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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
最終章 穂乃香の決断
808/812

808 幼女、希望を伝える

「みどりちゃん、それから、奈菜ちゃんと月奈ちゃんには、私を守って欲しいの」

 穂乃香の言葉に、みどりは目を丸くした。

 ずっと思っていたことを、容易くお願いされてしまった事への戸惑いと、同時に、穂乃香には不必要なことではないかという思いが、みどりの中に浮かび上がったからである。

 それは、連名で呼ばれた奈菜と月奈も同様であった。

 普段から突然想像もしてないことを口にする穂乃香ではあったが、今回はそれにも増して自分を守って欲しいという必要とは思えない言葉が足されている。

 困惑しないという方が無理であった。

 だが、困惑していてはその意図を知ることは出来ない。

 一番最初にその事に気付いた月奈が、穂乃香に問い掛ける。

「穂乃香ちゃんはすっごくつよいとおもうけど、るなたちがまもるの?」

 守れと言われれば守ることに異存は無いどころか、喜んで引き受けるつもりではあっても、本当に必要なのかという月奈の疑問を、穂乃香は大きく頷くことでまず肯定して見せた。

 間違いではなかったけれど、それでは疑問は解消出来ないと、月奈は更に問いを重ねる。

「なんで?」

 これには、ようやく我に返ったみどりと奈菜も注目した。

 対して、穂乃香はどこか悪戯染みた笑みを浮かべて答えを返す。

「私、魔法を封印するから」

「「「え? ええええええええ!!」」」

 穂乃香の発言に、みどり達だけでなくその場の全員が漏らした驚きの声が、すぐさま絶叫に変わった。


「そんなに意外なことじゃないでしょう?」

 どこか不服そうな顔の穂乃香に、全員が一斉に首を左右に振って見せた。

 すると、即座にアリサがブンブンと首を左右に振って「いや、意外デーース!」と訴える。

 これは皆同意見であるため、他の面々も、うんうんと頷きで同意した。

「良いデスか、穂乃香ちゃんから魔法を取ったら何が残るとおもうデス!」

 アリサの言葉に、穂乃香は「ま、魔法しかないみたいな言い方……」と顔を引きつらせる。

「天才子役に、アイドルに、超絶名家のお嬢様に、子供向けブランドのイメージガール……Oh! 思いの外いっぱい残りました……あ、デーース」

 魔法以外の特色を列挙したアリサは、指折り数えて残ったものに、キャラづけの語尾を忘れるほど戸惑った。

 そしてその事がこれまでの緊張をコナゴナに打ち砕き大きな笑いを引き起こす。

 皆が笑い終えて、真面目な顔を浮かべ直すまでには大分時間が必要だった。


 改めて仕切り直しとなったところで、茉莉が先陣を切って穂乃香に問い掛けた。

「ま、まあ、穂乃香ちゃんがマルチな能力を持っていることはわかったけど、どうして、魔法封印なの?」

 茉莉の質問に対して、穂乃香はニマリと笑ってみせる。

()()、私の魔力の方が、茉莉お姉ちゃんより大きいからだよ」

 穂乃香の一言に、茉莉の負けん気が反応して、体がカッと熱くなった。

 だが茉莉は、それを表には出さず、自分の中に溜め込むことで、穂乃香を超えるという目標を達成するための燃料へと昇華する。

 目にギラギラと闘志を燃やして、強気な笑みを浮かべながら、穂乃香に頷きと共に同意して見せた。

「そうだね。()()穂乃香ちゃんの方が多いもんね」

 穂乃香は敢えて茉莉の心情の変化には触れずに、ただ事実として「私が魔力を持ったままでは、周辺の魔力を支配するのは凄く難しい。それに、また万が一プリスラーフマーナに乗っ取られた時に厄介だからね」と付け加える。

 穂乃香の中には、プリスラーフマーナに体を支配されてしまった時の苦い記憶が深く根を張っていた。

 様々に策謀を巡らせたとしても、自分とプリスラーフマーナの波長が同じせいで、完璧には対抗しきれないと結論づけた時に、穂乃香は魔法を封印することを選んだのである。

 それほどに、あの苦い経験は二度と味わいたくないと穂乃香は思っていた。

 また、皆から頼って欲しい、もっと頼るべきだと言われ続けたことも、穂乃香の決断を後押ししている。

 全てを自分だけで熟すのではなく、仲間と共に困難に立ち向かう、それを自分自身の肝に刻み込むためにも、穂乃香は魔法封印を選んだのだ。

「多少不便だけど、でも、私にはこんなに頼もしい仲間がいるんだから、大丈夫だと思ったの」

 それは穂乃香の偽らざる本心であり、同時に信じてみたい事でもある。

 そんな思いのこもった言葉を受けたみどりは、真っ直ぐに穂乃香を見詰めて言い切った。

「みどりが……ううん。みどりたちみんなが、穂乃香ちゃんをぜったいまもるよ!」

「るなも!」

「私も」

 みどりに続いて、奈菜と月奈も強い表情で続く。

 そんな三人の姿を見て、茉莉は「ああ、そういうことね」と口にした。

 自然と皆の視線が自分に向くのを受けて、茉莉は続きを言葉にする。

「みどりちゃん、月奈ちゃん、奈菜ちゃん達、三人は穂乃香ちゃんと同じ幼稚舎に通っているし、お仕事も一緒にしている。私たち……榊原家のメイドよりも、穂乃香ちゃんの近くにいられて、穂乃香ちゃんを守れる。だから、魔力を掌握するのが私で、穂乃香ちゃんを守るのがみどりちゃんたちなのね」

 茉莉の発言に、穂乃香が頷きで追認すれば、みどり達三人の目には強いやる気の色が満ちた。

 そんなタイミングで、穂乃香が「あー、でも」と口にする。

 当然、やる気を燃やしたばかりの三人も、茉莉も何を言い出すのだろうかと穂乃香に注目を向けた。

 その視線をまずは笑みで軽く受け止めた穂乃香は、そのままみどりを見詰める。

 向けられた視線から、何かが言いたいのだと察したみどりは、穂乃香に「え? なに、穂乃香ちゃん?」と問い掛けた。

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