガイアの王都へ移送されたそうだ。

 移送と言われるとちょっと物々しい感じがするが、ダンク本人も抵抗の意思はなくむしろオニルタンでは積極的に防衛に参加してくれたのもあり、さらに聴取には積極的と言うこともあって穏便に済みそうだった。

 しかし済みそうにないものもいる。俺は全く覚えていないのだけど、ダンクの元同僚にヒメルと言うのがいて、それがオニルタンを奇襲した魔獣兵団の中にいたらしく、周囲から相当恨まれていたらしい。

 そりゃ敵国の兵士が終わった戦場にいれば一触即発だろう。だけど、オーグがその場を収めたからだというのだ。あの脳筋がどんな手で収めたのか聞いてみたい所だけど、あいにくその場を見ていた人はこの場にはいなかった。

 実はオーグとアイラはダンクとヒメルを移送する際の護衛依頼として指名されたと言うのだ。ダンクもヒメルも一応捕虜扱いとなっており、さらに重要参考人となっている。

 自分たちの身を自分で守れるだけの実力があるとは言え、エンガイア王国内で暴れたら要らない誤解も生まれるからな。そう言う意味でもオーグたちの指名依頼は妥当なんだろう。


「あのバレジアの二人の扱いは悪いようにはならんから安心して良いぞ。と言うか、今回の戦争はお主のお陰でアレンドリア領主の、メルトリア嬢の一人勝ちじゃ」


「ん? どう言う事ですか?」


 どうやら俺の知らないところで貴族間の難しいやり取りがあったようだ。デンはマイバッハ公爵家の令嬢と個人的な繋がりがあるらしく、どうやらそっちから流れた情報だと言う事だ。


「マイバッハ侯爵家?」


「瑞樹ちゃんは王都で一、二度会っとるじゃろ? 近衛騎士隊隊長をやっておるぞい」


「あー……ソレイユさん?」


「うむ、今の今まで忘れておったようじゃの」


「まぁ忙しすぎて……」


 で、その情報というのが、ギルド本部のマスターであるダンと貴族派が繋がっていたという話だ。これはアルジェから持たされた手紙にも少し書いてあったけど、色々な黒いつながりがあって捕まったそうだ。

 それがメルの一人勝ちにどうして繋がるんだろう?


「ほっほっほ、瑞樹ちゃんには貴族のしがらみは難しいかのう。要するに王国軍のトップは貴族派なんじゃよ。ダンからもたらされたた情報は一応受け取ったらしいんじゃが、政敵である民主派のアレンドリア領を潰すためにわざと陛下へ報告を遅らせたのじゃ。更に派兵を国王派のソレイユ殿率いる一個師団のみと言うあからさまに少なすぎる数も露呈しての。万が一瑞樹ちゃん達が負けていたとすれば、ハルトナまで攻められた時にソレイユ殿達だけの援軍だけではまず無理じゃろう。これを国家反逆罪と判断したわけじゃ。国家反逆罪大罪じゃ。いくら幕僚長とはいえ死罪は免れまいよ」


「うーん、それは自業自得としか」


「本当にの、そして貴族派のトップはお家取り潰しじゃ。メルトリア嬢は何もせずとも政敵が減ったわけじゃな」


 からからと笑うデンを見ておると。本当にさっぱりしたと言える顔をしていた。ギルド本部のマスターを務めてるのは自身の双子の片割れのダンだが、悲壮感はこれっぽっちも無いっぽい。逆に目の上のたんこぶが取れたと言った感じだ。

 俺も王都のギルド本部でダンを見てきたからわかる。ダンは仕事はそれなりにやってきたけど、主義と思想を他に押し付けて従えない者を簡単に排斥する人種だ。上に立つ人間がやってはいけない典型なようなものだ。

 だからこそ、お互いに目の上のたんこぶだと思っていた者が肥大化しているのに気付かずに増長して簡単に潰されるんだ。


「この歳で兄弟を無くすのは堪えるのう……」


「ギルマス……」


 やっぱ血を分けた兄弟を失うのは辛いのか、さっきの笑い顔から突然老け込んだように椅子に深々と座り込んだ。

 戻ったらもう少しだけ優しくしてみるのもいいかも。


「じゃから、戻ったらその胸の中で泣かせておくれよぉ……」


 どうしてこの人がいまだにギルマスの椅子に座り続けていれるのか理解に苦しむな。


「一瞬でも同情した私がバカでした。そんな事よりあと顔を見せていないのは……ワイズさんは元気なんですか?」


「ワイズ、ワイズのう……それなんじゃがのう……」


 何だよ、エロいことははっきりと言うくせに本業は歯切れが悪いとか逆にしとけよ。いやそれもダメか。

 ってか、ワイズは確かデンの下で諜報活動みたいなことをやってるんだっけ? それでデンが言い淀むってことは、何かしらのトラブルがあったってことか?


「ワイズさんの身に何かあったって事ですか?」


「やっぱりわかってしまうのか。さすがは瑞樹ちゃんじゃ。実は数日前に戻ってくる予定がいまだに連絡すらなくてのう……」


 わからいでか。

 デンが言うには、去年の戦争でバレジア王国とリザイン帝国が裏で繋がっていた情報を元に、ワイズに定期的にリザイン帝国へ偵察に出していたと言う。

 三年前の当時、アレンドリア領主邸や鉱山で起きた事件の時も知らぬぞんぜぬで通したリザイン帝国だったが、オニルタンで起きた戦争以降にわかにざわめき始めたんだとか。

 それを数回にわたってワイズに調査させていた所、期日を過ぎても戻ってきてないと言うことだ。

 バレジア王国内でもまだゴタゴタしているから戦後交渉もまだなんだけど、ひょっとしたらそれも関係あるのかな?


「わかりました。私からも一人応援を出しましょう」


「おぉ、ひょっとしてあの別嬪さんかの?」


「えぇ、わかっていると思いますが、下手なことをすれば街どころか国が滅ぶので気をつけてくださいね」


「も、もちろんじゃよ……とほほ」


 命知らずも程々にしときな? 言い聞かせてはいるけど、アルジェにだって我慢の限界はあるからさ。

 それに、ワイズもヘマをしたとしても簡単にやられるやつじゃないと思ってる。だからどこかでしぶとく生きているさ。





「最後に、メルは元気ですか?」


「うむ、お主からの手紙を受け取った時は涙を流しながら大事に抱えておったぞい。今はちょうど民主派との会合でハルトナから離れておっての、お主が生きておるとわかってからは更にやる気に満ちておったぞい」


「それを聞いて安心です」


 俺が地割れに落ちる瞬間に見たメルの顔が気がかりだったけど、今は元気そうで何よりだ。


「何を言うかオーグたちから聞いた話じゃと、自分から地割れに降りて探しに行こうとか跡を追おうとか色々大変だったらしいぞい。罪作りなのも程々にしないといかんの」


 え、全くそんなつもりは無かったんだけど。マジで?

 でも、凄く心配させてしまったのはどれもこれも同じだ。これはハルトナに戻ったら挨拶行脚が大変そうだ。今のうちに腹は括っておこう。

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