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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第二章 幼女と森のヒト
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040 幼女、友達と遊ぶ

 地下室を後にして、穂乃香の自室に戻った三人は、図鑑やら辞書やらを部屋の中央に敷かれたフカフカのカーペットの上に広げて、魔女狩りについて調べ始めていた。

「じがいっぱいだぁ」

「すごい、穂乃香ちゃん、読めるの?」

「うん」

 辞書の文字の多さに驚くみどり、それを平然と読んでいる穂乃香と、読めている事実に驚く奈菜は、三者三様でカーペットの上に座っている。

 当初は、自分が魔法を使えることを伝えるだけのつもりだった穂乃香だが、奈菜の突っ込みによって、魔法が現在では『存在しないモノ』である事実に遅まきながら辿り着き、奈菜の母からもたらされた『魔女狩り』というキーワードについて、調べていた。

 もちろん、異常な習熟速度で日本語を覚えている穂乃香と違って、まだ幼い奈菜とみどりは戦力にはならない。

 それでも隣で一緒にいてくれるだけで、穂乃香は心強かった。


「んーー。国語辞典だと、魔女しか載ってないかぁ」

 穂乃香は一通り、魔法使い、魔法などの近しい言葉も検索してみたが、国語辞典、少なくとも穂乃香の与えられたものでは『魔女狩り』について知ることができなかった。

「ねぇ、奈菜ちゃん」

「なに、穂乃香ちゃん?」

「『魔女狩り』について、どんなことを知ってる?」

 調べてもわからなかった以上、穂乃香としてはそのワードが飛び出した奈菜から、少しでもヒントを貰おうと、ストレートに問いかける。

 だが、奈菜も魔法使いがいないことへの問答の答えとしてそれを聞いたために、それ以上『魔女狩り』について詳しく知ろうとは思わなかった。

 それゆえ、折角、穂乃香に求められているというのに、奈菜は続く言葉が自分の中にないという事実に直面してしまう。

 あの時もっと聞いておけばと後悔を覚える奈菜だったが、穂乃香は別段咎める素振りも見せずに「ああ、ごめん。自分で調べるね」と笑みを見せた。

 責める要素はまるでない穂乃香の態度に、だが、奈菜は苦い思いを感じて、自分の無力を噛みしめる。

 次こそ答えると、胸に去来する燃え上がるものを感じている間に、穂乃香はすでに思考を切り替えていた。

「よし、じゃあ、調べ物はおしまい。何かゲームでもしようか?」

「え、げーむ? なにするの?」

 地下室から抱きかかえてきたアネモネのぬいぐるみを自分の隣に座らせてから、みどりは嬉しそうに表情を輝かせる。

 真剣な様子の穂乃香と奈菜に遠慮していたみどりだが、ゲームを始めるとあれば、もちろん全力参加の構えだ。

 そんなワクワク顔のみどりの前に、穂乃香は新品のトランプを取り出して見せる。

 プラスチック製のケースに仕舞われたそれは、背面にプリティーウィッチ・フローラルのイラストがあしらわれた最新のプリッチトランプだ。

 ちなみに、エースを始め、絵札やジョーカーもプリッチや敵役たちで構成されている。

 プリッチグッズは、菊一郎からのオーダーメイドも少なくないが、このトランプは、おもちゃメーカーから発売されている正規の市販品だ。

「わぁ、ぷりっちのとらんぷだ!」

「ふふふーーこれで遊ぼう!」

「うん!」

 既に気持ちを切り替えて、トランプに意識を向けるみどりと穂乃香は、返事を返さなかった奈菜に同時に視線を向ける。

 奈菜は自分に視線が集まっていることに気付いたのに、直前の無力感でうまく反応できない。

 すると、みどりが無邪気な笑顔を向けて「ななちゃんもやろう!」と誘ってきた。

 次いで穂乃香も「どんなゲーム知ってる?」と微笑み掛けてくる。

 そんな二人から掛けられた優しくも暖かい声に、奈菜も笑みを浮かべると、自分の知るゲームを上げ始めた。


 穂乃香は奈菜とみどりと共にトランプに興じ、神経衰弱ではみどりの記憶力の良さ、ババ抜きでは奈菜のポーカーフェイスと、新たな一面を発見しながら、お別れの時間までを楽しく過ごした。

 勝率はさすがに穂乃香が高かったものの、うっかりミスや案外顔に出る穂乃香は、負けることも少なくない。

 結果、誰かが負けすぎるということもなく、和やかにゲーム大会は終焉を迎えた。

「それじゃあふたりとも、また幼稚舎でね」

 小さく手を振って挨拶をする穂乃香に、送り届ける為に用意された車に乗り込む奈菜とみどりが笑顔で手を振り返す。

「ほのかちゃん、またねー!」

「今日はお世話になりました」

 おおきく手をふるみどりは、その横で深々とお辞儀をした奈菜に気が付いて、慌ててそれを真似た。

 お尻を空に突き上げるようにぴょこんと頭を下げたみどりは、勢いのままによろけてしまうが、それを慌てて奈菜が支える。

「わ、わわ」

「あ、大丈夫、みどりちゃん?」

 体を支えられ、えへへと恥ずかしそうに笑うみどりは「ななちゃん、ありがとう」とお礼を口にした。

「もう、みどりちゃん、きをつけてよ?」

「はーい、ごめんなさい」

 困り顔で言う穂乃香に、みどりは素直に謝る。

 穂乃香は「ほんとしょうがないなぁ」と腰に手を当てて、ポーズを決めた。

 それが、プリッチのアネモネ付きの妖精さんの決めゼリフだと気が付いたみどりが嬉しそうに「ようせいさんのせりふだ!」と指摘する。

「ふふふ」

 穂乃香は何処か得意げに笑い、奈菜が「確かに、今そっくりでした!」と演技力を賞賛すれば、それだけで三人は盛り上がった。

 にぎやかに声を弾ませながら、明日、幼稚舎での再会を約束した三人は手を振りあう。

 そうして、榊原邸を離れていく奈菜とみどりが乗り込んだ車が見えなくなるまで、穂乃香は手を振り続けた。

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