第16章 真相と決着
本部
「死亡者は石田、坂下、遠藤、服部の4人になりました。仲間割れで、山口が死亡。吉田も死亡しました。」
「ふん、わざわざ奴等がいた場所を禁止エリアにした甲斐があった。1日でおわりそうだな。」井坂が言う。
「仲間割れをM高生達が起こしていますからね。意外と言えば意外ですね。」嘉門が楽しそうに言った。
エリアDー6
萩谷が禁止エリア近くを歩いていたのは正午から10分ほど経過した時だった。
突如人の声がし、急いで茂みに隠れた。
パラララララララララララララ。
そいつらはマシンガンを乱射し茂みから飛び出して来ないか確かめている。
萩谷は急いで木に登った。十のマガジンを入れ換える。
やがて、保坂と馬渕がやってきた。
パラララララララララララララ。足元の茂みにマシンガンで弾が放たれる。
特に何の反応もせず、二人は去っていく。
二人が十分に歩き去ってから、萩谷は地面に降りた。
そして、2発撃つ。
1発は馬渕の脳天を直撃。頭の中身がどっと出る。あっさり決着がついたかに見えたが、保坂には当たっていなかった。
「てめっ!!!」
保坂がマシンガンを乱射しながら、萩谷に突進する。
「ぐっ!」萩谷の背中に2発命中し、鮮血が走る。
萩谷は必死に茂みに入り逃げる。マシンガン相手では歩が悪い。距離を詰められればおわりである。
「待てや、コラァ!!!」保坂が全力で追ってくる。萩谷は暫く走り、茂みにまた隠れた。
だが、しかし。
「ここまでで途切れてる。さあ!出てこい!!!」マシンガンを乱射する。木の上にも。
やがてマシンガンの音が途切れる。
保坂はマガジンを取り替え、ニヤニヤしながら血の後を仰視した。
萩谷は茂みから飛び出した。真ん前の獲物を見つけ、保坂は狂喜の笑みを浮かべ、1歩踏み出した。
その刹那。
ドゴン!!!!!!
小さな爆発音と共に、保坂の首と胴体は永遠の別れを告げた。
エリアHー5にて。
萩谷が、それを確認した。
「ふ」萩谷はそれだけ言うと、何かを投げ捨てて去っていった。
それは
萩谷の首についているはずの、首輪の残骸だった。
エリアEー6
横山と木田が民家に入り、水を飲み駄弁っていた。
「あの偽善者めが!!!」そう言うと、横山は民家の置物を手にとり、壁に叩きつけて破壊した。
木田は何も言わず、こっくり、こっくりし出した。
横山が空の水のペットボトルを放り投げた。
まさにその刹那。
パララララララララララララ………………マシンガンの音がした。
二人は飛び起き、床に伏せた。そして、相手の弾切れを待ち、窓ごと外に向かって乱射する。
呻き声がした。
そして、這っていくような衣擦れの音がした。
二人は顔を見合せ、慎重に外に出た。誰もいないが、血溜まりがあった。
血が森に向かって延びている。
二人は急ぎ足で追う。
やがて、足を引きずり、肩を庇いながらあるく男子を見つけた。
「とまれ!無駄なこた止めろ。この距離なら外さねえ!!」横山が言う。
すると突如、男子は走り出した。
「待て、コラァ!!!」横山と木田が追う。
距離はあっという間に縮まった。
だが。
ズボッ!!!!バシャーン!!!
派手な音が響いた。
男子が振り向いて戻ってきた。
横山と木田が干し草で隠されていた井戸の真上を通過し中に転落していた。
もう這い上がれる高さではない。
男子は、何の音もしない井戸の底にマシンガンを乱射した。
止めがさされた。
その男子は、首輪を井戸に投げ入れた。
井戸の上に干し草を置いたのも、
吉田だった。
エリアFー3
小林が拘束された3人の前に現れた。
その途端、大原は溜め息をついた。そして、何故か小林に向かって頷いた。
それからおもむろに3人に近づく。
「な、何を…………」金子がいいかけたが、大原は首をふり、ポケットから折り畳んだ紙を出して開き見せた。
『俺はお前たちの味方だ。何があっても声を出すな。今から首輪を小林と共に外す。』
3人は唖然としていたが、次の瞬間、大原は黒澤の首輪に奇妙な針を入れ、30秒程度で、外した。
小林も加わり、海老澤、金子も外した。
「もう話していいぜ。」首輪から20メートルはゆうに離れた所で大原は言った。
3人はフッーーーーと長い溜め息をついた。
「何で助けてくれるんだ?」海老澤が言った。
「何でって………あ、そうか。悪い、悪い。仮面外してないな。」大原はそう言うと、ルパン三世のように、顔を剥ぎ取った。
「えええーーーーーーーー!!!」黒澤が叫んだ。
ボクシング部の鈴木だった。
「何で話しちゃ駄目なの?」金子が言う。
「あの首輪には盗聴器が付いてるんだよ。これから島を泳いで脱出するぞ。嘉門達は俺らが死んだと思ってる。『大原』が生き残ってな。」
「俺の首輪には盗聴器が付いてないのさ。」鈴木が言う。
「他の皆は?」黒澤が不安そうに聞いた。
「大丈夫。貴司と萩谷はきっちり仕事をするさ。」
エリアEー4
後藤が見張っているだけで、起きているものはいない。蛯原と岩本は泣きつかれたのか、すやすやと眠っていた。
カラン。
後藤の目の前に空き缶が飛んできた。前もっての合図なので、後藤は慌てず騒がず、グシャリと潰した。
すると茂みから吉田が出てきた。
二人は頷くだけで、すべてを伝えあい、吉田は寝ている二人の首輪を外し、後藤のも外し地中に埋めた。
後藤は二人を起こした。
本部
「全員死亡した。生き残ったのは相討ちや裏切りのために大原だけですね。」兵士が言った。
「意外は意外だな。まあ、厄介払いもこれですんだ。大原は?」
「まもなくこちらに来ます。」
井坂の問いに兵士が言った。嘉門は黙ったままだったが、突如叫んだ。
「何か匂わないか?」
嘉門の問いに答えられたものはいなかった。
鈴木が用意していた爆弾により、校舎もろとも、井坂達は灰塵に帰した。
呆気ない終わりだった。
山口はあの時、萩谷が空砲を放つのを見た。
『絶対に声を出さないように。』萩谷が山口に紙を見せて首輪を外した。
奇跡な事に、M高に死者は誰も出なかった。
そうして彼らは警察に保護され、無事回復し、日常生活に戻った。