表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/65

CHAPTER7ー2 火術師×霊術師

GWですが、何の予定もない川田です。

こんにちは、皆さん。毎日皆さんからアクセスして頂き、本当に力をもらっています。ありがとうございます。

先日、この小説を同じクラスの女子が読んだらしく、噂になってしまっていました。幸い、アクセス履歴が最後のアクセスだけをカウントするらしく、このサイトを見失ってしまったようで、あまり勘づかれるようなことはないです。

この小説の登場人物は全部が全部ではありませんが、実在する人物の名前を微妙に変えて構成しています。地名が一切登場しないのも個人の特定を避けるためです。

肖像権………はあ。

著作権←これ、たまに、ウザく感じません?え

?お前の小説パクっても良いのか?

いや、こんな小説を誰がパクると言うのか?でも考えて見ればそういう事ですね。反省、反省。どうぞ、今回も大富豪同好会の奇跡をよろしくお願いします。

吉田と



岩本は大職員室がある校舎と教室棟とを繋げる通路を走っていた。春日の叫びが聞こえたのだ。

「なんかあったのかな?!」

「そうでなければ叫ぶ意味がありません。」吉田が冷静に答える。渡り廊下を完全に通過した時、春日が左側の末端から走ってきた。必死の形相だった。

「吉田っ!!助けてくれ!!」春日がこちらに気付いて叫んだ。吉田は春日を追っているものを見てゾッとした。

「ぎゃあああああああ!!!!」岩本が叫ぶ。

春日の後ろからほふく前進で髪の長い白い服を着た女がハンカチで縛っている脚とともにやってくる。ただし、女は両足とも膝から下がなく、片方は元々らしく、何事もないが、右足は大量の出血だった。ハンカチで傷口を縛っているらしい。春日には見えず、吉田や岩本には見える。吉田はもう、そういう霊能力があろうがなかろうが、否応なしに依頼で経験しているので、見えて当然だが、岩本に見えるということは、岩本自身に霊能力があるのだろう。


呑気に解説してる場合じゃなかった。


春日が吉田の所までやってきた。真っ正面から吉田と女が対峙する。

「こいつ、テケテケだ!」吉田が興奮して叫んだ。すると、女がピタリと止まった。春日と岩本は恐る恐る様子を窺う。

「テケテケって何だよ。」

「都市伝説を知らないのか?」吉田が前を見たまま言う。春日が頷いた。

「口裂け女とか。テケテケは見た通り足がないのだ。」

「何が見えてるんだ?」

「そうか、見えないのか。」吉田はそう言ってテケテケに近づいた。テケテケは吉田を恐ろしい目付きで睨んだ。吉田は怯む様子を微塵も見せず、テケテケの脚の方に回り、手から火を出した。

「えっ?!」春日が驚いた声を出した。

「てい。」吉田が掛け声とともに火を脚に落とした。


燃え上がった。


テケテケは怒りと痛みに叫び、吉田に向き直り、襲いかかろうとした。吉田はその途端、翳していた右手を振り上げた。突然、火が収まり、テケテケの声も止んだ。出血が止まっている。

