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CHAPTER8ー3 開戦、クラスマッチ

暑いです。


僕が執筆を初めてから、1年と5か月が経ちました。最近は自分でも読み返して満足のいく……………とまでは行きませんが、納得のいく作品にはなっています。僕の友人達が小説を読んでくれているらしく、メールでアドバイスをくれたり、学校で直に言ってくれたりします。だが、誰一人としてお気に入り登録や感想を書いてくれない………(笑)


それが全てではないのは百も承知ですが、やはり執筆たるもの、読者からの声というものは書く原動力になります。ので、皆様、お気に入りになりましたら、どうか感想を寄せてください。今回はこの辺で。

小林達也がバッティングセンターで意味もなく文句を言っていた。

「何で130キロがないんだよ。」そのバッティングセンターには最高速度は120キロのゲージしかなく、小林や鈴木、小橋といった面々には余裕で打てる球だった。

「じゃしょうがないな。」鈴木はそう言って定位置より2歩前進した。

「これくらいかな?」鈴木はバットを構えた。ボールが飛んでくる。打った!しかしライナー的な当たりだった。

「一気に打ちにくくなったぜ。これならいい練習になるな。」小林が鈴木に変わり、やってみたが確かに快音は出なかった。

「フム………だがこんな球を投げてくる奴がいるかね?」鈴木が言うと、傍観していた堀江が首を振った。

「まあバッティングセンターに来る機会も少ないしな。いい経験だ。」

「明日のスタメンは決めたのか?」小橋が言った。

「決まってる。打順は、俺、隆徳(鈴木)、貴司、館、海老澤、小橋、春日、堀江、大塚でいく。」

「投手は大塚?」

「そ。園部君は怪我したら困るからな。」

「俺はいいのか。」

「もちろん。」小林は何いってんだ、コイツという表情で大塚を見た。大塚はため息をついた。

バッティング練習はまだまだ続く。


ー駅南ー


「じゃあね~~怜衣~~~」

「またね~」友人を見送りにわざわざ駅南まで見送った後、自分はブラブラと歩いていた。家……である邸宅に帰ると、どことなく落ち着かなかった。一応はお嬢様ということなのだが、自分の性に合っていなかった。岩本は何の目的もなくブラブラと歩いた。駅南にある川辺のベンチに何組かカップルと思わしき2人組が座っていた。

岩本は裏路地に入った。質の悪そうな男達が、たばこを吸い、地べたに座っていた。

「………ッ」ところが男達は岩本を見ると逆に警戒するような表情になった。 以前、岩本から金を巻き上げようとして、返り討ちをくらった連中だった。岩本と眼を合わせないように完全に下を向くか上を向いたりしていた。岩本は気にする素振りすら見せず、スタスタと歩き去った。いりくむ路地をひたすらに歩く。気が付けば駅の明かりや喧騒が聞こえなくなった。 岩本は住宅街に入った。何か全体的に暗い街で、重苦しい雰囲気があった。岩本はそれまでの目とは違い、真剣な目付きになった。これこそが岩本の目的だった。7時を回った時間帯なので、帰宅するサラリーマンやら買い出し帰りの主婦やらでなかなか人はいた。

暫くして岩本は一軒の家の前で立ち止まった。じっと見つめるその家は、普通の家とは違う何かがあった。冷気……さもなくば悪寒がするような気配がした。岩本は勇気を出して家の敷地内へと進入した。


