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CHAPTER7ー4 火術師×霊術師

この章の投稿までに長い時間がかかってしまった事を深くお詫びします。学校の方が大変忙しくて執筆が遅れ、アイデアも潰れ………………と不安定な時期が続いてました。しかしながら、皆様のアクセスを頂き本当に励みとなりました。この場を借りてお礼をさせて頂きます。ありがとうございました。さて本編ですが、戦いもいよいよ、終結に近づきます。皆さん今度も遅くなるかも知れませんが、どうかよろしくお願いします。

「ぬおっ!」吉田が危うく大男の殴りをかわした。

「ふっ。」後藤が短剣で脚を斬ろうとした。だが。

「……………………?」後藤が顔をしかめた。

「また透かしましたか…………」

「本当に厄介な野郎だな…………」吉田は地面に唾を吐いた。

「どうします?」

「そうだなぁ。とりあえず逃げ………ん??」吉田の目の前に大男が素早く移動してきた。吉田は驚愕しながらも、なんとか大男の殴りをかわす。急いで間をとる。

「なんだコイツ?!」

「どうしました?」

「さっきまでそこにいたの…………なぁ?!」

吉田が大男の殴りを危うくかわした。素早い動きで向きを再び返る。吉田と後藤は急いで距離をとった。二人が顔を見合わせる。

「今の動き見えたか?」

「少しだけ……本当に間近にならないと見えないです。」後藤は顔をしかめた。

「じゃあ、どうやって…………またか!!」吉田が今度はキレのある動きでかわした。大男が突進してきた。吉田がかわしたので、大男は柱に突っ込むはず………………

だが。


柱を通り抜けた。

「便利な体だな。どうやって攻撃すりゃいいんだよ。」

「逃げますか。」

「…………だな。」吉田と後藤が逃げる。

「マテ…………」轟音とともに、大男が吉田達に突進してきた。後藤がかわし、吉田は棒をさしこんで転倒させた。

「イデ……………」大男は躓き、転倒した。その弾みで、屋上のドアに激突し、出入口が埃で見えなくなった。

「イデ………ヨケルナ………ムダ…………」大男は立ち上がりながら、吉田と後藤を睨んだ。吉田が目を細めた。

「逃がしてはくれないか。やはりな。」

「倒すしかないですね。」後藤が冷たく言う。吉田が火球を放った。

大男は腕でそれを振り払う。大男が突進してきた。

「同時攻撃!」吉田が火球と刃物で一ヶ所を集中攻撃する。

「ア?」大男の脚は具現化されていた。吉田が刃物に体重をかけていたので、大男の脚の肉を抉った。吉田は刃物を引き抜き、素早く離れた。

「両方やればどちらかは当たる。間違いなく、『中間』にはできないからな。」

「でも、体力削りますよ。持ちますかね……………?」後藤が不満げに言う。体力を削ると術の威力が弱まるのは当然である。大男の体力は分からないが、吉田達よりは間違いなくある。

「イデ………イデエ!!」大男は立ち上がろうとして、躓いた。脚が思った以上に負担らしい。

「おっと光明が見えたか?奴の脚は思ったより重症だな……スピードも落ちんだろ。」吉田は大男が壁に掴まりながら立ち上がるのを見ていた。

「足を切断しましょう。動きを封じてから逃げるなりなんなりしますか。」後藤が答えた。


ー校門―


「貴方は許さない………早く謝りなさい?許しを乞うなら今だよ?」三次が言った。

「ちょっ、三次さん?ダメですよ。何する気?」小橋が右腕を三次の前に出して制止する。

「どいて!」

「退かない!」小橋が右腕で三次の腕を掴んで制止する。前道が呆れたように言った。

「マジにやろうとしてんの?俺、抵抗するなら手加減しないよ?」

「うるさい!早く離して小橋君!」三次が暴れるので、小橋は全力で彼女を押さえつける必要があった。なおももがくので小橋はポケットから、ハンカチを取り出した。

「もがっ!ふぁひふんほほほはひふん!」ハンカチで口を押さえられた三次がもがく。(ちなみに、何すんのよ、小橋君。)前道は小橋の行動に訳がわからず、キョトンとしている。やがて、三次の体から力が抜け、バタリと倒れた。