「これで大丈夫か?」吉田がテケテケに向かって発言する。テケテケは物凄く微妙に頷いた。

「吉田が幽霊と話してる………」春日が壁にもたれながら言った。

「オイオイ、こいつは幽霊ではないぜ。召喚された霊体だな。まだ見えないか?」吉田が春日に聞くと、春日は頷く。

「さて、と。」吉田はしゃがみこんでテケテケに言った。春日と岩本は固まったままだ。

「君をここに読んだのは誰?」

「………………」

「教えないなら、脚をまた斬ろうか。」

「おい、吉田…………」春日があきれた。二言目には脅迫である。吉田はテケテケの目の前に火を突きつけた。

「コ…………イ………………」テケテケはそう言うと、身を翻した。

「なるほど。」吉田は岩本と春日を振り返った。

「二人は今すぐ学校を出た方がいい。職員玄関から出れば、早いだろう。」吉田はそう言ってテケテケについて歩き出した。

「おい、お前はどうするんだよ?」春日が聞くと、吉田が薄く笑った。

「君たちには関係ないことだ。これ以上嫌な目に会いたくなかったら、撤退を勧告する。」

「………………」春日は動かない。が、岩本は全てを察した様子で春日の腕を掴んだ。

「行こう。これ以上は危険よ。」岩本が言った。春日は躊躇いながらも頷き、吉田に背を向けた。二人が立ち去ったもう一度振り返った時には、吉田の姿は見えなくなっていた。

***********


海老澤は息を切らして、G組教室に戻る途中であった。

「ハア……ハア……」普段は冷静な彼でも非日常を目の当たりにしたのだ。息が切れているだけ、というのもなかなか立派なものである。

「………先生………いや、警察に連絡か?」海老澤の口から言葉がついて出てきた。携帯を探る右手が震え、無駄にジャージに皺を作る。海老澤がやっと、G組教室にたどり着くと、もぬけの殻……………ではなかった。



白衣の男がいた。右手には刃渡り20センチはあろうかという刃物を持ち、左手には……………



切断された、人間の脚を持っていた。


「ハ…………ハ…ハハ………ハハハハハ……………ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ………………」また笑い出した。そして、教室の中央から海老澤めがけて走り出した。

「………………」海老澤は逃げない。

恐怖で麻痺した訳でもないし、勇敢に立ち向かうつもりでもなかった。海老澤の目はただ一点に注がれていた。


足が透けている。その一点に。

「うりやああああああああああ!!!」刃物を振りかざす男の鼻先でドアを閉めた。


だが。


刃物ごと体が突き抜けて、海老澤の目の前に現れた。海老澤はそれを見て、冷静に判断した。

白衣の男が海老澤に至近距離から攻撃をしかける。


海老澤は鞄で身を守る体勢に入る。刃物が鞄に突き刺さり……………………………………真っ二つに斬った………………


かに見えたが、刃物は鞄を通過しただけだった。そのまま床をすり抜ける。

白衣の男が笑うのを止め、海老澤を睨み付けた。海老澤は身を翻し、全速力で逃げた。白衣の男が慌てて追いかけた。


***********

吉田はテケテケの後について歩き続けていた。

テケテケはほふく前進で進み続け、理解室に達すると止まり、吉田の方を向いて睨んだ。吉田も止まり、理科室を凝視する。

「ここがどうかしたか?」吉田は理科室を睨み付けたまま言った。

「コ…………ロ…………サ…………レ…………タ…………」テケテケの声が妙に高くなった。

「殺された………」吉田が理科室に近づきながら呟く。テケテケは黙って吉田を見ている。吉田はテケテケを無視して理科室に入り、扉を閉めた。




理科室はカーテンが締め切った状態で、電気を点けようとスイッチをおしても点かなかった。

吉田はつかつかと窓際に歩み寄り、カーテンをガバッと開けた。相変わらず暗いままだ。吉田は顔をしかめ、理科室を出た。

次に理科準備室に向かった。テケテケも吉田の後をついてくる。

吉田は理科準備室のドアノブを捻る。


鍵がかかっていた。


吉田はフンと鼻を鳴らすと、癒えてはいる右手を取手から離し、ポケットをまさぐる。

なんでもないピンセットを取り出すと、それをねじ込んだ。1分かそこらで鍵が開く。吉田はずかずかと踏みいった。中には誰もいない。しかし、吉田は入った瞬間、顔をしかめた。理科準備室の中央には大きな机、というよりもテーブルと言った方がふさわしいくらいの大きさの机があるのだが、その上にハエが数匹飛び回っていた。

