CHAPTER9ー6 狙い通り
こんにちは。皆さん地震は大丈夫でしたでしょうか?
僕自身は震度6強の災害にあいました。
幸い、命も家も家具も無事でライフラインも昨日復旧しまして、日常にいち早く戻ることができました。
しかし東北の方たちが日常に戻るにはまだまだ日数がかかるかもしれません。
しかし日本人全員の力を合わせればこの困難を乗り越えられると思います。
皆さん、心を一つに!!思いを一つに!!
被災された皆様には心からのお見舞いを申し上げますm(__)m
ー病室前ー
小林達に全てを語った吉田と後藤は病室に戻ってきていた。
「あーあ、こんな厄介なことになるとは………」話し疲れたのか、ついぞそんな愚痴が吉田からこぼれた。後藤は苦笑しながら言った。
「さすがに奇襲してくるとは思っていませんでしたからね。」
「控えめに活動してたのに、その努力も水の泡だね。」
「……ですね。」
「あ、居た…………」
「始めから部申請して部費を受けとれば……って、ん?」
吉田が愚痴っていると声がした。
「こっち………」
「あ、蛯原さん?」
病院の窓から強力な夕陽が射し込んでいたために目に入らなかったらしい。
「怜衣ちゃん……」
「ん?美樹?どうかした?居た?」聞き覚えのある声がした。
「あ……貴司!!」
「岩本さん?」吉田はややうんざりした声を出した。後藤が車椅子を回して二人に向き直った。
「貴司………具合は?」
「微妙です。」吉田がいった。
「何もしなければ痛くないんですが、立って歩くと痛みます。」
「それって、微妙なの…??」蛯原が顔をしかめた。
「そうかそうか。それは重傷だ。」
「「!!」」吉田と後藤が絶句した。
長身の男が岩本の後ろに立っていた。
「やあやあ?久しぶりだね。」
「あなたは……岩本さんのお父上!」後藤が目を見開き、頭を下げる。吉田もほぼ同時に頭を下げる。
「いやぁ、そんな畏まらんでも。むしろ、お礼とお詫びを言わなければならないのはこちらですからな。」岩本の父たる岩本浩二はずかずかとこちらに歩み寄り、突然土下座した。
「すみませんでした!!娘の命を守ってくれたお相手にこのような深傷を負わせてしまい!!すみません!!」
吉田と後藤はびっくり仰天した。
「いやいやいや、悪いのは僕です!岩本さんを巻き込んだ張本人が助かって岩本さんに何かあったらそれこそ……」
「そうです。ですから顔を……!」
「いや!!君達に申し訳がたちません!!聞くところによると君達の他にも何名かの生徒にご迷惑をおかけしたとか…………」
「違います!!発端は自分たちですから!!!」
岩本浩二はようやく顔を上げた。病院廊下の遠くで看護婦や患者達がじろじろ見ている。
完全な土下座で心からの謝罪だということがよく分かった。ほうっておいたら腹を切るかもしれない。
「分かりましたから、やめて下さいよ。やめてくれないなら許しません。」吉田がフッフと笑って言った。後藤も頷いた。
ならば、と岩本氏は立ち上がった。
「君は入院費を工面できないのではないかね?」
「………………」吉田は苦り切った顔になった。蛯原が割り込む。
「貴司君自身が言ってたことじゃない。後藤君に。」
「立ち聞きしてたんですか?」
「そんなこと……後藤君が教えてくれたの……」蛯原が赤くなりながら答えた。
「いつの間に?」吉田が顔をしかめて後藤を振り返った。
「ポケットの中で携帯を操作しました。」悪びれる様子を見せない。吉田は相変わらず器用な後藤の手口に呆れつつも感心したようだ。
「そこでだ。」岩本氏 が言った。
「娘を助けてくれたのは原因が何であれ事実だ。私が君の治療費を負担しよう。」
「いや、それは。」吉田は首を振った。
「受け取れませんよ。 それでなくとも岩本さんには会費として依頼をしてくれてるんですから。今回は自業自得ですから、受け取る理由がないじゃないですか。」
「君、君。」岩本氏は首を振った。
「理屈がどうこうではないのだ。私は大人としても、言っているのだ。子供はそもそもお金の心配なぞするもんではない。君が苦労してきたことを考えれば尚更だ。
「今までの苦労があったにしても、それは岩本さんには責任はないんですよ?学校にもいけなくなりますし………」
「入院から通院になるのはそうかからんと思う。今無理して傷をひどくしたら、それこそ皆に迷惑だ。」
「そうは言っても………」
「だああ、聞き分けのない子供だ。怜衣!」
「うん。」岩本が進み出てきて吉田にナイフを突きつけた。
「何の真似ですか?」
「受けとるって言って。じゃなきゃ、目を刺すよ?」
「脅迫とは手が古いですよ?岩本さん。」吉田は岩本を冷たく見返すだけ。
「お辞儀するだけでいいから。」
