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第92話 白雪姫蘇生の瞬間――メイドの証言(その2)

投稿が遅くなりまして申し訳ありません。


2019/08/11 サブタイトルの一部を「第四の殺人未遂」から「白雪姫蘇生の瞬間」に変更しました。

 証言台には、白雪姫が目を覚ました時に目撃したという、唯一の証人、メイド。ロングスカートの、所謂クラシカルロングメイドの服装を身に纏っている。

 スカートの中には、ナイフでも仕込まれているのではないと疑いたくなるほどの隙のなさ。

 白雪姫が目を覚ました時も、特にパニックに陥ることもなく、冷静に対応して見せたのだろう。証言には客観性が十分確保されていて、何も問題がなさそうに見える。

 だが、白雪姫が証言した、「半分に割られたりんごを一口齧った」と、「白雪姫の口からりんごの芯が飛び出した」という、矛盾した証言のどちらが正しいのかを立証しなければ、先には進めない。

 酒挽(さかびき)は、証言台から少し距離を取って尋問を始める。


「白雪姫の棺を運ぶのは4名でしたよね?」


「仰るとおりです」


「王子は、白雪姫の棺を極力近くに置いておくために、棺を運ばせていたわけですが、さすがに毎日となると、毎日同じ4人が棺を担いでいたわけではないですよね?」


「仰るとおり、5人でローテーションを組んでおりました」


「5人、ですか?」


「はい。最初に白雪姫の右足側、次に頭部左側、左足側、頭部右側と担当し、1日お休みとなります。移動のため担ぐ際は、棺を肩に乗せておりましたので、過重な負担にならないよう、右左、左右と。また、頭部の方が若干重いため、その点を考慮の上、順番を決めておりました」


「そうすると、棺の担ぎ手は、皆ほとんど同じぐらいの身長だったということですか?」


 でなければ、白雪姫の体は水平にならない。位置関係が最も低くなると、そこに重量という負荷が集中することになる。


「仰るとおりです」


 そうでなければ、低くなっ場所に配置された者は、重量という負荷に襲われてしまう。


「激高した者は、どこを担当していたのですか?」


「頭部右側です」


 つまり、翌日休みになる者がキレたわけだ。4日連続で死体の入ったガラス張りの棺を運ばされていることを考えると、同情したくもなる。だが、もう1日我慢すればいいだけではないか、という考え方も可能だ。

 しかし、そうなると一つ疑問が残る。


「あなたは、白雪姫が意識を取り戻した時に棺を運んだ者の、その後をご存じですか?」


「処刑されたと聞き及んでおります」


「それについてどう思いましたか?」


「白雪姫様に手を上げる、という不敬を働いたのですから、当然の処置かと存じます」


「ではお聞きしますが、白雪姫の背中を叩いたのは、一人だけですよね?」


 常に傍らに寄り添っていたメイドが「止める間もなく」行われた行為。複数人でやれば、背中どころか暴行であるし、白雪姫の上半身を起こしての行動だ。

 常に4人で持ち上げていた棺である以上、少なくとも下ろされた状態で犯行は行われていることになる。

 ガラスの蓋を開け、横たわっている白雪姫の上半身を起こした上で背中を強く叩いたのだ。


「それが、正直なところを申し上げると、よくわからないのです」


 メイドは右手を自分の頬に当てて、首を傾げる。


「どういうことですか?」


「私も気が緩んでいたのだと思います。白雪姫様の棺が下ろされたので、少し離れたのです。とは言っても、ほんの数メートルの距離でしたが。

 叫び声がしたので、振り返ってみたところ、二人がガラスの蓋を支え、一人が白雪姫様の上半身を起こしておりました。

 そのため、()()()()()()()()()()()()()()()のです。

 確かに白雪姫様のお背中を叩いたのは一人でしたが、そこに至る行為が単独であったかどうかまでは、私には判断できなかったのです」


 なるほど。背中を叩いたのは一人かもしれないが、叩く体勢までは、複数人が関与していた可能性があるということか。

 ガラスの蓋は、二人が開けたのか。それとも、誰かが開けたものを倒れないように支えたのか。物がガラスなだけに、衝撃を与えれば割れてしまう可能性も否定できない。


「あなたには、どう見えましたか?」


 メイドは少しだけ思案する。


「私には、ガラスの蓋は二人が開けたように見えました」


 つまり、メイドが、自分が印象を受けたとおりに王子へと報告したことで、()()の処刑が執行された可能性がある。


「……んん?」


 今度は、酒挽が首を捻る。

 メイドの証言で、白雪姫の背中を叩いた件に関わっているのは、今のところ3名だけだ。

 残り1名への処刑を執行する理由がない。

 もし仮に連帯責任なのであれば、一緒にいたメイドも処刑をされていなければおかしい。


「ガラスの蓋が開けられた時、白雪姫の周囲には()()がいたことになると思いますが、もう一人は、どこで何をしていたんでしょうか?」


「その瞬間に何をしていたのかは、私もはっきり覚えておりません。私が話せるのは、仰るもう一人が白雪姫様の口から飛び出したりんごの芯を確保したという事実だけです」

次回の更新は金曜日の夜の予定です。

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