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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第三章 幼女と夏の孤島
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092 幼女、乱戦す

「はい、洗うねー」

 大浴場に楽し気な千穂の声が響く。

 石鹸の泡に包まれた柔らかいスポンジを手に、穂乃香を洗うのは、千穂を筆頭とした有志の面々、すなわち、奈菜にみどりにゆかり、そしてどういうわけか彩花だった。

「あ、あの、みんなでしなくても……あふふふふ、くすぐっ……あふ」

 四方八方から延びる手に対して、わずかに身をよじりながら制止を促す穂乃香だったが、伸びる手の多さに笑い声を上げさせられ、最後まで言い切れない。

 その反応を面白がるみどり、そして自分の行動に敏感に反応を返してくれることに嬉しくなった奈菜の二人がより一層熱心に洗い出し、それをやんわりとまるで強さの籠っていない声で止めるゆかりと、自分がどっち側に立つか悩む千穂を尻目に、彩花が目を輝かせて脇腹に脇の下とピンポイント攻撃を加えていた。

「あのっ! だ、だれ、つつくの……あふっ……駄目だから!!! あはははは」

 バタバタと足を動かしてもがく穂乃香の声が一段と大きくなるが、それは構い倒してる5人の手に力を籠めることに繋がる。

「もう、ちょっと、私、本気で怒りますよ!」

 いよいよ耐えきれなくなった穂乃香が声を荒げたことで、ぴたりとやむ穂乃香をくすぐる……洗う五組の手、その隙をついて復讐が始まる。

「まずは、千穂ちゃんです!」

 穂乃香の宣言に、一も二もなく付き従ったのはみどりと奈菜、そもそも遊びの延長線上で洗っていたので、ターゲットが自分でないのであれば、喜んで参加した。

「わぁ、私は別に、大丈夫……あうー」

 穂乃香率いる三人組に囲まれて逃げ出そうとした千穂だが、いつの間にか回り込んでいた彩花が、さりげない手つきでピンポイント攻撃を放つ。

 触られるだけで力が抜けてしまう程敏感な腰や足の裏といった弱点を明確についた彩花の攻撃で、力が抜けてへたり込んだ千穂に、雪崩を打って幼女組の握るスポンジが襲い掛かった。

 そうして泡まみれになった千穂は、くすぐったさに身もだえながら幸せそうに顔を蕩けさせる。

 千穂の見せた反応に満足した穂乃香は、次のターゲットとして、彩花を視界に捉えた。

 だが、シレッと千穂を戦闘不能に追い込んだ彩花は、穂乃香の追撃をかわすべくすでに次の行動に移っている。

「変わり身の術!」

 真面目な顔で言い放った彩花が、タイミングよく浴場に姿を現したアリサを盾にした。

「はっ? え? なんですの?」

 戸惑いの声を上げるアリサにみどりと奈菜が襲い掛かる。

 彩花を狙っていた穂乃香としては、ハズレではあるものの、部下二人が攻撃を開始した以上、アリサを野放しにしておけないと、自らもスポンジを手に参戦した。

 急な不意打ちに、仁王立ちをしていたアリサは、穂乃香に手を引かれる。

「立ったままは危ないし、石鹸の泡が飛ぶので座ってください」

「え? あ、はい」

 木製の椅子にほぼ強制的に座らさせられたアリサは、未だ状況が飲み込めずに目を瞬きさせているが、その隙にみどり、奈菜、穂乃香の手が伸び泡まみれになった。

「あれ、これ……ふぁ……くすぐったいけど、洗ってくれているの?」

 あっという間に泡で埋め尽くされ首をかしげるアリサの頭から、急に水の塊が降り注ぐ。

「うわっぷ、な、なに!?」

 慌てて全身を覆っていた泡を押し流した水の出所を探れば、そこには木桶を手に悪戯っぽい笑顔を浮かべるクルミが立っていた。

「いや、泡まみれだったから、流してあげたんだよ」

 舌をぺろりと出して、お茶目を気取るクルミを三度瞬きして見たアリサはゆらりと立ち上がる。

「クルミちゃん、今、私のすべきことがよくわかりました」

 にっこりと満面の笑顔を浮かべて、アリサはそれまでのゆらりとした動きとはまるで違う野生の獣のようなしなやかで素早い動きでクルミの背後に回り込んだ。

「クルミちゃん。逮捕します」

「えっちょ、早いよ、アリサ!」

 カランカランと手にしていた木桶が、クルミの手を離れ浴場の床を転がっていく。

 しかし、羽交い絞めにされてしまったクルミには、それを追うことはもちろん、その場から逃げ出すことも出来なかった。

「降参、降参するからー」

「ダメです」

 クルミの言葉に、笑顔のままでアリサは拒絶を示すと、穂乃香たちに視線を向ける。

「次はクルミちゃんをみんなで洗ってあげましょう!」

「「はーーい」」

 アリサの掛け声に、奈菜とみどりが素直に手を上げて、穂乃香と共にスポンジを手にクルミに迫った。

 だが、その手はクルミだけでなくアリサにも伸びる。

「ほ、ほら、アリサ、アリサも逃げないと……ひゃぁ」

 弱点の首筋にスポンジが迫り、説得の最中で悲鳴を上げるクルミに対して、アリサは拘束を緩めなかった。

「くふっ……か、覚悟の上ですから、お仕置きから逃がしませ……ふふ……んよ!」

「ちょっと! はぅっ……と、共倒れになるぅ……じゃない!」

「本望です!」

「なにに殉じてるのよぉ~~~」

 クルミがアリサの拘束から抜け出られないまま、もがいていると、そこに新たな参加者が姿を見せる。

 ようやく復帰した千穂だった。

「クルミちゃんもアリサちゃんも洗ってあげるね」

「え、遠慮しま……」

「クルミちゃんだけにし……」

「「ひゃあああああ」」

 幼女とは違い、力も強く、弱点も熟知した千穂のスポンジが、乱舞しクルミとアリサはその手管の前に沈む。

 そして、2人を仕留めた穂乃香、みどり、奈菜、千穂の四人はシレッと湯船に逃げ込んだ彩花を視界に捉えた。

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