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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第三章 幼女と夏の孤島
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075 幼女、飲み物を注文する

 水着から着替えた穂乃香たちは、同じく新たな着物に着替えた菊一郎が待ち構える食堂へと集まった。

 そこで早速とばかりに、穂乃香たち幼女組はゆかりに預けられ、母親組は状況説明をする菊一郎と陽子の座る席の近くに案内される。

 その様子を不思議そうに眺めるみどりはゆかりに問うた。

「おかあさんたちは?」

「大人だけで話があるので、終わるまで少し待っていて欲しいそうですよ」

「そっかー」

 ゆかりの答えに納得したみどりは、コクコクと頷いて、軽くジャンプをして穂乃香の横に置かれた椅子に腰を下ろす。

 奈菜は黙って穂乃香の反対側をキープしていた。

「それじゃあ、待ってる間、どうしようか?」

 穂乃香が、奈菜、みどりの順で視線を向けて問う。

 横並びに座っているので、穂乃香の首の動きは忙しなかった。

「えと、私は、穂乃香ちゃんのしたいことで……」

 もじもじちらちらと、穂乃香を窺うようにしながらも、依存の度合いの強さを示す奈菜に続いて、みどりも無邪気に同調する。

「みどりもー、ほのかちゃんのしたいことでいいよ!」

 二人の視線を受けつつ、穂乃香は軽く苦笑を浮かべて、ひとつ「うーん」と唸った。

 それから、穂乃香は二人に提案をしてみる。

「一応、海に入って体を動かしたから、水分補給をしながら考えようか?」

 穂乃香の提案に、聞きなれない言葉があったみどりは可愛らしく首を傾げた。

「すいぶんほきゅ?」

 対して、奈菜が自分の頭の中の言葉でかみ砕いて伝える。

「えーと、えーとね、何か飲まない?ってこと!」

「そーいういみかー」

 奈菜の手助けに嬉しそうに頷いてから、みどりは「ななちゃんせつめいありがとう!」と微笑んだ。

 その素直なみどりの反応に、奈菜は気恥ずかしそうに頬を染めながら「うん」と頷きで応える。

 穂乃香はそんな二人のほのぼのとしたやり取りに目じりを下げると、ゆかりへと視線を向けた。

「じゃあ、ゆかりさん、飲み物をお願いします」

 穂乃香のオーダーに対して、ゆかりはぺこりと頭を下げて了承を伝えるが、みどりがそこへ口をはさむ。

「ほのかちゃん、違うよ!」

「へ?」

「ゆかりおねえちゃんでしょ?」

 みどりの何だか怒ったような口ぶりと態度に、目を瞬かせてから、穂乃香は苦笑した。

 それから改めて「じゃあ、お願い、ゆかりお姉ちゃん」と言い直せば、みどりは満面の笑顔を浮かべる。

「ええ、もちろんよ、ほのかちゃん」

 それに合わせてゆかりも柔らかな口調で返すと、オーダーを伝えるため、食堂に隣接する調理場へ向かった。


「まずは、孫娘を思ってのこととはいえ、先走ってしまい、申し訳ない」

 菊一郎は由紀恵と加奈子を前に、深く頭を下げる。

 それに先に答えたのは由紀恵だった。

「いいえ、気になさらないでください。娘にはいろんなことを経験して欲しいと思っていますから、むしろ、ありがたいです」

「そうですね。なかなかロケの現場を見せて貰える機会はないですからね」

 次いで加奈子が追従すると、菊一郎はドヤ顔を決めて陽子を見やる。

 直後、陽子の高速の拳骨が菊一郎の頭頂部に突き刺さった。

「小池! 一応わしはお前の雇い主じゃぞ!! それを軽々しく叩きおって!」

 わずかに目じりに涙を溜めつつ抗議する菊一郎だが、陽子は無情にも無視して母親たちに感謝の言葉を口にする。

「急なことばかりで、お二人にも、お嬢さんたちにもご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません。いずれ、この埋め合わせはさせていただきます」

 陽子の丁寧な言葉に、加奈子が首を左右に振った。

「いいえ、由紀恵さんも言ってましたが、青海島に招待していただけたり、ロケを見る機会を与えていただいたりと、貴重な体験を娘にさせてあげられるのは榊原家の皆さんのお陰です。それに、以前からうちの娘と仲良くしてくださっている穂乃香さんには感謝の念に堪えないくらいです」

 加奈子は柔らかな笑顔を添えて、陽子に本心を告げると、由紀恵がうんうんと同意して頷く。

「うちの娘も、穂乃香ちゃんが大好きなようですし、それに芋植えの遠足の時には、森に入り込んだうちの娘を助けていただいてもいますし、感謝しかありません……本当に素敵なお嬢様で、うらやましい限りです」

 由紀恵が改めて頭を下げると、穂乃香を褒められたことだけで浮かれた菊一郎が空気を読まないドヤを解き放った。

「ほれみろ、小池! 穂乃香の評価の高さを、我が孫ながらこれほど皆に愛され……ぐほぉっ!」

 鼻をどこまでも高くして囀られていた菊一郎の言葉は、容赦なくその腹部にめり込んだ陽子の拳が途絶えさせる。

「わし……やとい、ぬ……し」

 苦痛に表情をゆがめながら、主従関係を強調する菊一郎だったが、陽子は冷めた視線で一瞥すると、身にまとうスーツの袖をまくって時計を確認した。

「そろそろ、ロケチームを乗せた船が接岸すると思いますから、お子さんもつれて出迎えに行きましょう」

 陽子の提案に、由紀恵も加奈子も笑顔で頷く。

 菊一郎の言動と陽子の反応に、榊原家における孫バカの扱い方を学んだ由紀恵と加奈子もスルーする方向で対応を決めていた。

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