表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/65

第5章 誘惑

土曜日の最初の授業が始まる直前、左隣の蛯原が話しかけてきた。

「貴司君?おはよう…………あの、もう少し右によっていいですか?」蛯原は何かに怯えているようだった。

「何故?」吉田が撥ね付けるような言い方をした。

「仲間になったんだぜ〜つれないこと言うな。折角美少女が寄り添うのにさ。」やり取りを見ていた、右隣の金子が茶化した。蛯原は下を向き、吉田と金子がよくやるように、筆談するために紙に何かを書き始めた。

「はいこれ。」蛯原は吉田に手紙を書き終えると、渡した。

『隣の転校生が嫌なだけですが、また内職したりして襲われた時、貴司君達に守って欲しいから。』

「………………分かりました。」吉田は金子に手紙を見せた。 「守って欲しいから………か。何かベタなセリフだね。まあ、蛯原さんも真面目なんだろうね……」金子が吉田に言った。


転校生がその様なやり取りの5分後に入ってきた。転校生が入ってくると、教室は若干静かになった。転校生の服部は席に着くと、吉田と蛯原が机をやたらと近づけているのを見て、鼻を鳴らした。


1、2、3時限が終わり、昼休みになった。吉田達が通う高校は65分授業であった。蛯原はさっさと友達の方に行ってしまった。服部は昨日撃たれた腹を気にしつつ、教室の外に待機していた仲間たちと合流した。

吉田は基本、昼食をとらなかった。1日2食。それすらも少ないほうで、食事を時間の無駄と考えているらしく、日常からガムや飴で胃を満たしていた。

「ほら貴司。約束の品だ。」と言いながら、iPodを持ってきた。

「ああ、そう言えば、そんな約束したな。早速聞かしてくれ。」 小林はガサゴソやりはじめ、吉田にイヤホンを渡した。

「よし、じゃあ流すぜ。」小林は吉田がイヤホンをつけ終わると言った。吉田が頷いた。


「『校長。査察の結果を言います。私たちが見た所、皆さん真面目に授業を受けているようです。』

『それに、実技科目も手を抜かずに授業を受けているようです。』

『そうですか。嬉しいことです。』

校長の声がした。

『誠に残念なのは………2年E組です。言い直しましょう。2学年全体です。授業中に他のことをしている、生徒や寝ている生徒がいました。E組については、緊張感というものが感じられませんでした。』

『…………また、あのクラスが………』

『校長、また、ということは、以前にもこのような事があったのですか?それを知りつつ、今日に至るのであれば、校長の責任とされても文句は言えますまい。』

『私個人としましては、あのクラスの担任と副担任に戒告しました。』

『では、こちらが力を貸しましょう。何人か優秀な生活指導員を派遣するのです。』

『本校の井坂教諭は20年以上のベテランです。県北地域の劣悪な高校を優れた柔道術を生かして制圧してきたのです。』

『ほう、では違う作戦を………プログラムを行うのはどうですか?恐怖心を植え付けるのです。』

『中には全く無実な生徒がいます。プログラムを強行したら非難どころか、逮捕されます。』

『なるほど、ではそれは最終手段として、近頃休暇になった防衛大学付属高校の生徒達に規則の大切さを教えさせたらどうでしょう。』

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……………………………。


音声が砂嵐になった。


「終わったぞ、小林。何か最後砂嵐になったが。」吉田がイヤホンを取り外しながら言った。

「まあ、録音してる最中に先公に指名されたからな。分かるだろ、普通に考えて盗聴器に録音の予約なんてできないんだ。査察が終わる時間を見計らって、盗聴してたんだ。まだ、授業が終わってなかったからな。」小林は押さえつけるような言い方だった。

「………そうか。これを聞くかぎりは、真の犯人は県政府だな。しかし、この査察したやつが言ってる『プログラム』って何だ?」吉田が小林にというより、自分に問いかけるように言った。

「さあ?何か逮捕とか非難とか言ってたけどな………」小林は肩をすくめた。

「これどうも。学年集会『また』サボろうかな。」吉田がイヤホンを小林に返しながら言った。

小林は聞いていなかった。何やら机を見ていた。

「なあ、貴司。」

「あん?」

「何で蛯原さんの机がこんなにお前側に寄ってるんだ?拐かす気か?」

「拐かす?意味分からんぞ。僕は何もしてない。向こうから近寄って来たんだ。」

「ほう。モテるな貴司。」小林はバシリと吉田の肩を叩いて去っていった。



昼休みが終わり、5時限目になった。吉田が通う高校は65分を1時限として考え、5時限までだった。臨時学年集会をサボるのは吉田の十八番で見つかることなく出席しないことも頻繁にやっていた。だが、今日は話が違った。4時限目の物理が終わるなり、担任の川北が入ってきたのだ。

「今から皆さんを体育館へと引率します。私語はしないように。」川島は重苦しく言い、吉田、金子、海老澤、鈴木、小林の順に睨み付けた。

仕方なしに吉田達は立ち上がった。小林は明らかに反抗的な顔をしていた。


10分後…………2年生全員が集められ、学年主任の話が終わると、校長が入ってきた。

校長と同時に、防衛大学の生徒達も入ってきた。海老澤が隣の吉田に身を乗り出し毒づいた。

校長はついに口を開いたーーーーーーーーーーー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