「よし。」小橋はそう言うと、鋭く口笛を吹いた。

「うるさっ!!さっきから何してんだ、うおっ!!」前道に何かが飛びかかった。犬だ。

「ようし、ボブ、そいつを足止めしとけ。間違っても。」小橋は犬に向かって言う。

「食い殺すなよ。」小橋はニヤリと笑って、三次をおぶって校門から外に出た。

「待ちやがれ!」前道は追おうとするが、前に立ちふさがる生き物がいた。前道は奥歯をぐっと噛み締める。

体高1メートルはある、マスチフが唸り声を上げて、睨んでいた。


ー屋上ー


「うぇいっ!」吉田が刃物で背中を切りつけた。脚を斬ったことで、間違いなく具現化したり、透明化したりする力が衰えていた。

「だあっ!!」後藤が氷で手を斬った。これも命中。

「一体、何回やりゃ良いんだよ!」吉田が腹立たしげに吠えた。スピードは衰えていたが、退路は修理しなければ逃げられない。敵に背を向けて退路を修復するのは本末転倒である。吉田も後藤もそれなりに体力を消耗していた。術の威力が弱まっているので、肉弾戦に持ち込んでいるわけだが、それを悟られて、透明化して攻撃されると明らかに不利になる。

「ふんっ!」吉田が火球を放った。火球が大男に命中したが、燃えはしなかった。吉田が顔をしかめた。

「せっかく透明化してたのに残念だなぁ。弱ってきたぜ。」

「まずいですね…………吉田君。」

「何?」

「ちょっといいですか……………」後藤は吉田に耳打ちした。

「ええ………大丈夫かよ。逆の方がよくないか?」

「無理です。火術だからこそできるのです。」

「……………分かった。」吉田はそう言い、後藤に向かって頷くと、出入口に向かって走り出した。後藤は大男を見つめる。

「マテ…………ドコニイク…………」

「頼みましたよ、吉田君……いつまで持ち越えられるか……」


―校門―


「小橋か?」

「おおっ。海老澤君。」小橋は三次を背負ったまま、急停止した。

「誰?それは。」海老澤は小橋が背負っている女子を指さして聞いた。

「俺の友人。ちょうどいい。海老澤君。」小橋は丁寧に三次を地面に下ろした。

「目が覚めるまで側にいてやって。」

「は?」

「じゃ、頼んだ。」小橋はそう言うなり、走っていった。

「おまっ!!おいっ!!!」海老澤が叫ぶのに構わず、小橋は走り去った。

「はあ……なんなんだ、アイツ………って、三次さんじゃないか!どうしてこんな顔してるんだ…………?」普段は温厚で優しく、美少女という言葉がとても似合う三次が憎しみを浮かべた表情をしていた。海老澤は立ちすくんでいた。



「てめっ!このクソ犬!!」前道は腕から出血していた。術を使おうとするたび、マスチフに邪魔され、思うようにいかず、挙げ句の果てにナイフで戦っていた。マスチフは腹に切り傷があった。マスチフは表情を変えず戦っていたが、出血死するかもしれなかった。

