気付いたら死んでた!
息抜きに書きました。
「起きてくださ〜い……」
「あと五分…………」
「いえ、起きてくれないと困るのですが……悪戯しちゃいますよ?」
「次の目覚ましが鳴るまで待って……」
「わかりました。まぁ、能力的に変わり無いのでいいですけどね……えいっ」
俺は体を揺さぶる見知らぬ人を跳ね除け、布団を頭からかぶった。
ここ半年ほどずっと残業残業でロクに寝てなかったから、久々の休みくらい心ゆくまで寝かせて欲しかったのだ。
例え仕事の電話が来ようと、知人が訪ねて来ようと寝続ける予定だ。
「んぁ〜〜〜……寝たわぁ……ん?」
(ん?……ここどこ?)
次に目が覚めたときには、自分の良く知ったアパートでは無く、真っ白な何もない空間だった。
きっと夢なんだと思って再び布団をかぶって起きてみたが、目の前の風景は同じままだった。
「あ、やっと起きましたね? 結構待ちましたよ〜」
「…………誰?」
まぁ率直な意見だと思う。
そもそも白昼夢を見ている様な空間なのに俺自身が驚いていないのも違和感だ。
「よくぞ聞いてくれました! 私はなんと〜〜〜女神様です!」
この女神様、ノリノリである。
溜めから決めポーズまでの一連の流れがスムーズなあたり、結構練習したんだろうな。
まぁ取り敢えず。
「ごめん、トイレどこ?」
「あの扉ですよ〜」
何もない空間にポツンと扉がだけがある。ぶっちゃけただ扉が立っているだけにしか見えないが「開ければわかりますよ」と後ろから聞こえるから従う。なるほど、確かにトイレだ。
用だけ済ませてからこの夢が覚めることを願って、もう一回寝直そう。
(ん…………?……ない……だと?)
無いと言うのは勿論、男の象徴であるアレの事だ。
「女神様とやら、夢でもなんでも俺を女の子にするのは如何なものかと」
「取り敢えず済ませて来てくださいね。話はその後ですよ〜」
確かに一理ある。漏らしては大人の尊厳に関わる。
洋式に違和感なく座り終わらせる動作に『違和感が無いのも違和感』だ。
これも白昼夢のせいだろうか?
「で、あんたは誰だ?」
「私はなんと〜〜〜女神様です!」
また決めポーズだ……スルーだスルー。
「で、その女神様とやらが、俺の白昼夢になんの様だ?」
「やですねぇ。白昼夢じゃ無くてここは天界ですよ〜〜? ご存知ないんですか? 瑞樹君死んじゃっているんですよ?」
「は?」
さすがにここはスルーできない所だ。
いくら職場がブラックで激務とは言え、自分で死ぬとまでは思っていない。
昨日は風呂に入って布団で寝るまでは、ちゃんと記憶はあった。
「ちなみに死後三年経ってますよ?」
「なんでやねん!」
いや俺、関西人じゃないけど、そのくらいのツッコミは許してほしい。
「だって私、起こしましたよぉ。そしたらあと五分って……」
五分どころじゃないな……。
「わかった。じゃあ何で体が女の子なんだ?」
「起きてくれないので、悪戯しました〜〜♪」
いや、可愛く音符マーク付けてもダメな気がする。
そもそもなんで俺が死んでここにいるのか何だが……。
「そうですね。そこん所大事なのでちゃんと聞いていてくださいね!……実は……」
「実は……?」
「私が殺しました……」
「は?……」
意味がわからん。
仮に目の前の美女が女神様だとしても、俺を殺す理由が全くない。
と言うか、言動や行動が女神っぽくない。
「んと、まぁ女神様見習いという所ですね。で、自分の作った世界のテストを兼ねて、別の世界の人間を送り込んで、モニタリングをして貰おうと思って選んだのが、瑞樹君となりま〜〜す♪ おめでとうございま〜す♪」
「いや、そういうの良いから生き返らせろよ」
おめでたくねぇし!
これはとんだ良い迷惑だぞ。
モニター抽選で選ばれただけで殺されるとかたまったもんじゃない。
「無理ですよぉ。死後三年経ってるって言ったじゃないですか〜〜」
女神様は「それに〜」と付け加えて、何もない空間から今度は姿見を出すと、俺を立たせて全体像を映し出した。
「悪戯とは言え、こ〜〜んなに可愛くしたのですから、向こうの世界で楽しみましょうよ〜」
姿見に映し出された俺は確かに銀髪で美少女だ。
しかし、殺された事を正当化されたくないし、それに何故だかグイグイ来る。
「なぁ、何を隠してる? 正直に言ってみ?」
明後日の方を見て口笛を吹いている。
ダメだこいつ……。
ならば!
「今なら女神様のお願い聞いてあげようかなぁ〜〜♪」
あざとい。
自分でポーズ決めといてあざと過ぎる……。
「ほんと⁉︎ 実は既に瑞樹君で上司に申請出しちゃったんですよ〜〜。今更変更が不可能なんですよね〜〜♪」
「見切り発車か!」
この女神様ダメかも知んない……。
「でも地球ではこういうの流行っているんじゃないんですか? 異世界転生ってやつ?」
「流行り廃りで勝手に殺されてたまるか!」
「まぁまぁ、もう元の肉体無いんですし、今ならお約束の特典も付けちゃいますよ!」
確かに肉体が無いのならどうしようもないし、ここからは建設的に考えるとするか。
で、その特典とやらはなんだろうか。
「私の作った世界はまぁ所謂コッテコテのファンタジー世界なんですよ。なので、すごい剣とかあげちゃいますよ!」
なる程、初めから強い武器とかくれるって訳か。
いや、まて。
「まぁ女神様の世界がファンタジーなのはわかった。けど、俺は武器とか使ったことないぞ? ちなみに魔法もだ」
科学が発達した世界の人間を異世界へ送ったところで、戸惑うだろ普通……。てか送られる前から俺が戸惑ってるぞ。
ほらみろ、この女神様、頭抱えちゃってるよ。
「あ、そうか。死なない様にすればいんですよ!」
「いや、だから放り出されたら死ぬだろ……」
「それでですね、特典は色々つけます。それを体に馴染ませる様に、修行して来てください! そうすれば死にません!」
この女神様、絶対友達いないだろ……勝手に話を進めやがる。
「もう良いよ、元の体ないんだろ? で、修行先はどこだ?」
「私の先輩の所です。特典も付けて話しを通しておきますので、頑張って来てくださいね!」
会話だけで疲れる辺り、会社のクソ上司と変わりないな。
まぁ既に死んで数年経っていると言うから、既にみんなの記憶から無くなっているんだろう。
そう思うと少し寂しい気もするが、そんなに親しい知人がいる訳じゃなかったから頭を切り替えていくか。
そう考えていると、手配が終わったのか、女神様は別の扉を指して俺の行く先を示す。
「そういや名前を聞いてなかったっけ? 俺の名前は渡良瀬 瑞樹」
「私は女神見習いのエレンシューエルです。エレンと呼んでください」
そう言うと、俺の差し出した手を両手で握って、送り出した。
「では瑞樹君の特典を付けましょう。……こうして、ここをこうっと、女の子はずっと可愛いほうがいいですしね〜ちょっとばかり寿命を長めに……ぽちっと!…………あ」
この女神様は本当に余計なことしかしない様だ……




