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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第二章 幼女と森のヒト
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028 幼女、決死の覚悟で救出する

 ガゴオオオオオオン。

 猛烈な重い物同士がぶつかる音がした直後、姿が一瞬消えた穂乃香の体が、森の人の胴部にめり込んでいた。

 映像を横に倒すと木の上に穂乃香が着地したように見えるその光景は、実際は90度角度が違う。

 物理法則という観点で見ても、幼い少女の攻撃という観点でみても異常な状況だが、受け手もまた異常だった。

 音から判別すれば、ものすごい衝撃が襲来したはずなのに、森の人はわずかにたわんだだけで、ものすごい重量がありそうな穂乃香の攻撃を受け止めている。

 証拠に「この受け止める弾性が厄介ね」と、穂乃香は忌々しそうに愚痴を言い放っていた。

 そして、その言葉の直後には攻守が入れ替わる。

 穂乃香の着地地点の皮膚というよりは樹皮が、ボコボコと変形の予兆を見せた。

「き、緊急回避!」

 無理矢理風魔法で強烈なダウンフォースを引き起こした穂乃香は、その風に圧されて真下へと急速落下させ、寸前まで穂乃香の体があった場所を、着地点から急に生え出した数本の木の槍が容赦なく貫いていくのを見る。

「殺意がたか……ぐっ」

 文句を言いかけた穂乃香の体に、地面に衝突したことで生じた痛みが、一瞬で駆け抜け、瞬時に声を奪われたことで、愚痴が強制終了した。

「ひぐっ」

 体が幼いせいで、激痛に反応した身体が大量の涙を、穂乃香の瞳に送り出し、視界が歪む。

 それを無理やり腕をこすりつけて拭い去ると、衝撃の名残で未だうまく呼吸ができない体を無理やり動かして、穂乃香はみどりのもとへと駆けた。

 だが、森の人はそれを容易く許したりはしない。

 殺意のこもった攻撃が次から次へと穂乃香の頭上から降り注いだ。

 穂乃香はその鋭い攻撃を触れるか触れないかのギリギリで、前へ飛び、横に転がり、どうにか掻い潜っていく。

「うわぁ、泥だらけだ……怒られるかなぁ」

 状況は窮地にもかかわらず、穂乃香はまるで余裕だと言わんばかりに汚れた服を見て溜息を零した。

 そこへ、数本の木の槍が容赦なく迫る。

「でも、まずは生き延びないと、怒られることも出来ない、よねっ」

 しゃべりながら、穂乃香はギリギリのタイミングで飛び退いて、見事みどりのそばにまでたどり着いた。

 すると、不思議なことに、木の枝の容赦のない攻撃がピタリと止む。

 みどりを傷つけないためかもしれないが真相は謎だ。

 だがそれでも、穂乃香にとってまたとないチャンスに違いない。

 木の枝を警戒しながらも、みどりの体に触れた穂乃香は「みどりちゃん、大丈夫?」と声を掛けた。

 しかし、みどりは人形のように直立の姿勢のまま、何の反応も示さない。

 それは触れてみたところで変わりはなく、穂乃香はその脚に絡みついた太い枝に視線を向けた。

「原因はこれっぽい……ね」

 穂乃香はみどりの足に絡みつく太い枝に手をやって思考を巡らす。

 これを断たねばならないが、今の穂乃香にちぎることなどできるわけがなかった。

 炎の魔法ならば、あるいは焼き切ることができるかもしれないが、間違いなくみどりを巻き込んでしまう。

 そこまで考えて、穂乃香は一つ植物の魔物に有効な手立てを思い出した。

「そういえば、あれが使えるかも……」

 かつて偶然の中で見つけた魔法を脳裏に動いたところで、穂乃香は躊躇なくみどりを捕らえる木の枝に手を伸ばす。

「何が役立つかわからんものよ」

 知らずかつての口調で呟いた瞬間、穂乃香の触れた先から木の枝が急速に白く枯れて朽ち始めた。

 穂乃香が木の枝を握り込むと、パキッと乾いた音を立てて砕け落ちる。

 ばらばらと残骸をまき散らしながら、木の枝が地面に落ちたところで、急にみどりの目に光が戻った。

「ありぇ?」

 舌っ足らずの声で、首を傾げたみどりだったが、その視界は急激に荒れ狂うことになる。

 みどりを奪われたことに感付いたらしい森の人が暴れ出したのだ。

 次々と殺意を纏った木の槍が、みどりと穂乃香の区別なく迫る。

「ちょっまっ、みどりちゃんもいるのにっ!!」

 回避するにも二人分では、穂乃香の負担は想像を絶するものになっていた。

「え、ほの、かちゃ……え? はうっ」

 無理やり突き飛ばし、急に腕を引いて立ち上がらせ、みどりが悲鳴をまき散らす。

 それでも、枝から逃げ切らなくては、2人に生還の道筋は生まれないのだ。

「仕方ない。みどりちゃん、目をつぶって!」

「え?」

 訳も分からず言葉を詰まらせたみどりの体が、ふわりを浮力を得た直後、穂乃香が通ってきた通路に向かって、高速で飛び退っていく。

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ……」

 遠ざかるみどりの悲鳴に、無事を祈りつつ、穂乃香は覚悟を決めて森の人を見た。

「森の人、あなたも生きるために人を糧にするのはわかる。けど、それを許すわけにはいかない」

 穂乃香は森の人に向かって、視線を逸らすことなく言い切る。

 そこへ、怒り狂った木の槍が容赦なく迫ってきた。

 またも紙一重でかわした穂乃香は、今度は避けずに通り過ぎた枝へと手を伸ばす。

 直後、みどりを捕らえていた枝のように、穂乃香が触れた場所が瞬時に枯れて崩れ去った。

「いける……けど、問題は魔力が持つかどうかね」

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