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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第一章 幼女と新たな人生
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020 幼女、新たな番組を知る

 入園からはや一カ月、四月の終わりゴールデンウィーク目前となると、クラスの中にもある程度のグループができ始めるのだが、穂乃香のクラスは少し特殊だった。

 女子にも男子にも分け隔てのない穂乃香は、結果、クラスの皆から慕われている。

 というのも、登園するとすぐにある制服から園内着であるスモックへの着替えでは、穂乃香は手早く着替えてしまうと、皆の手伝いに回るのだ。

 入園してしばらくで、なかなか着替えるのが苦手な子も多い中、率先して手伝う姿は、周囲の子にも影響を与え、できる子はできない子を手伝い、できない子もできる子を見習って少しずつだが着替えを皆が手早くこなせるようになっている。

 さらに、9時から10時と定められた通園時間も、穂乃香が9時ちょうどにやってくるので、自分の子に着替えを教えてくれた、あるいはお手伝いを率先してするようにしてくれた、話題の穂乃香を見ようと、9時近くに人が集中するようになり、今ではあかねのもも組だけが異様に揃うのも早く規律の整ったクラスとなっていた。

 実感だけでなく、親も褒める穂乃香は、皆の中で凄い子という評価になる。

 だというのに、穂乃香は威張ることもないし、怒りもしないのだ。

 いつも優しくて、穏やかな雰囲気を絶やさないそんな穂乃香に人気が出ないはずがないのである。

 しかも、老人級の経験値を持つ穂乃香は、自己主張の強い子には道を簡単に譲ってしまうし、その上で褒めたり応援したりとフォローも欠かさないのだから、どこからも不満が湧いてこないのだ。

 自然とクラスの人気を独り占めしてしまう。

 結果、空気となりかけているのはあかねだった。

 こっそりと「先生は私なのに」と零したのは一度や二度ではない。


「なぁなぁ、穂乃香はどんなテレビ見るの?」

 着替えを手伝ったことで仲良くなった直人が、穂乃香に無遠慮に尋ねると、穂乃香にべったりの奈菜が嫌そうな顔で「穂乃香ちゃんでしょ、呼び捨てはやめて」とプンプンと怒り出した。

 その様子に穂乃香は奈菜を軽く宥めると直人に「私は気にしないけど、ちゃんとかさんとかつけないと嫌だなって思う子もいるから、気を付けた方がいいよ、直人君」と柔らかく微笑む。

「そうかー、奈菜ちゃん、穂乃香ちゃん、ごめん」

 直人が素直にそう改めると、奈菜は満面の笑みで「うん」と大きく頷いて見せた。

 改善してくれれば、それでいいらしい。

「で、どんなテレビ見るか聞いてもいい?」

 改めて質問する直人に、穂乃香は「テレビはあんまり見ないかな。うちはお爺様に見ていいか、確認を取らなきゃいけないから」とさらっと答えると、奈菜と直人が顔を見合わせた。

「え!? 穂乃香ちゃん、テレビ見ないの?」

「それ、つまんなくないの?」

 思いのほか食いつかれたことに多少驚きながら、穂乃香は「でも」と唇に人差し指を当ててみせる。

 その仕草に、2人が目を奪われたところで、穂乃香は「プリティーウィッチなら見てるよ」と微笑んだ。

「あ、あれかー」

 女の子向けの番組であり、あまり見ていない直人は露骨に表情を暗くしてしまった。

 一方で、奈菜は目を輝かせる。

「えーーー! 穂乃香ちゃんもプリッチ好きなの?」

「うん」

「わぁ~」

 奈菜はまた新たに自分と穂乃香の共通点を知って嬉しそうに声を弾ませて、感嘆の声を上げた。

 一方、直人はさらに意気消沈してしまう。

 それを穂乃香はすかさずフォローに行った。

「直人君はどんなのが好きなの? お爺様に聞いて見てみようかなぁと思うんだけど」

「え? な、直人君、私も知りたい!」

 穂乃香の言葉に、奈菜は慌てて追従する。

 何しろ新たな穂乃香とのお揃いを得るチャンスなのだから、見逃せるはずもなかった。

「僕は、変身ヒーローのアーマードファイターが好きなんだ」

「へぇ~」

「今はさ、これまで出てきたアーマードファイターたちがいっぱい出てくるお話でさ、お父さんがお祭り番組って言ってた」

「お祭り番組かぁ」

「そうなんだ、あのね……」

 声を弾ませ語りだした直人の説明に、適度に相槌を打つ穂乃香は、奈菜のフォローも忘れない。

 奈菜との共通知識であるプリッチのネタを混ぜることで、うまく奈菜の興味を引き出しながら、一方的な直人の解説を興味深いモノへと変えていった。

 そして、聞き手の妙に支えられ、気持ちよく直人が語り切った時には、3人を中心にクラス中が集まっていた。

 そのころには、変身ヒーローや戦隊ヒーロー、プリッチの様な特撮系の番組だけでなく、数多くのアニメ作品のタイトルが周囲から上がってなかなかの盛り上がっている。

 その中心にあって、穂乃香はふむふむと好奇心を顔いっぱいに張り付け興味深そうに皆の言葉を聞いては、ゆかりに視聴できるか確認してみようと心の内で誓うのだった。

 もっとも、菊一郎と穂乃香護衛隊の『お嬢様には相応しくない』判定で、そのほとんどは脱落してしまうのだが、この時の穂乃香にそれを知る術はない。

 プリッチの様な運命的な出会いを密かに期待しながら、穂乃香は心のメモ帳にさらにメモを書き足し続けるのだった。

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