久しぶりの声3
恐る恐る頭を上げるも、アレンの目が凄く険しい。そりゃそうか、一度は断られてるからな。
だから俺もアレンからの視線を逸らさずに真っ向から向き合う。その瞳はさっきとは違って決意がこもっている。全く、初めからそのくらいの覚悟と真剣身を出して話してくれたらこんな面倒な事をせずにすんだのに。
「ま、ギリギリ及第点って感じかな」
「じゃ、じゃぁ……」
「えぇ、加入を認めるわ。ミューゼル……とイニアスもね」
「あ……」
俺がイニアスの名前を出してからやっと気づいたんだろう。二度目の懇願の際にイニアスの名が出てこなかったことを。
当然ミューゼルが入って来た時にイニアスも一緒だったのを俺は通信玉越しに見ていたけど、場の雰囲気のためにあえてスルーさせて貰った。
「これからよろしく頼むよ、リーダー代理。メンバーをど忘れなんて、これっきりにして欲しいな」
「お、おう、悪かったって」
チクリと嫌味を言うイニアスから視線を逸らして苦笑いをするアレン。
イニアスも本気で怒っていないところを見ると、どうやら俺がいない所でも良好な関係を築けていたようだ。うん、これなら話を進めても良さそうだ。
「そう言う事なら話を進めても良さそうだね。メリッサさん、いますか?」
「はい、いますよ。加入の件で大丈夫ですか?」
メンバーを加入させる場合は、ギルドでリーダー自身が受付しなければならない。そのことがわかっているから全員何も言わない。けど、俺がメリッサをよんだ件はそれとは違うものだ。
「いえ、それはアレンにやって貰いますので」
「ん? それはリーダーじゃなきゃ無理だろ?」
「だからよ」
いまだ要領を得ないアレンが首を傾げるのも無理はないね。説明してもいいけど、手続きをしたほうが早いからメリッサに向き直って話を続けた。
「メリッサさん、パーティーリーダー移譲申請をします。リーダーを私から正式にアレンにします」
「……は?」
俺以外のその場全員が固まった。うん、まぁ誰にも言ってなかったからね。けど、そこまで衝撃的な事じゃない様な気がするんだけどな。
「瑞樹さん、本当にいいんですか?」
「えぇ、今のやり取りで決心しました」
「ちょっ、ちょっと待てよ! いきなり何を言い出すんだ? 俺がリーダーをやるってどう言うことだ? それで瑞樹はどうするんだよ!?」
いきなりの事で混乱するアレンをよそに、メリッサには手続きの準備を進めてもらう。
「そうだね、私はこれを機にソロに戻ろうかと思ってるわ。アレン、それに他のみんな。私ね嬉しかったんだよ」
そりゃ思いれもあるけどさ、それ以上に嬉しかったんだよ。俺がパーティーを離れる時にあんなに不安がっていた三人がさ、自分たちの意思で色々行動して決めて必死に訴えかけてくる事がね。
そうなると、この後俺が合流してみんなと一緒になったらさ、きっとこの三人の成長の邪魔になると思うんだ。だからきっと、このタイミングがベストなんじゃないかと思うんだ。
「刃物の振り方もわからなかった君らがさ、こんなにも頼もしく感じる時が来るとは思わなかったからね。だからこれからは君ら四人一緒に成長していくべきなんだと思うよ」
「そんなこと言うなよ、お前が起こしたパーティーだろ? それにまだ自身が……」
「それは良くないね、私の前で見せたさっきの決意はどこに行っちゃったのさ? ギリギリ及第点だとしてもリーダである私が認めたんだから、皆の前ではもっとどんと構えるべきだよ」
俺たちの会話が終わる頃を見計らったようにメリッサが書類を用意して来てくれた。
「ではパーティーリーダーの変更申請は瑞樹さんからアレンさんですね。この申請受理後から正式に交代となります。アレンさんにおいてはパーティーとしての依頼において、一定の責任が発生するのでご注意ください。と言いましても、今まで代理でやってきてますからその辺りは理解されていると思うので、大丈夫かと思います。それでも気になる事がありましたら、その都度聞いてくださいね」
「お、俺は……」
「アレン様、以前も言いましたが私がサポートしていきますので、大丈夫ですわ」
「そう、リーダーを盛り立てるのもメンバーの役目だよ」
「そう言うことだ、全部抱え込まなくていいからな」
つらつらと事務的に説明をするメリッサとは対照的に何かを思い詰める様な顔をするアレン。
だけどミューゼル、マリン、イニアスと、周りのメンバーが口々にフォローするのを見ると俺の判断は間違ってなかったと思う。
「あ、そうだメリッサさん。『エレミス』の隠し預金なんですが、四分の一をケニーに渡してもらっていいですか?」
「あれの四分の一ですか。いいんですか?」
「もちろんです。ケニーの門出の為にも先立つものは必要でしょうしね」
「そう言うことでしたら。早速手配します」
リーダーの交代手続きと俺のお願いのためにメリッサは足早に去っていくと、何の事かと頭にクエスチョンマークを浮かべている五人のために説明を始めた。
「さて新しいリーダーのアレンと、これから弟のためにがんばるケニーにサプライズだよ」
そう言って俺はパーティーを結成してから今までの依頼の報酬を少しずつ積み立てしていたことを明かした。
ってか、報酬が少し足りない事に気づかなかったのか?
「いやぁ私たちギルドカードに入れて少しずつ出してたから、どれだけ入ったなんて見てなかったのよ。ってかさすがは瑞樹よね!」
マリンよ、そこは感心する所じゃない。
マリンも武器屋の娘だから多少の金勘定ができると思ってたけど、金銭管理はまた別問題か。その辺りはアレンは不向きそうだし、ミューゼルとイニアスに期待するしかないな。
「瑞樹、何と感謝したらいか……」
「気にしないで、元々はパーティーの物なんだから。トニー君とパーティーを組むんでしょ? 何かと入り用になるんだから、役立てなさい」
「あぁ……本当にありがとう」
「アレンたちも残りをそのまま渡すから、それで足りないものを四人で揃えなさい」
「わかった、ありがとう瑞樹。ならまず初めに買うものは決まったな」
「そうだね!」
おぉ、このわずかな時間でもう買うものが決まったのか。さっきもアレンの体が大きくなったって言ってたし、俺も防具を新調するべきだと思う。
「何言ってんのよ瑞樹。パーティーを結成したらまずこれでしょ?」
「あぁ、これこそスタートラインだろ!」
「これがないとな」
そう言ってアレンとマリンとケニーは揃って腰に刺したものを抜いて俺に見せてくれた。
「まったく君らって人たちは……誰に似たのやら」
「「「初代リーダーにだろ(でしょ)」」」
そう言って笑顔で声を揃えると、お揃いのダガーを俺に見せてきた。まったく、本当に誰に似たのやら。




