こいつら大丈夫か……?
「さて、さっきは失礼したわね。改めて、私の名はメルトリア・クーリッヒ・アレンドリア! この地方を統べる領主だ!」
豪華な食事を前にして、お互いに改めて自己紹介をした。
俺の場合は出自をあやふやにしているからあまり突っ込まれると困るんだけど、この領主様はそう言う所は余り考えていないのか、それとも先に身辺調査を済ませているから特に聞かないと言う事なのだろうか。
「所で、メルトリア様は何故私を呼ばれたのでしょうか?」
「瑞樹よ、私は悲しい……」
へ……?
「さっきあれ程くんずほぐれつ絡み合った仲だというのに、まだそんな硬い喋り方をするというのか……」
いや、あれ一方的にアンタが絡んで来ただけじゃないか!
それに流石に領主さまを呼び捨てとかすればねぇ……。
トバスの方を見れば……あれ、頷いてる。じゃあ他の使用人は……頷いてる……。
…………マジ?
「コホン…………えっと、メルトリアは……」
「メルと呼べ」
「メルは何で私を夕食会に呼んでくれたのかな?」
首を跳ねられる、なんて事ないよな?
護衛の方を見ると……やっぱり頷いてる。
良いのかよ!
「やっと気軽にメルと呼んでくれたな! これからはずっとそれで良いぞ! 私が許す!」
「流石に公私の混同は無理ですが、軽い場なら」
「む、しょうがないじゃあそれで頼む」
ちょっと納得いってない顔だけど、そこは勘弁してくれ。
「でだ、何で呼んだか、だったな。それはな、昨日の皆の戦いっぷりを防壁の上から観てたんだよ」
あの緊張の最中に上から観戦ってどんだけ怖いことしてるんだよ……ほら見ろ、護衛の人が昨日の事思い出して、泣きそうな顔してるぞ。
「それで、デンの派手な魔法を眺めて楽しんでたら、その後魔物が飛んできて門が破壊されたんだよ! どこのどいつだ! って思って見たらオークキングで、その前に立ちはだかる奴がいたんだよ! そんであっという間に首を一刀両断だ! どんな猛者がやったんだと思ったら、私と同じくらいの女の子っぽく見えたんだよ。 でまぁデンに聞いたらそれが瑞樹だったと言うわけで、ここに呼んだと言うわけだ」
一部始終を上から見られてたのか。
で、要するにどんな奴か見たくて呼んだと。
「それで、呼んでみてどう?」
ここは率直な感想が聞きたいな。
「ふむ、そうだな。瑞樹、お前は誰に対しても一枚壁を作っている感じだな。だから丁寧な物腰に見えてるけど、固っ苦しくなりがちなんだと思うぞ。言われた事ないか?」
いや、あります。ついこの間緊急直前に似たようなこと言われました。
でもまぁ実際そうなんだよな。
全てを明かせない以上どこかで線引きしないといけないし、迂闊にボロが出るとも限らないからな。
「ありま……じゃ無くて、あるよ。しかもつい先日ね。その人にもタメ口でいいって言われたばかりだよ」
「だろうな。今日初対面の私に言われたくらいだ、この街に来て十日間くらいか? その間に出会って、鈍感じゃない奴なら判ると思うぞ」
マジか……。
「まぁ急に変わろうと思わんでいいよ。ただ、私も含めて瑞樹と仲良くなりたいと思う奴の思いには、何れ応えてくれると嬉しいがな」
そうなのかな……?
俺が変わらないといけない……か
「じゃあここからは食べながら話そうか。それでデンと瑞樹、今回の一件どう見る? 二人のランクや肩書き関係なく答えてくれると嬉しい」
「そうじゃの……瑞樹ちゃんの報告から聞く限りじゃと、ちと頭が回り過ぎとは思うぞ。大森林に入ってからの捨て駒と良い、替え玉の様にロードを配置し、さらに背後から挟撃。その間自分は大森林の魔物と一緒に街へ侵攻。どうもこれらをキング一体で、考えて動いたとは思えんのじゃがのう?」
それは言えてる。
初期の捨て駒な配置も考えてみれば、均等に分散されていた。
しかも俺らの来る方向に向かって万遍にだ。
「瑞樹ちゃん、まだ何か思い当たる事あるのかのう?」
俺が考え込んでいた様子を見てギルマスが声をかける。
思い当たると言うか、ちょっと確認したいことって感じだな。
「ギルマス、確認したい事があるのですが。オークって普通のからキングまで、会話は種族言語ですよね?」
要するにその種族ならではの会話方法だ。犬なら「ワンワン」猫なら「にゃーにゃー」だ。
「そうじゃの。だから雄叫び一つで突入して来るんじゃて」
昨日のあれか。
まぁ街の被害が軽微で済んだって話しだ。
「瑞樹よ、それがどうしたんだ?」
「メル、昨日私が倒したあのキングは、人族の言葉を喋ったんだ」
「「は……?」」
あ、その反応でわかったよ、やっぱり喋らないんだな。
「で、何を言ったんだ?」
「えっと……確か、『お前、雌だな。俺の子を産め』だったかな?」
「「私の瑞樹になんて事を言うんだ(じゃ)!!」」
いや、お前らのじゃ無いし、食い付くとこそこかよ!
身を乗り出してまで叫ぶ事じゃねぇし。
「デン! キングの首を晒しにするんだ! 看板に罪状書いとけ!」
「任せるんじゃ! 罪状は『瑞樹ちゃんを慰み者にしようとした罪』じゃな!」
「おうよ!」
「やめて! それじゃあ私が恥ずかしいってば! トバスさんも見てないで何か言ってくださいよ⁉︎」
「大丈夫です、行動に出る前には止めますので」
それじゃあ遅いっつーの! ちょっと、他の人も目を逸らさないで⁉︎
ダメだ止める人がいない。
せめてメリッサがいればもう少しマシになってたかな?
ちなみにユミルがいたら絶対に悪化してる確信はある。
ってかこの街とギルド、もうダメじゃね?
静まるまで放置だ放置……
誤字や脱字。
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