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第9章 信用2

エリアFー3


家の防備を完全にした吉田達は、交代交代で寝るという選択肢をとった。


吉田は体力はかなりある方でシャトルランで120を超える回数を叩き出していた。夜に関しても、普段からパソコンでニコ動やようつべを見ているため、目が冴えていた。岩本も起きて、何やら携帯をいじっていた。後藤と蛯原は別室ながらも近い部屋で寝ていた。


「…………はぁ。貴司、駄目みたい………電話は回線自体が駄目で、メールすると、自分にエラー通知メールが来るよ。」岩本が携帯を閉じてイライラと言った。

「一番近い中継局を抑えられたんですよ。」吉田が当たり前だろ、という口調で言った。

「あのさぁ、思うんだけど、逃げ出さないように首輪がついてんだよね。」

「??そうですけど………」 「これ、外せないの?」岩本が首輪を回しながら言った。

「無理です。爆弾が内蔵されててそれでなくとも、危険なんですから。」吉田が言った。岩本は吉田が微妙に緊張しているのが分かった。何故か疑問には思ったが問わなかった。


「じゃあ、脱出は無理?」

「ですね。他の生徒が死ぬのを待つしか………」

「言わないで!!!!」吉田の返答を岩本はほとんど絶叫しながら遮った。すると今まで堪えてきたものが崩壊するように泣き出した。

「貴司はいつもそう。あ……あたしがどんな思いをしてるか、みんながどんな思いをしてるか分かってない!!!一番正しい答えを導き出せても、人の感情を無視したら台無しだと思うけど!!!」岩本は涙に濡れる目で吉田を睨んだ。

「……………岩本さんの言う通りです。でも、それ以外に道はないんです。学校対抗と言う時点で、僕は自分が生き残るためには、自分の高校を優勝させなければならない。だから岩本さんを助けるためにも………皆を助けるためにも。」吉田は久々に動揺しているように見えた。岩本が赤くなった。

「あたしを助けるために……ね。うまいこと言うね。あたしは貴司の事、嫌いじゃないけど彼氏いるから。」重苦しい空気を打開すべく岩本は言った。

「何でそういう話にもってこうとするんです?」吉田が呆れ顔で聞いた。 岩本はいたずらっぽく笑った。

「別に。貴司は恋愛とかに興味なさそうだけど、恋愛は自分だけの問題じゃない事を言おうと思ってね。」

「はい?」吉田の声の調子は冷たくはないが、取り合おうとしない感じだった。

「恋愛は一人じゃできないでしょ?そう言うこと。」

「相手を好きになるかならないかは、自分でできるんじゃないですか。」

吉田は珍しくこの手の話についてきた。

「そうかもね。でも自分が好かれることは自由に選択できない。例え、好かれても気付かないことは結構あるんだよ。鈍感なんじゃなくて、期待はしているんだけど、違った時の反動があまりにも強いから………」

岩本は力説しながら笑い出した。吉田とこんな話をする日が来るとは思いもしなかったからだ。吉田が首を振った。

「貴司は気付いてないと思うけど、貴司の事が好きな人がいるんだよ。」 「へえっ。誰ですか。」吉田はあっさりと聞き返した。

「それくらい自分で気付きなよ。あたしは教えないもんね。」岩本はそっぽを向いた。

吉田は肩をすくめた。


岩本は泣き止んだ。吉田はおもむろにノートとシャーペンを取り出し、何かを書き始めた。

「何してるの?」岩本は暇潰しに聞いた。

「日記を書いてるだけです。」

「こんな状況で書かなくても………」岩本があきれた。


沈黙が支配する世界。以前の二人にはよくあった事だが、今の二人は夜が明けるまで話し続けた。


〜エリアGー4〜


山口が一人眠り、萩谷と小林が見張りについていた。二人は小声ながらも若干落ち着いた調子で会話していた。

山口は陸上部で体力がないわけではないので、眠らずに二人と話し合いたかったらしいが、小林に勧められて、体力温存を選んだ。


「しかし、よく寝てるな。男子が2人、女子が1人なら少しは考えた方がいいんだがな。」萩谷が言った。

「まあな。確かに強姦されるかも……とか考えないのかね。信用されてるみたいだが………」小林が低い声で言った。

「裏を返せば、異性に興味がないのが丸分かり………達也、お前変わらねーな。」

「黙れよ。これでも3人に告白されたんだぜ。」小林がやり返した。

「マジか?俺も3人だ。でも告白されても付き合ってないだろ?」

「ああ。何か文句あるか?」

「全く。そういう理由で山口さんにも信用されてるんだな………」萩谷が苦笑いした。 小林は山口を見た。

「この人、陸上部なんだよ。」 「そうは見えねーな。うちの陸上部はKJばっかだから………」

「KJ?『キモい女子』のことか?」小林がせせら笑った。

「なきにしもあらず。俺が考えたのは『可愛そうな女子』なんだがな。」萩谷は吸い殻をビニール袋に捨てながら言った。

「その分、山口さんはJKって感じするけどな。」小林は真面目に言った。

「ほほう。確かに可愛い方だが………戦闘向きにゃ見えねーな。」萩谷が苦笑いした。

カコン!!!!


仕掛けの空き缶が落ちた。

「!」

「!」

萩谷と小林は素早く窓枠の下部分から目を出して辺りを見回した。 「そうは見えねーな。うちの陸上部はKJばっかだから………」

「KJ?『キモい女子』のことか?」小林がせせら笑った。

「なきにしもあらず。俺が考えたのは『可愛そうな女子』なんだがな。」萩谷は吸い殻をビニール袋に捨てながら言った。

「その分、山口さんはJKって感じするけどな。」小林は真面目に言った。

「ほほう。確かに可愛い方だが………戦闘向きにゃ見えねーな。」萩谷が苦笑いした。

カコン!!!!


仕掛けの空き缶が落ちた。

「!」

「!」

萩谷と小林は素早く窓枠の下部分から目を出して辺りを見回した。

「……………」

「……………」

銃を構え、それぞれ緊張した面持ちで辺りを見回した。

やがて、


ザッザッザッ。という足音。

一人分だった。


「山口さんを起こせ。俺が見張ってる。」萩谷が言った。小林は匍匐前進で隣の部屋に移動した。

午前2時48分。最初の放送まであと12分。

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