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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第三章 幼女と夏の孤島
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071 幼女、友達を褒める

 前触れのないゆかりの突然の告白と宣言に穂乃香は目を丸くした。

 それでも、お嬢様が付いていたり、姉妹ゴッコの呼び方だったことで、奈菜のことをユラに言われた時の衝撃に比べれば、多少いなせるレベルだったお陰で、穂乃香は大きく動揺せずに聞き返すだけの余裕が残る。

「どうしたの、ゆかり……お姉ちゃん?」

 様子をうかがう様に、上目遣いで尋ねる穂乃香に、ゆかりは真剣な目で告げた。

「貴女はとてもすごい子だと思うし、実際にすごいけれど、でも貴女はまだ小さな女の子なの。だから、何でもかんでも抱え込まないで、頼りないかもしれないけれど、私たち大人を頼って欲しいの」

「……ゆかりさん」

 なぜ、急にそんなことを言い出したのか、穂乃香は一つの可能性を思い浮かべる。

 ユラの能力によって完全に書き換えられた記憶だが、それでも、心や体のどこかに感触のようなものが残っているかもしれず、それが影響をしているのかもしれないと思うと、不思議と納得できた。

「心配してくれてありがとう。何かあれば、ちゃんと相談するよ」

 真剣な表情で応えた穂乃香に、ゆかりは感極まって抱き付く。

「うわっ!」

 ゆかりにギュッと抱きしめられ、驚きの声を漏らす穂乃香に耳にささやくような声が響いた。

「約束ですよ。絶対私達……私が穂乃香様をお守りしますから」

 体を介して伝わってくる体温だけでは無いぬくもりに、穂乃香は笑みを浮かべて頷く。

「うん、ゆかりお姉ちゃん」

「物わかりの良い妹で嬉しいですが、いざという時は秘密にしそうで少し心配です」

 チクリと刺さる言葉を最後にゆかりの体が、穂乃香から離れた。

 穂乃香は今度は苦笑を浮かべて「そうならないように努力します」と返す。

 いざとなると気が回らなくなる自分の性質をよく理解している穂乃香は、それを言うのが精いっぱいだった。


「穂乃香ちゃん!」

 砂浜からホテルへと続く道を、奈菜が大声で手を振りながら駆け寄ってきた。

「奈菜ちゃーん、転ばないように気を付けて!」

 穂乃香はサンダル履きで駆けるやや足元が怪しい奈菜に注意を促すと、奈菜は嬉しそうに「はーーい」と返事をしつつ、早足に切り替える。

「奈菜さんは素直過ぎますね」

 ボソッとゆかりの零した言葉に、穂乃香はギクリと肩を震わせた。

 ユラの指摘もあり、前世でも男の言いなりになって身を崩す女性を見た経験もある穂乃香としては、奈菜がそうならないように心掛けるしかないと誓う。

 そんなことを誓っていると、目の前まで奈菜がトコトコと歩み寄ってきた。

「穂乃香ちゃん!」

 嬉しそうに微笑んだ後で、視線を落とした奈菜は、何かを期待するように上目遣いで穂乃香を見詰め始める。

「えーと、水着可愛いね。奈菜ちゃんによく似合ってるよ!」

「そうかな?」

 もじもじと両手の指を動かし合わせながら、頬を染めて視線を足元に落とす奈菜は、とても嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。

 奈菜の水着は上下のセパレートになっていて、胸元からお腹までを覆う黒いトップスには可愛らしいポップな英字が踊り、アンダーには白黒のストライプのスカートが付いている。

「うん、なんだか、いつもの柔らかい感じの奈菜ちゃんと違ってカッコイイよ」

 穂乃香の正直な感想に、奈菜はガバッと勢いよく顔を上げ、その視線がぶつかり合った。

 直後、水着で露出した奈菜の白い肌が、はっきりとわかるほど一瞬で赤くなる。

「か、か、か、カッコイイ!?」

 思いもしなかった感想に、驚きと動揺と緊張と喜びと……奈菜にも把握できない程の感情が入り交ざって、尋常じゃない速度と回数で瞬きを繰り返した。

 そこへ、やや遅れてやってきた加奈子が、ポンと奈菜の肩に手を置く。

「落ち着きなさい、奈菜」

「おひゃあ……お母様!」

 上擦ったせいでうまく発音できなかった奈菜は、改めて言い直いたが、それがツボに入った加奈子はくすくすと笑い出した。

「もう。もう少し落ち着きなさい」

「は、はい」

 恥ずかしそうに視線を落としてしまった奈菜を加奈子は優しく抱き寄せて頭を撫でる。

「別に気を落とすことはないのよ、お友達に褒められるのはすごく嬉しい事だもの」

 加奈子に言われて、奈菜は遠慮がちに視線を上げた。

「それにお母さんは奈菜を笑ったわけじゃなくてね。穂乃香ちゃんに褒められて、奈菜の嬉しいが体全体から溢れ出したのをみて、ああ、私の娘は可愛いなって思って微笑んでしまったのよ」

 淡々と加奈子が口にした言葉は、彼女が思ったままのものだが、それゆえに、奈菜は再び赤面してしまう。

 嬉しい気持ちがあふれ出してたなんて言われ、奈菜の頬も熱くなるし、胸の内もゾワゾワとくすぐったくなった。

 しかし、その反応は加奈子の笑みを再び深めるだけの悪循環のきっかけになってしまう。

「本当に私の奈菜ちゃんは可愛いわね」

 しみじみという加奈子に、穂乃香が「本当に可愛いです」と乗っかると、奈菜はついに頭から蒸気を吹き出しそうなほど顔を赤に染めてフリーズしてしまった。

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