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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第四章 幼女と誕生会
113/812

113 幼女、視聴する

 ジーーーという機械音とともに、正面のスクリーンに、プロジェクターが動き出したのを伝える光が映り込む。

 いよいよ、始まるのだと、スクリーンを見る全員が理解したところで、白一色だった画面に、大きくまるで囲まれた数字が表示された。

 5、4、3……徐々に小さくなる数字に合わせて、それぞれの視線がスクリーンに集中していく。

 そして、カウント1が表示された直後、画面全体が一瞬青一色に切り替わってから、森の光景が映し出された。

 画面の端を白い靄で縁取られた映像は、ただそれだけの加工にもかかわらず、実際に現場を見ていた穂乃香たちでさえ、不思議な場所に迷い込んだような錯覚を覚える。

 木々の隙間を歩むアネモネ姿の千穂の足元がアップで写され、その足の運びだけで不安感が伝わってくる。

 ザッという効果音の後、足を止めた足元からスゥッと千穂を中心に捉えつつ、バストアップへと映像が切り替わっていった。

『ここは?』

 不安そうな表情で千穂が周囲に視線を向けたところで、穂乃香の口元だけが映し出され、ニヤリと口角を上げる。

 再び画面の中央に千穂が戻り、映像が引きに変わると『みんなは?』と周囲を見回す様にキョロキョロと様子を窺いだした。

『ようこそ、魔女の娘』

 口元のアップから徐々に顔全体が映し出された穂乃香が、圧倒的な存在感を纏って、見下すそうな視線を向ける。

 圧倒的存在感を放つ穂乃香のアップでシーンは終わりを迎え、主題歌と共にオープニングが流れ始めた。


「マジヤバ、穂乃香ちゃん、すごい存在感」

 思わず感想が、単語区切りになるクルミに、アリサが仕切りに頷く。

 実はこのスペシャル回からオープニングでも、何シーンか映像の変更が成されているのだが、メインキャストの五人が注目するのは登場したばかりの穂乃香についてだった。

「放送用に編集した映像は初めて見たけど、すごいね、あの時以上に感動したよ」

 キラキラと目を輝かせる千穂に、穂乃香は「あ、ありがとうございます」と表情を引きつらせて頷く。

 その左右ではみどりも奈菜も画面に釘付けだった。

 そんな二人を抱きかかえる茉莉と彩花も、2人が気を反らさないよう極力反応をしないが、それでも千穂の意見には頷いている。

 少し離れたところでは、幼女たちの食いつき具合に手ごたえを感じたあおいは、CGチームに無理を言った甲斐があったと一人頷き、ゆかりやエリーたち使用人組は穂乃香の姿に色めきだっていた。

 そうして、一同の意識が再びスクリーンに集中したタイミングで、オープニングが終わり、本編映像に切り替わる。


 森の中で威厳を放ちながら宙に浮く穂乃香扮する精霊の姫が、興味深そうな色を目に宿して千穂演じるアネモネに声を掛ける。

『ここは精霊の住まう森、なぜ立ち入ったかを問う前に……』

 そこで目を細めた精霊の姫は『お前に足を踏み入れる資格があるか見せて貰おう』と、口の端をわずかに上げた。

 喋る穂乃香の口元をよりアップにすることで、その細かい演技に焦点が当たる。

 役者であるメインキャストの五人は、現場で見たテストよりも際立つように切り取られた穂乃香の演技に目を奪われていた。

 そんな皆が引き込まれた画面の中で、アネモネが戸惑いと焦りを感じさせる追い詰められた表情で『ま、待って下さい!』と訴えかける。

『貴女は……いえ、貴女が精霊の姫なのですか?』

 必死さを感じさせる迫真のアネモネに対して、精霊の姫はより笑みを深くした。

 精霊の姫は、わずかな口元の変化だけで、試そうとする意志や意地の悪さを匂わす。

『我が何者か知りたくば、試練を越えよ。話はそれからだ』

 精霊の姫の揺るがないと言わんばかりの断言に、アネモネは表情を曇らせ、唇を噛みしめた。

 そんなアネモネを愉快そうに見つめた後で、精霊の姫は声を一つ低くしてトドメの一言を放つ。

『……もっとも、それからがあるとは思えんがな!』

 言い終えた精霊の姫の目が輝きだし、閃光を放ったところで、アイキャッチに切り替わった。


「いや、すごいね、ふたり……」

「目を離せません……でした」

 クルミは表情を引きつらせ、アリサは真剣な表情で声を漏らす。

 茉莉、彩花は、みどり、奈菜に引きずられるように、画面に釘付けになっていた。

 一方で、ユラの力で乗り越えたシーンが迫っていることに、穂乃香は心穏やかではない。

 とはいえ、この自分の知るメンバーだけの鑑賞会で耐えられないなら、本放送後はひきこもる以外の選択肢がなくなってしまうので、穂乃香は羞恥心に耐える修行と割り切って、スクリーンを睨み付けた。

 膝の上の穂乃香の動揺は感じられた千穂だが、とはいえその心中までは理解できるはずもない。

 ただ、穂乃香の意識がスクリーンに向いた様子に、変に声をかけて穂乃香に反応を返されてしまうと、これから映し出される大事なシーンを見逃す可能性を考えて、千穂はあえて行動を起こさず見守ることに決めた。

 何しろ、これからのシーンは、穂乃香演じる精霊の姫に誘惑されるのだから、千穂はその仕上がりが楽しみでならない。

 次のシーンに対するイメージが真逆な穂乃香と千穂は、アイキャッチを挟んでBパートが始まるタイミングで、口を真一文字に結んで目を瞬かせた。

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