ー2時間前の棋道部室ー

トントントントントントントントントントン。


ノックが10回なされた。既にポーカー対決は終わり、部室には吉田がただ一人、依頼と思われる手紙を机の端に置き、パソコンを操作していた。

「どうぞ~~~~」吉田はやる気のない声で言った。

「来たよ~~~~」岩本怜衣が手を擦りながら入ってきた。

「お疲れ様です。」吉田はパソコンから顔を上げずに労った。

「何の用事?貴司に呼び出された覚えは後にも先にも初めてだよ?」

「そうですな。岩本さんに依頼があるんですよ?」 「ふ~ん、良いけど高いよ?」

「………………………………」

「や、じょ、冗談に決まってるでしょ!そんな暗い顔しないで!逆に怖いよ!」

「嫌な女だな………………ハァ………」

「!!冗談だってば!」

「とか言うのを全部録音………」吉田は腰ポケットからテープレコーダーを取り出した。

「冒頭のみ録音しますた。」吉田はそう言って再生させた。岩本の「高いよ?」の部分だけ録音されていた。

「なっ!ズルい!あたしちゃんと冗談だって言ったけど!」

「テープレコーダーは嘘は語らぬ……明日にでもようつべに流そう………」

「………………」

「やられたくなければ、ロハでよろしくwww」吉田が言った。

「最初からそのつもりだってば。」

「流石、お嬢様。」吉田はそう言うと、ゴミ箱にテープを放った。

「で依頼って何?」

「フム、実は下見に行って欲しいんですよ。」

「下見?」

「依頼が来て曰く付きの家を調査するよう言われたんですが、生憎手がいっぱいでして………」

「下見ねぇ………危険はないんでしょうね?」

「そりゃもうたくさん。ありまくりですよ。曰く付きの家ですから。」吉田はそう言ってパソコンの画面を指した。岩本が覗き込むと、新聞記事の画像がたくさんあった。

『一家惨殺………凄惨な現場』『解体作業直前……交通事故で2名死亡』『頭部切断……父親が猟奇殺人』『食い止められ無かったのか………家族全員無理心中』

「もう止めて!!」岩本が顔を背けた。吉田はパソコンを閉じた。

「すみませんね。僕が行くのはこういう場所なんですよ。岩本さんに下見に行ってもらうのは危険ですし、出来ればそんなことはしたくない。」

「じゃあ何であたしに頼むの?」

「岩本さんには僕よりも霊能力があるからです。」 「あたしに?」

「そう。僕は元々霊能力がないから僕と比較するのは間違いなんですが、岩本さんには僕よりも遥かに能力があり、悪霊や怨霊の気配には敏感なはずなんです。」

「んまあ…………確かに墓地とか心霊スポットで不穏な気配は感じるけど。」岩本がしぶしぶ答えた。

「でしょう?だから潜在能力なんですよ。岩本さんならどんな霊がいるか察知できるし、そういう奴らを退けられる。ですから安全です……………」

「?!ねえ今の『……………』の間にボソッとハズって言わなかった?!」

「言ってませんよwww」

「笑うなっ!」

「サーセンw」

「きちんと謝れっ!」

「いやいや、これまた失礼をいたしました。岩本さんには財力においても公力(警察や公務員を操る力)においても日頃から大変お世話になっている事を忘れていたわけではないにも関わらず、重要なお嬢様である岩本さんな大変な無礼を働きましたことをここにお詫び申し上げ奉り。」

「………ふざけてるでしょ?」

「さぁ、決まったからとっとと行かんか。」

「急に上から目線!!まだ行くなんて言ってないし。」

「……………………………(゜_゜」

「どういう会話をしてんの!何、(゜_゜って!」

「(゜_゜(゜_゜(゜_゜(゜_゜(゜_゜(゜_゜(゜_゜(゜_゜(゜_゜」

「……………怖いよ。分かったよ、やるよ。やりますよ。」

「(´∀`)」

「もうそれは止めなさい!」

「はいwwwでは岩本さん、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれを持っていって下さい。」吉田は「これ」と発言するたびに次々と物をだした。

「これは何?」

「ビデオカメラ、撮るためのDVD、塩、火、心拍計、ホイッスル、グルカナイフ、水、時計(測定用)、トランシーバーです。」

「こ、こんなに必要なの?第一、こんなのどこで手に入れたのよ?」岩本はグルカナイフとホイッスルを指差した。

「ホイッスルは100均、グルカナイフは数週間前に地元の連中から奪いました。」忘れてはならないことで吉田と小林の地元はスラムである。

「へえ……銃刀法違反じゃ……」

「違反ですよ。」吉田の口調はだからどうしたと言わんばかりだった。

「捕まったらどうすんの?」

「堂々として、鞄の中程にしまって下さい。職務質問されて、鞄を開けさせられた時は警官は下を主に見るので…。」

「なるほど……………」岩本は妙に感心しながらいった。

「岩本さん。岩本さんは家の1階部分を見て下さい。そうしたら僕に連絡して下さい。僕も合流したら2階に行きましょう。」

「2階がそんなに危険なの?」

「ヤバいですよ?家に関わって謎の死を遂げた人々の多くは2階で見つかってますから。」

「分かった………」

「行ってくれますか?最後に確認しますが、岩本さん、貴女には拒否する権利はありますよ?」

「大丈夫。あたしの意志だから。ただ死んだら、貴司を惨い死にかたに追い込むまでは怨み続けるから。」

「怖っ!!じゃあ……お気をつけて。」

「行ってくる。」岩本はそう言うと、部室をでていった。


ー曰く付きの家ー


岩本は玄関のドアを開ける前に吉田に電話した。コールを10秒ほどしたら吉田が出た。

「はい?」

「あたしだけど……………これから行くんだけど、電波大丈夫?」

「大丈夫ですが、随分賑やかですね?」

「えっ……………」

「足音や、子供の声が近くでしてません?」

「…………………」

「………まさか、もう現象が起こっているのか……」

「貴司、やっぱり一人で入るのやめていい?怖いよ。」

「岩本さん、それだけじゃなさそうだ……今すぐそこから離れて下さい。」

「え?」

「早く!駅に向かって帰ってきて下さい。僕も行きます。」

「分かったよ………」岩本は電話を切った。

「全く……行けと言ったり帰れと言ったり……」岩本はそう言って携帯から顔を上げた。


その時だった。今まで誰もいなかった筈の家の窓からこちらをじっと見つめる人がいた。人とはいえない代物かも知れない。それは、生気というものや感情といったものが何も感じられなかった。人形、といえばあってるかもしれないがこんなに人形らしくない人形は見たことがない。岩本は目を見開き、それを見ていた。