「犬!覚悟しろ!!」前道がナイフを振りかざす。マスチフは素早く避けようとして、腹の苦痛に呻き、倒れた。

「貰ったああぁあああぁあぁあぁぁぁああぁあああぁあああぁあぁあぁぁぁああぁあ」前道が叫んで、ナイフを降り下ろす。

「うぐあっ!!」前道の呻き声が響いた。

「俺のボブに何をする。」低い声がして、小橋が現れた。小橋が丸太を抱えていた。丸太で突き飛ばされた前道は逆上した。

「貴様、何者だ。丸太を突っ込んできたのは貴様か?」

「ちがうな。丸太が突っ込んだんだ。」

「…………は?」前道が唸った。

「ふん、分からないか。」小橋はそう言うと、近くのメマツヨイグサに触れた。


途端、メマツヨイグサがみるみる長くなり、前道に襲いかかった。前道はギャッと叫んで、かわした。しかし植物はどんどん伸びてきた。

「このっ!!」前道はナイフで植物を切った。

「とまあ………」小橋が言って植物から手を離した。

「こんな感じよ。分かった?」

「……………てめえ、何者だ?!」

「2回目だな。まあ、教えてやろう。」小橋は丸太をドンと金棒のように突いた。

「大富豪同好会、序列5位、『緑術師』小橋だ。よくおぼえとけよ。」小橋が不敵な笑みを浮かべた。

「聞いたことないぜ………新入りか?」

「いや?発足時からいたが?」小橋はどうでもいいという口調だ。

「そうか…………屋上には植物がないから…………」前道は奥歯をぐっと噛み締めた。

「さあて」小橋が、再びメマツヨイグサに触れた。

「チッ。」前道は校門から出られず、再び校舎に戻っていった。


―屋上―


「ドコダ?」

「は!」後藤の氷の短剣が鋭く背中を抉った。

「イデ!!」大男は呻き、倒れた。後藤が着地し、素早く間を取る。

「ドコダ、ニゲルナ!!」大男が叫び、辺りを探りだした。後藤は急いで物陰に隠れた。

「早くしてくださいよ、吉田君………」不満をボソッともらしたその時、大男の腕が伸びてきた。後藤はそれを見るなり、切りつける。が。

「なにっ?」後藤が僅かに表情を変えた。

「しまった…幻術が使えるのか!!」後藤は顔をしかめた。

「ミツケタ……………」大男がじわじわとやってきた。後藤は陰から飛び出し、一目散に逃げた。

「ニガサナイ。」大男はそう言って、柵の一部を掴んだ。そして、一部を力づくで引き抜いた。

「なっ……!」後藤は焦って、新たな物陰に身を潜めた。その途端、ものすごい音をたてて、柵が吹っ飛んでいった。後藤は息を殺して潜伏する。

「ドコダ……マタイナクナッタ。」大男はキョロキョロしながら後藤を探す。後藤は警戒しながら、氷細工で、槍を錬成し始めた。槍投げの方式で、遠投して


攻撃するのである。しかし、時間がかかるので、距離を取らなければならなかった。後藤は残念なことに幻覚を見破る事が出来ないのである。物陰に隠れていて、正しい判断ができないと自滅することになりかねない。危険な賭けだった。

「寒い空気が幸いだな。それに雨上がりで水溜まりもある。」後藤は水溜まりに触れ、一瞬で凍らせた。そこから何か呟き、細長いものを作り出した。透明に光る槍の形が出来上がった。後藤はそれを握りしめ、力を込め始めた。外見は変わっていなかったが、どうやら硬化しているようだが、なかなかスピードが遅かった。大男が歩き回る気配が感じられた。

後藤は息を殺して錬成を続ける。その時、遠くでパンという音が鳴った。

「…………………………………!」後藤ははやる気持ちを押さえつけ、錬成を続けた。

「ミツケタ……………!!」大男が叫ぶのが聞こえ、続いてゴーという音が聞こえ、大男の苦痛の叫びがこだました。

「ごっつぁん早く!!!」

吉田が叫ぶ声が聞こえた。

後藤は30秒ほどしてから、物陰から飛び出した。

「吉田君!」

「そこか。急げ!」吉田が叫んだ。見事に修復された出入口の下で手招きしている。

「ニガスカ………!!」大男がまだ追ってくるので、後藤は槍を遠投した。

「ガアアッ!!」目に命中!!大男はフラフラしながらのたうち回った。やがて………………………

バギン!!!という耳をつんざく音と共に、大男は屋上の鉄柵を破り、10メートル以上の高さから落下し、数秒後、ドシンという嫌な音がした。吉田と後藤は冷たい目でそれを見届け急いで屋上を離れた。



ー校門ー


小橋が繰り出す植物を利用した攻撃に前道は翻弄されていた。

「グオッ!」

「ほぅ、なかなか良い反射神経だな?」小橋は近くの枝に触れる。枝が鋭く伸び、前道を襲う。

(霊術を使えない……………!)前道がよけるのに精一杯で霊術を使えないのは見越していた。というか、氷術や火術には緑術は相性が悪いだけで、霊術のような術を発動するのに時間がかかるタイプの術には最高に相性が良かった。