「断ります。」
「じゃあ、えいっ。」柄を突如、傷口に押し付けた。
「痛っ!」不意をつかれて、吉田は思わず体を曲げた。
「よし、お辞儀した。」
「えっ?いやいや岩本さんが無理矢理させたんでしょう!」
「なんで?あたしは目を刺すつもりだったのに、手が滑ってお腹を押しちゃっただけだよ?見てたよね、後藤君。」
「はい…見てました。」
「笑いを堪えてんじゃねえよ!貴様どっちの味方だ!」
「まさか吉田君ともあろう者が約束を破るのかね?」岩本氏が顎髭を撫でながら言った。
「顧客との約束は遵守だろう?」
「ニヤニヤしないで下さい!!」
「貴司君がそんな人だったなんて………」蛯原が芝居がかった仕草で俯いた。
「小林君達に言わないと……私そんな人の隣に居られない……」
「だああ!!分かりましたよ、お辞儀しました!しましたから!!」
吉田が頭を振った。
「そうと決まれば、早速受付に行ってしまおう。いや、礼はいらない。じゃあ後藤君、吉田君を任せたよ。」岩本氏はさっさと行ってしまった。
「さあ戻りますか。」後藤が回り込んで車椅子を押した。
「なぁ、ごっつぁん。」
「はい?」
「普通に歩ける、という造作をするまでにどれくらいかかると思う?」
「うーん、そうですね、1週間くらいじゃないですか?」
「そんな早くはないよ。」岩本が横から言った。
「歩けるようになっても病院は絶対、外に出したりしないよ。それで悪化したら意味ないでしょ。」
「………確かに。」渋々吉田が頷いた。
寝室に辿り着くと、吉田は自力で立ってみた。
「やっぱ痛いな………どっちの足に体重かけても変わらない。」
「……その重傷ですからね。」
「ごっつぁん、同好会の方は任せるよ。」
「え~~~」
「え~~~じゃないだろ!僕も副もいないんだから、ごっつぁんがまとめい!」
「分かりましたよ。」それを聞くと吉田は横になった。
「歯痒いな……僕らの留守を狙って、ということになるかもしれんからね……」
「……警戒は十分にします…」
「………今何時?」
「6時過ぎです。」後藤が答えると、吉田は窓を見やった。
「少しまだ明るいな。ごっつぁん、明日からは来なくて大丈夫だよ。」
「えっいいんですか?」
「同好会の仕事が有りすぎるよ。僕は一人でも大丈夫だからさ。」
「あの。」唐突に声が上がった。吉田と後藤は声のした方を向いた。
「もし良かったら、私が……私が色々と貴司君の荷物をお届けします!」
「えっ………でも蛯原さんには部活があるでしょう?」同じバド部員の後藤が言った。
「早めに切り上げるくらいなら………」
「僕は、蛯原さんにそうしてらう理由がないように思いますね。」吉田が言った。
「蛯原さんに迷惑がかかるじゃないですか。」
「私はそんな………迷惑だなんて……!」
蛯原が手を振った。と急に思い出したように言った。 「それに、私貴司君の隣の席だし、先生に言われたし……!」
「手伝ってもらったら、貴司?」
「そうですね……蛯原さんが悪くないと言ってくれたら、私も助かりますしね…」後藤が頷く。
「助けが必要な時は助けてもらいなよ。」岩本が言った。
「……………本当にいいんですか、蛯原さん?」吉田が言った。
「私は全然……!役に立てて嬉しいです。」蛯原はやや顔を赤らめて言った。 「本当にありがとうございます。必ずご恩に報いるようにしますね。」吉田は徐に立ち上がり、深々と蛯原に頭を下げた。
「そんな………!」蛯原があわてて手を振り、岩本がじゃこれで、と言って無理矢理蛯原を病室から連れ出した。
ー学校ー
「血の跡が凄いね……………」
「色が変色してるからまだマシだよ………見るんじゃなかったかな。あんな真っ赤な血の海を見なきゃよかった。」バド部のジャージを着た三次が言った。
「そうだね…………あれ消えないのかな?」松本が廊下の一角を差した。黄色いテープか張り巡らされ、立ち入り禁止になっていた。
「消せるには消せるんじゃないかな?でも時折警察の人達が居ることを考えると、やっぱり消しちゃダメなんじゃないかな?」
「………吉田くんの血なんだよね?」
「うん………」
「……………」
「……………」
「大丈夫だよ、志穂らしくないなぁ、無事だって聞いてるじゃない!」
「そうなんだけどね、貴司君にしても、弘毅君にしても、危ないことに関わり過ぎるんだよ。麻衣は心配じゃないの?」松本の方を向きながら三次が言った。
「………弘毅の場合は吉田くんと違って無鉄砲な所があるからね……心配だけど今は無事だから、これに懲りて、と願っちゃうかな。」怪我してるのに、それを喜んでるみたいでいまいちだけど、と松本は苦笑する。
「………………」三次は黙って血溜まりの跡を見据えた。