ふと人形のような子供が動いた。それにつられ、岩本も我に帰る。

「あわわわ……」岩本は唇が震えていたものの自力で敷地内から出た。

来る前にはたくさんいた帰宅途中のサラリーマンや学生達の姿は全く見えない。

岩本は違和感を感じながらも、駅に向かって走り出した。




10分は走った。ようやく、人混みに合流することができた。未だに心臓がドクドク言っていた。

「あっ、岩本さん!」吉田がはや歩きでやって来た。岩本は吉田の姿を見ると、ヘナヘナと座り込んでしまった。

「む?岩本さん?」

「………………貴司ぃ……怖かったよぅ……」

「ほぅ。すみませんでした。電話越しに殺気の声やら気配やら感じられる程でして………完全な想定外でした。」

「……………………」

「立ってください?」吉田はそう言うと無理矢理助け起こした。

「僕自身が下見に行くべきでした………岩本さんも感じました?」

「……分からない…でも『この家に入るな』って心が叫んでた。」岩本はげっそりと言った。

「やはり……これはとんでもない依頼を引き受けてしまった………………」

「拒否すれば?」

「したいですけどね。生憎と、前払いで払ってくれるくらい信頼されてるんで………それを犠牲にしますな?」

「命が危ないような仕事でしょ?やめたほうがいいって!!」

「それで依頼人が代わりに死ぬと?なるほど、それなら保身と共に依頼人が死んで証拠も隠滅………って考えですか?」吉田が冷たく言った。岩本はギョッとして首を振った。

「さてっ今日は帰りますか。」吉田が改札に向かって歩き出した。

「あのさ貴司………」

「はい?」

「………ごめん、何でもない。」岩本も改札に向かって歩き出した。吉田は?という表情になったが、何も言わずに背を向けた。

「家の敷地内に入る前に必ず自分の体に塩を吹きかけて下さい。その後、火で自分を1分以上温めて下さいね?」吉田がいつになく心配そうな声で言った。岩本はただただ頷くだけだった。













駅から南へ10キロ。荘厳な屋敷が1軒建っていた。岩本家の屋敷にも匹敵する大きさだが、雰囲気はどこか違った。岩本家の屋敷は手入れがどこまでも行き届き、走ることすら躊躇するほどなのだが、この屋敷は違った。草は伸び放題、窓ガラスは数枚割れ、家壁には蔦が巻き付いていて、もはや廃墟にしか見えない。灯りが点いているから、廃墟ではないことが分かるが、それだとしても、決して人は近寄らなかった。


「では前道は半討滅されたか。」声がある一室でした。

「はい」

「仕方のないやつだ。」 「………………」

「何のために宣戦したのか全く分からんな。アレには単独行動を赦しては駄目だ。お前は見張りの任務を怠ったことになるな。」

「申し訳ありません。」 「そんな言葉が聞きたいんじゃない。」男のものと思われる低い声が言った。声の出所は、こちらに背を向けた、背もたれの高い椅子の方から出ていた。その発言で今まで頭を下げていた女が顔を上げた。

前回、前道が力を振り絞って見せた女子生徒の幻影と瓜二つ……だった。その女子は長髪を後ろで束ね、長身から放たれるオーラが周囲を圧倒していた。整った顔立ちは間違いなく美少女というより美人の部類に入る。そんな彼女………上久保雅美その人は全くの無表情だった。

「私に何をご所望ですか?」

「最近の奴らは我らとあまり関わろうとしてこない。」声が言った。

「前道の件にしても、無理矢理戦いを挑んでいなければ、奴らは別の手法を選んだはずだ。」

「はい。そうでしょうね。」

「そして前道一人を討滅するために、何故に複数出てきたか。答えは単純明快だ。」

「………………」 「奴らは戦いを避けている。力を見る限りは明らかに衰えていると聞く。さらに言うなら、奴らはモチベーション自体が下がっている。」

「それなら害がないのでは?」

「そうだ。だから上久保、チャンスでもある。奴らは、お前が奴らに倒されたと錯覚しているうえに、戦意戦力共に落ちている。だから」声は上久保が口を開いて反論するのが分かっているかのように、だからを強調した。

「今度我らの邪魔立てがあれば容赦するな。殺しも場合によっては許可する。」

「…………分かりました」

「よし。前道を呼んでこい。」上久保は見られてもいないのに深々とお辞儀をした。

上久保が出ていき、部屋には椅子だけが残された。




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