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第14章 開戦2

エリアFー6


クラクラする頭を振りながら吉田は立ち上がった。急いで近くの茂みに隠れる。

「いたか?」服部の声だ。

「いや、いない。」坂下の声もする。二人は慎重だった。吉田が隠れた場所から反撃することを考えてだろうが、吉田のショットガンは爆発で見失ってしまった。

「そこか!!」坂下が叫んでサブマシンガンを乱射する。吉田は肝を冷やしたが、坂下は明後日の方向に撃っている。

「いないな。」マガジンを取り替える坂下。

服部は油断なく周りを見渡す。こうなれば、撃たれる前にマシンガンを破壊するよりない。マシンガンを蹴り上げて何処かに飛ばすのも無くはないが、2対1では、拾われてアウトだ。

素手ならまだ………

そう吉田が考えていたら、坂下が不意に前に出た。坂下はマシンガンをある茂みに向けた。

吉田は坂下のその行動の意味を悟った。 坂下は周りにまんべんなく撃ち出した。

吉田が隠れている茂みにも例外なく撃ち込まれ、吉田に弾が情け容赦なく襲った。


既に先日服部に教室で撃ち抜かれた左肩を命中。右腕に命中。背中に2~3発喰らった。脚はセーフ。歯を食いしばって、叫びを堪える。叫べば、居場所を悟られる。

坂下と服部は辺りを見回したが、もっと先に逃げたと思ったらしく、吉田の前を通りすぎて行った。吉田に闘う気力はなかった。


乱射の瞬間、吉田は頭を抱えて伏せたが、坂下は低い位置をしっかり狙っていた。脚を撃つつもりだった事がよく分かる。おかげであっさり傷口を開いた、左肩からはどっぷりと血に浸かっている。左手になかなか力が入らない。吉田は血を吐き、フラフラと茂みから顔を出す。坂下と服部の後ろ姿が見えた。

ショットガンがあったとしても、右腕に負傷を負った吉田に狙いを定めて撃つことは至難の技だった。手は震え、吐き気と目眩に襲われて肉弾戦をしたところでまず勝てない。


吐血したのち、吉田は左肩を庇いながら、家に急いで戻った。血の跡を残さないよう、血が垂れたら素早く右手ですくった。

エリアHー5


パシンっっ!!


「てめっ!!!」萩谷が茂みから飛び出し、石田のマシンガンを持つ左手を蹴りあげた。

マシンガンに萩谷が飛び乗り、破壊する。マシンガンは弾切れで、替えのマガジンを持たない萩谷にとっては、ただの時限爆弾にも似ている。

萩谷は石田と一騎討ちを選び、民家から飛び出した。案の定、石田のみが萩谷を追ってきた。 石田はナイフを取り出し、萩谷を襲う。萩谷はまたしても右腕を蹴りあげ、ナイフを落とさせ、拾い上げる。

素手なら萩谷が圧倒的に上だ。

ここで、萩谷は容赦しない。石田めがけて脱兎のごときスピードで突っ込む。石田は何とか避け、手榴弾を取り出す。

手榴弾を投げる寸前、萩谷がナイフを石田めがけて投げた。


ドコッ。


鈍い音がした。


萩谷の強靭な肩から飛び出たナイフは石田の額を直撃。


血と血以外の何かが飛び散り、石田は倒れた。


急いで手榴弾を没収。


そこで、萩谷は石田に追われた際、マシンガンで数発撃たれた背中を再び庇う。顔をしかめながら、萩谷は石田から5メートルほど離れ、石田に向かって手榴弾を投げる。手榴弾が爆発し、石田の体は破裂した。血が雨のように降った。萩谷は小林と元へと急いでむかった。

馬淵と保坂が小林を探していた。時より、マシンガンを茂みに放ち、反応を伺う。

「一体どこに消えた?あの傷では遠くにはいけないだろ。」

「ああ、途中までは血だまりも血の跡もあったんだけどな。」保坂が答える。


小林は二人に真っ向勝負を選んだ。萩谷から借りた銃を撃つ。マシンガンは何十発も小林に命中。

保坂は左腕を、馬淵は右肘と胸のど真ん中を撃たれた。

小林が防弾チョッキをきていた事に気付いたのは戦闘開始から20秒程だった。已む無く、二人は脚を撃った。右足の股に命中し、勝負あったかに見えた。しかし、小林は驚異的な速さで近くの茂みに飛び込み、姿を消した。

「木の上とか、大岩の陰にいるかもしれん。気をつけろよ。」

保坂が言った。

二人はさらに奥深い茂みに入っていった。

本部


「遠藤、石田の両名が死にました。」兵の一人がモニタを見ながら言った。

「情けない。と言うより、吉田と萩谷がすごいのか。」 そう言う嘉門は余裕の笑みだ。

「結局、M高校に懸けたんでしたな。」兵の一人が言う。

「ふふん、ふふん。そうだよ。」嘉門は舌舐めずりしながら言った。

「しかし、なぜウチの生徒達を生け捕りに?」

井坂が表情を変えずに言う。

「井坂先生ならそんなこと言わずとも知っていると思いましたが。」嘉門は少し驚いたようだ。

「まあ、検討がつかないわけではない。」井坂が言う。

「やはり。M高校の生徒は強い復讐心など持っておりません。萩谷や吉田、小林は身内に対する攻撃は殆んどスルーします。もし、一人でも殺してしまっては戦意を無くし、抵抗も弱まってしまう。それでは目標が達成できない。」

嘉門が言う。井坂はフンと鼻を鳴らす。 「どういう事ですか?目標とは。」先程の兵が割り込んだ。

「言ってなかったけ。このゲームの目標は服部達をM高校生達に殺させて、勝った風に見せて、M高校生達も消すことさ。」嘉門が言う。兵が驚愕する。

「B高校生達を始末するため?何故そんなことを。」

「B高校生?なんの話だ。B高校はあるが、奴等は真の学生じゃない。」井坂が言う。何処か残忍な笑いを浮かべている。

「話が分かりません。では奴等は何なのです。」

「ふん。H少年院で非行を繰り返す奴等でな。少年院の中で、リンチするは、レイプするは、看守を暴行するわで、手の施しようがない。他の少年院に移しても変わらん。でも死刑は確定まで裁判なんていう面倒な物がある。だから司法取り引き、M高校生を全員『生け捕りにできたら釈放』だとな。このプログラムの主旨はM高校生に恐怖心を植え付けることと、言ってある。」 H少年院は吉田達の住む県では1番大きな少年院だ。県庁所在地にではなく、H市にあるからそう言う名前になった。

「よく信じましたね。そんな話。」

「まあ、前金をいくらか渡したからな。高校生………それもあんな連中だ。深い考えはできないんだな。」嘉門が煙草を取り出しながら言った。

「ではM高校生を殺す意味がないのでは?」兵が言う。

「だめだ。」井坂が短く言った。

「!!何故ですか?」兵が狼狽しながら聞く。

「それはだな、奴等はM高校の風紀を乱しているからだ。」井坂が言う。嘉門は苦笑し、兵が唖然とする。

「それだけで、ですか?」何とか声を出す。

「それだけだと?あいつらの所業の責任を負わせられて、失職するところなんだぞ。殺す必要はないかもしれんが、嘉門が。」隣の嘉門を見る。

「その方が、井坂先生も復讐されないで済んで良いでしょう。」嘉門が笑った。

「まあ……確かに。」


井坂が答えた所で、死亡者がでた事を表すサイレンがなった。兵がモニターに戻り、井坂は腕を組んだ。


「さあ、次は誰かな?」嘉門は最後まで楽しそうだった。

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