第8章 廃校2
〜廃校の最上階〜
「いよいよ、始まりますね。」兵士の一人が教室に戻ってきた嘉門に言った。
「まあな。井坂先生、どうしてまた進んで自分の高校を推したんですか?他の高校の教師達は話のわからない人ばかりでしたよ。」
嘉門が体格のいい男を見ながら言った。そこには、小林達の高校の進路指導担当の井坂がいた。
「何か困ることがあるのか?」井坂が唸るように言った。
「いえ、何も。」嘉門は落ち着いて言った。
「それで政府の防衛省の優勝予想は何処に懸ける?儲かりそうなのは………何処だ?」嘉門がしばらくしてから言った。
「はっ。やはり自分は………B高校かと………」
「B高校か………ま、大本命だな。何しろ、運動神経は抜群だし〜〜川村の父親は防衛省の幹部なんだろ。」
「はい、そうです。しかし、私はM高校かと思いました。」
また新たな兵士が言った。
「それはないな。」井坂が短く言った。
「どうでしょう。小林はサッカー部のキャプテン。さらに、ケンカは人一倍強い。転校生として参加した、萩谷はH高校のサッカー部のキャプテン。さらに吉田はT中学校3年1組プログラムの優勝者です。」
嘉門が調査報告書を見ながら言った。
「吉田は中学校の部の優勝者か………まぁ、何人も殺してそうだけどな。蛯原は吉田が殺人者だと知ったら見る目は変わるかな?」
井坂が言った。
「蛯原?今回のプログラムに参加した、M高校の女子ですか?」
「ああ。吉田は全くきづいてないが、蛯原は明らかに吉田に好意を寄せているみたいだ。」井坂はニヤニヤしながら言った。
「本当ですか?調査報告書によると、吉田は………いや吉田に限らず、萩谷や後藤もですが、冷酷非情、女子に対する免疫はない。ケンカは凄まじく強く、不良達から金を巻き上げたりしています。」
「B高校の服部が蛯原を襲った時、偶然居合わせた、吉田が肩に重傷を負いながらも服部の足の骨を折り、全治2ヶ月の怪我を負わせた挙げ句、気絶させたらしい。その時、蛯原は戦いを見守っていて、終わった時、吉田に抱きついたらしい。」
「服部を破るとは………これは面白い事になりましたね。」 「しかし、S高校やK高校はどうですか?」
兵士が言った。
「ふん、バカかお前は。本来プログラムはクラス単位でやって、一人しか残らないルールなんだぜ。それをわざわざ高校対抗にしたのは、M高校とB高校を戦わせるためなんだ。単に二校を無差別に選んだだけだ。あっというまに殺されちまうだろ。」
井坂が冷たく言った。
「………ですね。作戦会議がそろそろ終わる頃じゃないですか。嘉門様、用意した方が………」
兵士が言った。嘉門は立ち上がると、タバコをポイと吐き捨てた。
「だな。いよいよ、はじまるぞ。」嘉門は楽しそうだった。
〜廃校の1階〜
「じゃあ、これで2度目なの?」黒澤が驚いて聞いた。
「そう。俺達は貴司から聞いていたが、まさに同じような状況だったから、度肝をぬかれたよ………」 小林が萩谷とウンウンと頷きながら言った。
「!!!貴方は………」ここで岩本は萩谷の存在に気づき言った。
「彼が君の依頼した探し人の萩谷悠斗です。」吉田がさらりと言った。
岩本は黙って萩谷を見ていた。いつまでも見つめられて、萩谷は苦笑した。
「彼は誰なんだ?」海老澤が小林に聞いた。
「俺達の幼なじみさ。全幅の信頼がおけるやつだから。金子の恋人の………」小林はここで一旦言葉をきり、黒澤をニヤニヤした目で見た。
「彼女を助けようとしたところ、駅で偶然会ってそのまま着いてきたのさ。」
「ふうん。小林がそう言うなら安心だ。よろしく。」海老澤が握手を求めながら言った。
「ああ。よろしく。」萩谷は真面目な顔になり握手した。
「で、どうします?」後藤が言った。
「やはり、バラバラになるのは危険だろう。数人でまとまっ………」
「いや、駄目だ。」金子の発言を退けながら吉田が言った。
「何で駄目なんだ?」金子の顔が少し険しくなった。
「目立ち過ぎる。狙われるいい対象になるぞ。別に1人1人バラバラに行動する訳じゃないぜ。何班かに別れた方がいいと言ったんだ。」 「全滅を免れるためか。確かに有効だな。積極的に殺し合いに参加するきにはならんが………」小林が言うと、場が静まり返った。シラケたと言うより、真剣に受け止めたと言う方が正しいだろう。
「うん………じゃ、何班に分ける?メンバーはどうする?」金子が聞いた。
「3班か、4班………いや、やはり3班か………敵は恐らく総出で攻めてくるぜ。3人くらいいないと、食い止められない。」吉田が誰にと言うより、独り言のように言った。
「じゃ、どう分けるか………」小林が言った。メンバーをぐるりと見回した。
「ま、萩谷は俺と一緒に行動した方が良いよな?みんなあまり慣れてないから。」
「じゃ、私がその班に入る。」山口がそう言うと、他のメンバーを見た。どこか挑戦的だった。 誰も何も言わないので、小林は話を続けた。
「貴司は………そうだな後藤君と組めば問題ないよな………女子は誰が入る?」小林の問いかけに岩本が手を挙げた。そして、赤面しながら蛯原も手を挙げた。蛯原の感情を恐らく理解している小林はニヤニヤしながら吉田を見た。吉田は後藤と何やら話していて、気付いてない様子だった。
「じゃ、最後に………バスケ部軍団。」小林がせせら笑い出した。
金子がもう少し、真面目にやれ、と言うところで、教室のドアが開いた。 「はいはいは〜〜〜〜い。ミーティングは終わりです。B高校から全員荷物を持って退出してください。5分後にS高校それ以後5分置きに行くからな〜〜〜。」
B高校の生徒達が動き出した。
戦いがいよいよ始まるのだ。
「はいはいは〜〜〜〜い。ミーティングは終わりです。B高校から全員荷物を持って退出してください。5分後にS高校それ以後5分置きに行くからな〜〜〜。」
B高校の生徒達が動き出した。
戦いがいよいよ始まるのだ。
B高校の生徒は中身を確かめるなり個人ごとに、武器を出した。
全員が銃器類だった。
吉田はもう理不尽なゲームだと思い知らされた。
B高校は最後に、小林達をバカにしたような目で見て立ち去った。
続いてS高校、K高校と移動した。
遂に吉田達の番になった。
吉田は荷物から武器を出して見た。
『レミントン31 ショットガン』添付の説明書を呼んだ。
後藤が吉田の武器を見て安心したように、ため息をついた。
「俺はアーミーナイフでした。あまりB高校の奴等に役にたつようには見えませんな。」
「俺は当たりかな?」小林が武器を見せびらかしながら言った。
『デザートイーグル』
「オートマチックの最高峰か。」吉田は武器を鋭い目で見ながら言った。
「私……私……こんなの使えない………」蛯原が吉田と後藤にすがるように言った。
『S&W357口径』
「今時リボルバーとは。自分の命を守るために役に立ちますよ。」吉田が言った。
「リボルバー?」蛯原が聞き返したが、吉田は首を振って黙らせた。
「さ、君たち、武器を確認するのは良いが、早く出ないと首から上が吹っ飛ぶぞ〜〜〜」嘉門は楽しそうだった。
全員が頷くと、誰もいなくなった教室から班ごとに出ていった。