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第1章 始まりの夜2

吉田は駅前の本屋に立ち寄った。

無造作に数学のチャート式の問題をめくりながら、参考文献を探して時間を潰していた。吉田に両親はいない。否、離婚していたのだ。吉田はどちらにもつかないことを決め、父親が生活費だけを振り込んでいる、独り暮らしだった。母親は、吉田が9歳の時に交通事故で死んだ。離婚したのは、7歳の時でそれ以来、独り暮らしだった。

吉田は本屋をゆっくりと後にした。近くのマクドナルドからは良い香りが漂っていた。駅近辺には腕くみしたカップルが多かった。道行く人は吉田を見てバカにしたように笑った。

元来世間体を気にしない吉田は、ようやく、駅に入った。


入った瞬間、異様な光景を目撃した。


背の高い茶髪の男子が数名、駅員達と言い争っていた。吉田はかなり遠くから聞いていたが、男達の怒鳴り声は聞こえてきた。

「だから、誤解だっつてんだろが!やってねーもんはやってねーんだよ!」男はどこか不良くささが漂っていた。

「嘘!触りました!いきなり後ろに回り込んで………」見るとかなり背の低い女性が泣いていた。

痴漢騒ぎのようだ。


「とりあえず、署の方へ…………」駅員がそう言うと、不良の男は逆上した。

「何で俺が行かなきゃならねんだよ!やってねーっつてんだろが!しばくぞっコラッッ!!」不良の男が軽く駅員の顎を小突いた。

「素直に……認めなさいよ……自分が触りましたって………」女性が言った。吉田はその声を聞いてビクリとした。

(まさか………あの声、あの身長は………) 「何やってんの?そこの人?あぁ?警察呼ぼうとしてんの?」不良グループの一人が側にいた男子に声をかけた。男子は怖れおののき、声が出なくなったようだった。駅内は静まり返り、警備員が一人やってきた。

「何の騒ぎだ!何をしたんだ、お前達は?」警備員は年齢がいっていたが、堂々と言った。

「ポリ公か。何かねこのねーちゃんが、俺が痴漢したって言いがかりつけんだよ。」

「言いがかりじゃありません………」

「じゃあさ、聞いてみようか。誰か、この人が、痴漢するの、見たひとォ?」三人目の不良が言った。誰も反応しない。

「誰も見てないって。言いがかりの賠償してもらおうか。」三人目の不良が女性の細い腕を掴んで、連れ去ろうとした。


「待て!!!!まだ話は…………グガァァァ」警備員は制止しようとして、今まで一言も発していなかった四人目の不良に殴られ、伸びてしまった。駅員2名も同じ目にあった。

「助けて!助けて!涼!!!」女性は泣き叫んだ。

涼と呼ばれたのは先程電話をしていた男子だった。一応男達に向かって行った。結果は見るも無惨、失神させられた。

「涼!涼!誰か!!」女性は最後の望みをかけるように叫んだ。

「ねーちゃん、暴れんなよ。その綺麗な顔を二度と見れなくしてやろうか?」

不良グループはせせらわらった。

それでも女性は諦めない。その時だった。

「誰か!!だれ…………」

女性と吉田の目が合った。

「……吉田………君……?」

吉田は今まで壁に持たれていたが、冷たい表情で、不良グループに近づいた。

不良グループは女性が静かになったので、こちらを向いた。

「おう、兄ちゃん、何かようかい?この子の王子様かい?」不良のリーダー格の人間が聞いた。

「………………」

「どうした?ねーちゃんの彼氏かい??」

「………………」

「何とか言え!!コラァ!!!!」

「………………」

「……このッッ!」

不良は吉田の肩を殴った。吉田は若干動いたが、口を開いた。

「先に手を出したな。愚民が。カスが。これで僕がやることは全て正当防衛だ。」

「何いってんだ?兄ちゃん?自分がな……………ギャアアアアア!!!!!!!!」不良は途中で目から血を流し、その場にうずくまった。

「左目失明しちゃったかな?まあ、どうせ、目が有ったって、化学ができるわけでも数学ができるわけないもんなぁ?」吉田が冷たい笑い声を出した。

「てめえ!!!!!」不良は巨漢二人係で、吉田を攻めた。が

「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

先程より派手な悲鳴が上がった。


吉田は二人のうち、一人の足をレスリング技のように抱き抱え、もう一人の巨漢に体当たりし、階段の角に頭をぶつけさせた。軽い脳震盪を起こしたらしい。


「さて」吉田が振り返った。

「分かったこの女は返す、だから来るな………!」不良の最後の一人は恐れをなしたようだ。

「ああん?人に物を頼むとき、ってそんなだっけ?」吉田が残虐な声を出した。

「すみません。許して下さい!!!!」

「失せろボケ!!!!」吉田がそう叫ぶより早く、不良達は逃げ出した。



吉田は荷物を拾いあげるとそのまま去ろうとした。

「待って…………」後ろから先程の女性の声がした。

吉田は振り返った。

「確か………君は………同じクラスの………」


「山口です。…………忘れちゃったの?」

少女が涙を拭きながら言った。普通の男子なら間違いなく見とれるだろうが、吉田はあっさり目を反らした。

「それより………いいんですか…………あれ?」

吉田は彼氏と思われる男子が立っていた場所を見つめた。


「……………いない。逃げちゃっ…………た?」

山口は失望したように言った。

「そうですか。じゃ、今日は、これで。」吉田はあっさり駅のホームに行こうとした。

「ちょっと………待って下さい!」

「はい?」吉田は面倒くさそうに言った。

「あの今日はありがとう。吉田君、喧嘩強いんだね。」

「はあ………」吉田のこえにもういいだろ、と言った感じがした。


「あの……………私、彼にはガッカリしました。」

彼とは、彼氏の事か?何故そんなことを自分に言うのだと吉田は訝った。

「もし、良ければ、吉田君の仲間にしてください!!」普通なら何の事はないセリフを山口は赤くなりながら、言った。

「…………僕の対人感情は、『親友』『友達』『仲間』『知り合い』『クラスメイト』『その他』『敵』ですからね。仲間…………ですか。」

「私…………もう怖い…………でも吉田君なら私を護ってくれそうだから…………お願いします。」山口は右手を出した。その真摯なセリフに射たれたか、吉田は手を握り返し握手した。


「新しい仲間が増えたした。よろしくお願いします。」

「こちらこそ。」山口は涙を拭き、笑いながら、そして手をふりながら去っていった。


吉田は軽く一礼した。

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