「テメッ!!」前道は怒りに歯軋りし、石を拾って投げた。小橋は避けもせず、植物のつるで弾いた。

「さぁて、仕上げと行こうか?」小橋は植物に寝そべる。途端、植物の蔓が前道に10本も20本も向かう。前道は悲鳴を上げて、逃げ出したが、捕まり、木に吊るされた。



ー敷地外ー

「あっ。」三次が目を覚ました。

「ん?」携帯を弄っていた海老澤がこちらに顔を向けた。

「起きました?」海老澤は携帯をパタンと閉じながら言った。

「………………………………………あっ!」三次は敷かれていたビニールシートの上から跳ね起きた。

「小橋君に殴られた~~~~!」

「は?小橋に?」

「あれ?海老澤君?」

「……………うん、そう。」

「舞の彼氏君だね。どうしてここに?」

「後に話します。」

「ふーん。」三次はそれだけ言うと校門の方に向かって歩き出した。

「ちょ、どこに行くんだよ?」

「学校!やらなきゃならない事があるの!」三次は走り始めた。海老澤も追いかける。


その時、校門で激しい声がした。

「ウオーッッッッ!!」小橋の声だ。


「小橋君?!」三次が叫びながら、校門から入った。海老澤も続く。


小橋が腕から出血した状態で、木にもたれていた。

「全く、手間かけさせるんじゃないよ。」聞き慣れない声がした。海老澤、三次、小橋が見た方向に日本刀を持ったすらりと背の高い女子が立っていた。

女子は前道を縛っていた蔓を斬った。

「全く、ホントに世話がやけるなぁ、アンタ」

「フン。」前道は礼も言わず、地面に着地した。

「さて、坊や?随分この子を可愛がってくれたね?礼をしなくちゃなるまいね?」女子がそういうと小橋に向かって突進する。

「ちっ」小橋は舌打ちしながら植物に触れた。

「無駄、無駄ァ!」女子は向かい来る植物を全て凪ぎ払い、小橋に向かって突進し続ける。小橋は逃げを決め、攻撃をかわした。 「逃げられるかね?」女子は直ぐ様方向を変え、小橋を襲う。小橋は腕を庇いながらも逃げる。だが。

「ぬおっ?!」小橋を前道が後ろから押さえつけた。

「ナイス、前道。」女子は小橋の前に立ち、腕に刀を這わせる。

「便利な力ね。腕を切りはしないけど、筋を斬らせてもらうわ。」

「止めろ!」小橋が暴れるが、前道の力に押し潰された。

「じゃ、うちひしがれなさい。」女子が日本刀を小橋の腕に突き刺した。

「ヌアッ!」小橋が悲鳴をあげる。

ゴオオオオ!!!!!!!!!と大音量がしたかと思うと、女子を業火が襲っていた。

「奴ね。」女子は驚くでもなく、刀で業火を吸収した。

「僕の仲間に何をするつもりだ?」校舎から吉田と後藤が現れた。

「ちっ……………………………」前道が二人を見て舌打ちした。

「残念でした、あんな大男じゃ足りないな。で」吉田は海老澤や三次が驚愕する前にも関わらず、追求した。

「『剣術師』の上久保が何の用だ?」

「こいつの帰りが遅いんでね。刺青に埋め込んである虫を辿ったのよ。」

「ふっ、邪魔が入ったな。帰ってくんないかな?そいつが僕の友人に無礼な真似をしたんだ。おまけにまだ狙いがあるとか?早めに討滅したいんだが?」

「アンタたちこそ、こいつの邪魔したんじゃないの?あんたらを粛清したいのはこっちなんだが?」

「ほぅ?愚かな。我々にケンカを売るか?」

「いかにも。」そう言うと、上久保は剣を構えた。

「ふっ、いい度胸だ。」吉田が火棒を取り出した。 「ごっつぁん、そっちは任した。」

「分かりました。」後藤が答え、小橋に向かって頷き、自分は前道に向かって歩き出した。小橋は海老澤と三次に向かって走り出した。

「二人とも、巻き添えをくらいたくないなら急いで脱出だ。」

「おぅ………」

「……………」目の前の光景を興味津々で見つめる二人を無理矢理歩かせる。上久保が何か叫びながら突進してきた。

「何をするつもりだ?え?」吉田がにやつきながら言った。

「一度本気で殺って見たかった…………」

「あんたこそいい度胸だよ。気に入った。アンタなら殺し甲斐もありそうだ。」上久保が日本刀を吉田に向けた。二人の目から火花が散るのを海老澤達は見届け、急いで学校を離れた。

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