吉田が近づかずに、背伸びだけで、机の上を見た。


血にまみれていた。



テケテケが後から入ってきて、恨めしそうに机を見つめた。その時、背後から何かが走ってくる音がした。急いで部屋を出ると、階が違うらしく、階下から聞こえた。


吉田がテケテケに頷き、無言で不動の命を下すと、階段を降りた。


と。


「ウオッ!!!!」

「ヌアァ!!!!」


海老澤が全速力で走ってきた。そして、吉田と正面衝突しそうになり…………危ういところで両者が左右に別れて避けたので、衝突は回避された。

「何やってんだよ?」吉田が立ち上がりながら言った。海老澤は急いで立ち上がり、20メートルほど先の廊下の交差する場所を指差した。

ダダダダダタ!!と音がして、白衣を着た男が現れた。

「ほう。」吉田が息をつき、海老澤は睨みを効かせる。白衣を着た男は猛進してきた。吉田と海老澤は2階にいるため、階段の踊り場で迷った。

「どっちに行く!」

「上だ!!」吉田が答え、3階と2階の中盤の折り返しに来たときに、白衣を着た男が追い付いた。吉田と海老澤はそのまま階段をかけ上がった。

「うわあああああっっ!!!」海老澤が叫んだ。テケテケがいるのを忘れていた。吉田はそのまま海老澤を引っ張りテケテケの後に回り込む。

白衣を着た男が現れた。

「こいつ、何?!」海老澤がテケテケを指差して吠えた。

「味方の幽霊………かな。」吉田が言った。海老澤は唖然として吉田を見つめる。白衣を着た男は階段を上がった所で立ち止まり、テケテケ、吉田、海老澤と対峙する。テケテケが不意に唸り声を上げた。

「カ…………エセーーーーー」

吉田がほお、と感心する。白衣の男が吉田を睨む。

「あいつに脚を切断されたのか。白衣の血は返り血か。」

「脚を切断?!」海老澤がテケテケの脚を見てさらに青くなった。

「カエセ!!!」かなりの大声に吉田と海老澤が黙る。憤怒を表情に出し、今にも殺意で相手を焼き殺しそうだ。白衣の男は白衣を脱ぎ捨てた。


身体中に刺青だらけで、生傷やいわゆる根性焼きの痕などがあった。吉田はそのうちの一つを注意深く見た。

「G」のアルファベットが漢字の「森」「品」のように3つ並んだ焼き痕だ。吉田の表情が変わる。

「お前…………」親の仇敵を見るような目であり、テケテケと同じように声に怒りがこもっていた。

「気付いたのか、火術師?」男が言った。

「その呼び名を知ってるか。となれば、お前の雇い主はどこだ?」吉田が冷たく言った。海老澤は押し黙って聞いていた。男が笑う。

「俺は人間に戻れた。この通り実体があり。声を出せれば聞くことも出来る。だから依頼主を裏切るような事はしない。」

「……………嘘だ。」海老澤が言った。

「お前は俺を斬ろうとした時、俺が閉めた扉をすり抜けた。さらには俺を斬った筈の刀は俺を通り抜けた。お前自身どころか、お前の所持品すら実体がないだろう。」海老澤が言うと吉田が唖然とした顔になる。

「確かか?」

「ああ。」海老澤が当然と言わんばかりに頷く。吉田が男を見ながら言った。

「さっき足音がしてたよな?」

「…………え?」

「こいつは………少なくとも目の前にいる『こいつ』は………霊じゃない。影だってできてる。」吉田が指さした方を見ると、確かに真っ暗な中で、非常口を示す緑色の明かりでぼんやりと影ができていた。


男が急に走り出した。



吉田がとっさに火球を投げた。男は当たる。男は何かに当たった感覚はあるらしく、立ち止まりはしたが、燃えなかった。海老澤が蹴りを入れる。男は海老澤の脚を受け止め、逆に放り出した。

「ぬあっ?!」海老澤が叫び、吉田にぶつかりなぎたおす。男が猛進する。と。


「ウアアアアアアアアアアアアアアア」奇声を発してテケテケが男の脚に絡み付いた。男はテケテケを蹴飛ばし、吉田達に殴りかかる。吉田がテケテケの奇襲の間に立ち上がり、それを掌で受け止める。腹に膝げりを入れ、体を曲げた所で頭を殴る。流れるような動作で男が地面に倒れた。

男がなおも立ち上がろうとするので、海老澤が顔面を殴った。

男は暫しの間諦めなかった。吉田と海老澤は情け容赦なく蹴りと殴りを入れ返り血を少々浴びながらも、脚の骨を折ることで動けなくした。

「さてさて。」吉田は男の手の傷口の上に靴でふん上る。

「ぐ……………」男が苦痛に呻く。吉田が男の髪の毛を引っ張って頭を持ち上げさせる。

「さて、依頼主は誰かな?」吉田は何の前触れもなく聞いた。

「…………………グウウ!!」男がさらに大きな声を出した。吉田は傷口の上で靴の踵を回転させていた。

「聞き方が悪かったかな?それとも…………」吉田が言うと、男は信じられない行動に出た。口から何かが出たかと思うと、急に体が重くなった。髪の毛で引っ張りあげていた頭がだらりと下がる。吉田が手を離すとバタリと倒れ、動かなくなった。

