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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第三章 幼女と夏の孤島
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078 幼女、自己紹介をする

「私も奈菜ちゃんと同じ聖アニエス学院幼稚舎の一年もも組の榊原穂乃香です」

 ぺこりと穂乃香が頭を下げた瞬間、プリッチの5人は一瞬お互い顔を見合わせた。

 それから『この子が……』という目を一同が穂乃香に向ける。

 この島でのロケにあたって、榊原家の果たす役割はとても大きいため、五人は事前に『榊原穂乃香は傷つけたりしないように』と言い含められていたのだ。

 それもあって、凛華役の少女は普段以上に気を遣っていたのだが、クルミはそんなもの完全無視で突き進んだせいで、心に傷を残したかもしれないと、緊張を強いられることになってしまう。

 結果、黙り込むことになってしまった5人に対して、穂乃香が首を傾げた。

「なにかありましたか?」

 その問いにお互いに顔を見合わせたところで、沙百合役の少女が代表して答える。

「ええと、今回のロケは榊原グループの協力を受けていると聞いたので……」

 言われて穂乃香は、納得しつつ視線を後ろに立つ菊一郎に向けた。

 すると菊一郎は柔らかな笑みを浮かべて首を左右に振って見せる。

「儂の紹介は後でよかろう。穂乃香、まずはお友達を紹介してあげなさい」

 菊一郎の言葉に、穂乃香も頷きで応えると、未だ自己紹介をしていないみどりに視線を向けた。

「みどりちゃんの番だよ」

 穂乃香にそう声を掛けられて、みどりは「はーい」と手を上げて応じる。

「みどりはね、いわさきみどりっていいます。ほのかちゃんと、ななちゃんとおんなじももぐみです!」

 ぺこりとお辞儀も加えて挨拶を決めるみどりの愛らしさに、その場の全員が笑みを浮かべた。

 次に、5人の中から一歩踏み出した凛華役の少女がにっこりと微笑む。

「穂乃香ちゃん、奈菜ちゃん、みどりちゃん。よろしくね」

 穂乃香たちの挨拶を受け止めたと示すように、順に名前を呼んでから凛華役の少女は胸に手を置いた。

「改めまして、私は春咲凛華役の高森千穂です」

 千穂は最後に真面目な顔で深めのお辞儀をしてみせると、みどりが目を輝かせて尋ねる。

「アネモネだよね」

「うん。そうだよ~」

 朗らかな返事を返しながら、千穂はアネモネの変身ポーズを決めて見せた。

「わぁ~~」

 大きな歓声を上げるみどり、つつましやかな拍手の奈菜に、大きく全力で拍手をする穂乃香と三者三様の反応だが、千穂は掴みは十分と満足げに次に名乗るであろうメンバーに視線を向ける。

「はいよ」

 視線を受けて、頷いたのは桜花役の少女だ。

 千穂とは一番仲がいいし、メンバーの中でも一番わかりあっている同士でもある。

「私はサイネリアの風祭桜花役の遠藤茉莉。みんな、よろしくね」

 チームの中でサイネリアはボーイッシュさとか格好良さを担当する役柄であり、本人の素もそれに近いため、役とのシンクロ率は高い。

 それもあって、さっぱりと決めた挨拶は、役柄同様に爽やかだった。

 茉莉に次いで声を上げたのは、クルミだった。

「改めてー、安土菊乃をやってる星野クルミだよー、よろよっむぎゅ」

 頬を両方から挟まれ、洋ナシのように顔を変形させられたクルミは、挨拶の途中で強制的に止められてしまう。

 それをなしたのは金髪の少女だった。

「貴女はもうしたでしょう。次は私です」

 先ほどとはまるで違う流暢な喋りに、穂乃香たちは目を丸くする。

 そんな視線に、ポイッとクルミを投げ捨てたローザ役の少女は苦笑を浮かべた。

「ごめんなさい。あの少し片言な喋り方は役作りで、普通に喋れます」

 クルミの地に比べれば、自分の外国人風キャラ付けは弱いと思っての発言だが、どうもそうではなさそうな気配に、ローザ役の少女は顔を強張らせる。

「あ、あれ?」

 固まったままの反応のない穂乃香たちに動揺を見せたローザ役の少女に、戻ってきたクルミが突っ込んだ。

「私のキャラよりも、アリサが日本語得意な方がショックが大きかったみたいだねー」

「うぐ……」

 目の前の事実にその言葉を受け入れるしかないアリサと呼ばれたローザ役の少女は呻く。

「ま、まあまあ、ともかく、自己紹介だよ、自己紹介!」

 悔しそうな顔のアリサとクルミの間に割って入った千穂が、慌てて自己紹介を促した。

 言われて、目を閉じて気持ちを落ち着かせたアリサが、穂乃香たちに視線を戻す。

「あ、改めまして、ローズに変身するローザ・アゴーニ役の藤崎アリサです。えーと、父がロシア、母がロシアと日本のハーフで、私には日本の血が1/4入ってます」

 北欧系の容貌のアリサ鉄板の自己紹介には、自分の血の割合は欠かせないものだった。

 ともかくこれを入れると、日本人の反応がなぜか良好で、頷きとともに受け入れてもらえるのが、アリサの中に成功体験として根強く存在している。

 だが、アリサの誤算は、そのデータの対象が自分たちに年齢の近い子以上の人たち、小学校でも高学年の部類から上の子たちだということであった。

 そこに年齢的に至っていない穂乃香たちの軽く頷く程度の反応は、アリサの想定を大いに裏切るものである。

「あ、あれ?」

 またも戸惑いの声を口にすることになったアリサの肩に手を置いた沙百合役の少女が、慰めとも哀れみともとれる生暖かい視線を残して前に出る。

「最後は私ですね。リリーの氷川沙百合役、久保川彩花です。奈菜さん、穂乃香さん、みどりさん、よろしくお願いいたします」

 丁寧に頭を下げる彩花は頭を上げると順に視線を向けてから微笑んだ。

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