「自死した。」吉田が言うと、海老澤がギョッとしたように下がった。

「死んだ?」

「舌を咬んだんだな。」

すると、死体が粉末に変化しだした。その勢いの早いこと早いこと。あっという間に男の亡骸は粉末になり…………

「おお。」吉田が持ち上げたのは、後に遺された人間の脚だった。

「テケテケの唯一、欠けた遺部だったんだな。これで成仏すりゃいいんだが。」吉田はテケテケの方を見た。テケテケは蹴られて、壁まで吹っ飛んで伸びていた。

吉田は海老澤と顔を見合わせるとツカツカと歩み寄り、テケテケの脚の部分に遺部を無理矢理接合させた。グチャと嫌な音がして接合は簡単にできた。


テケテケがガバッと起きた。そのとたん、真っ暗闇だった校舎に電気が点り始めた。テケテケはニタリと笑って、そのまま消えた。ただし、遺言を残して。

「レイジュツシハ、オクジョウニイルハズダ…………」


時計を見ると6時を過ぎていた。

「なぁ、今日起きた事は、現実なのかな?」

「リアルだね。」

「あの白衣の男は何だったんだ?」

「僕はまた殺人を犯したわけじゃない。奴はとんでもない能力の持ち主だった。」

「やっぱり幽霊なのか?」

「そうさ。しかも幻肢を自由に使える幽霊だったんだ。自由に人と接触したり、半透明になったり………て具合にな。」

下駄箱に向かう途中、吉田は何故か帰ろうとせずに、トイレに立ち寄っていた。

「じゃあ、あの時、何で俺は斬り殺されなかったんだ?やっぱり触れてるものは半透明にしかならないのか?」

「海老澤よ、お前あん時ドアを締めたらすり抜けて来たって言ったよな?」

「ああ。」

「それの僥倖だな。扉をすり抜けて一気にお前を殺そうとしたんだな。ところが肝心な体を具現化されるのを忘れてしまった。だから、刃物は海老澤をかすっただけ。そもそも、触れてるものは半透明になるなら白衣やズボンを履ける訳ないだろ。もっと言うなら、すり抜けると分かってて刃物を突き刺すか?お前は空気を相手にするとき銃で撃ったり、刃物で斬りつけたりするか?しないだろ。最後にお前はなんで校舎にいた?」

吉田に聞かれ海老澤は一部始終を話した。

「血のあとね。もう出しちまった体液は自分では管理できなかったんだろ。テケテケ??ああ、あれは霊………僕の敵が、送り込んできた刺客さ。ところが、幸運なことに、M高に住み着く霊に脚を切断されてしまった。テケテケは脚を怪我して見えないだけでそもそもはあるんだよ。だから斬られた事でこんな場所に派遣した主人を怨んだんだろうな。最終的には万事解決。後遺症は、春日や岩本さん、海老澤を巻き込んだことだな。」

海老澤も岩本とは1年の時、一緒のクラスだったし、春日とは2年で一緒になった。海老澤はトイレから出た吉田を慌てて追う。何故か吉田は階段を上がった。

「何処に行くんだよ。」

「屋上。」吉田が答え、ついて来ようとする海老澤に言った。

「昇降口はもう、宿直の先生が閉めてしまっただろう。だから非常口から出な。着いて来るなよ。これ以上お節介を焼いたら、半週間は意識を飛ばしてやるからな。」

「じゃあ一つだけ聞かせろ。」海老澤は2年連続同クラスの付き合いで一度も聞いた事のないセリフを吐く。

「お前は何者なんだ?」

吉田は不意を突かれたように、眉を潜め、鼻を鳴らして答える。

「海老澤と同じ人間だ。変わった人だなとはよく言われるがな。」吉田はそう言って階段を上がり姿を消した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