表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第四章 幼女と誕生会
112/812

112 幼女、試写を観る

「ホントにご迷惑をおかけしました」

「反省してます」

 茉莉、クルミ、アリサの目の前で正座をさせられた千穂と彩花が、手をついて深々と頭を下げる。

 穂乃香も着替えに移動したおかげで、完全に冷静を取り戻した千穂と彩花は、予期せぬ自分たちの暴走に、ただただ反省の色を示し、頭を畳に擦り付けていた。

 そんな二人の態度に、代表して茉莉が溜息をついた後で口を開く。

「一応、ビジネスライクな視点で言うと、榊原家は私達の番組のスポンサーなの、そして、穂乃香ちゃんはそこの箱入り娘、会長さんの大事な大事な孫娘なの」

「「……はい」」

 神妙に落ち込んだ様子で返事を返した二人に、茉莉は仏心を出してしまった。

「まあ、あんなに大きい声で好きって言われて舞い上がる気持ちはわからなくないけども……」

 瞬間、千穂が顔を輝かせる。

「だよね! 仕方ないよね!! 不可抗力だよね!!!」

 徐々に力強くなる発言に、クルミがいつの間にか手にしていた大きなハリセンが容赦なく千穂の頭に叩き込まれた。

 パァンという軽快な音とともに、千穂の「ぎゃふっ」という間の抜けた声が響く。

「まつりん、隙を見せない」

「面目ない」

 クルミの指摘に、茉莉は眉を寄せて頭を下げた。

「バカアリサも、後でどついたげるからワクワクしない」

 クルミはその場でくるりと体を回転させると、背後に控えていたアリサに言い放つ。

「えっ!? ちょ、何を言ってるんですか、ワクワクしてませんよ! いえ、まぁ、興味はありますけど……」

 白い厚紙に黒のビニールテープで制作されたクルミお手製のハリセンにちらちらと視線を向けながら言うアリサの発言には、少々説得力が欠けていた。

 そんなアリサの反応を一瞥すると、クルミは今度は彩花にハリセンを向ける。

「こっそり笑ってないで、彩花も反省しなさいよ~」

 ポコッと軽い音を立てて、彩花の頭にハリセンを落としたクルミは茉莉に再度向き直った。

「じゃあ、まつりん、後は任せたわ」

「もう、クルミが全部やってよ」

 仕切り切った上で、自分に主導権を振ってきたクルミに、茉莉は深いため息をついて見せる。

「キャラって大事だと思うの、私、可愛い担当だし?」

 言いながら首を傾げるクルミは完璧に可愛い顔を作り上げていた。

 その表情に、茉莉は再び溜息をつく。

「めんどくさいだけでしょう?」

「えー、クルミわかんなーーい」

「今更ですよ、クルミちゃん」

 茉莉の不平の籠った視線を、ぶりっ子演技でかわしたクルミに、呆れ顔でアリサがツッコミを入れた。

 そのタイミングで、新たな人物が状況に首を傾げながら顔を出す。

「あんたたち、なにしてんの?」

「あ、あおいさん」

 茉莉の声に、ひらひらと手を振ってこたえると、あおいは下げていたカバンを叩いて見せた。

「マスター上がったから、ダビングして持って来たわよ」


「えー、では、これから、上映会を始めます」

 少し前まで穂乃香の誕生会が開かれていた大広間は、畳の上に座椅子が並べられ、大きなスクリーンとプロジェクターが設置され、マイクを握るあおいに当たるスポットライトまで準備されていた。

「榊原家、マジぱねぇ」

 思わず感想を漏らすクルミは、目をぱちくりと瞬かせながら設置された機材の数々に視線を向ける。

「さすが、だよね」

 うんうんと頷く千穂はちゃっかりと自分の膝の上に穂乃香を確保していた。

 戻ってきたみどりは茉莉、奈菜は彩花がそれぞれ膝の上に載せている。

 熾烈なジャンケンによる戦いがあったことを見せない5人は、子役とはいえど立派に女優だった。


「え~、今回は穂乃香さん、奈菜さん、みどりさんにも出演してもらった秋の1時間スペシャルのマスターが上がりましたのでここで、先行上映させていただきたく思います」

 あおいはそこまで口上を言い終えると頭を下げて、スクリーン前から離れる。

 用意されていた自分の席に腰を下ろしてから、あおいが手を上げて「それじゃあ、お願いします」と合図を出した。

 緩やかに光源が絞られていくが、穂乃香はともかくみどりと奈菜を気遣って、辛うじて部屋全体が見渡せる程度の明るさで止まる。

「みどりちゃん、大丈夫?」

 暗くなったところで、膝に抱えるみどりに優しく茉莉は声をかけた。

「う、うん、だ、だいじょうぶ、だよ?」

 若干表情を引きつらせて、みどりはギュっと茉莉の服の袖を握りしめる。

 その強がる姿に、茉莉は安心させるように優しく頭を撫でた。

「今から流れるのは、この前一緒に撮ったお話の映像だから、楽しかった思い出を思い出しながら見ようね」

 茉莉の語りかけに、みどりは「うん」と頷きながら袖を掴む手に力を籠める。

 一方、彩花は奈菜に語り掛けることなく頭を撫でていた。

 くすぐったくも心地よさそうに目を細める奈菜は、コテンと彩花の胸に頭を預ける。

 直後、奈菜を撫でる彩花の手の勢いが微妙に増すが、そんなことに気付くのは、手持無沙汰で観察しているクルミとアリサだけだった。

 そんな中で、穂乃香と千穂は微動だにしない程固まっている。

 片や映像になって放送されるという自分の姿に身構えて、片や膝の上に穂乃香がのっていることに緊張してと、固まる理由は違うが、ある意味で息の合っている二人にも、クルミとアリサの視線は向いていた。

「ねぇ、クルミちゃん……」

「仕方ないか……」

 そう言って頷き合った二人は、おもむろにアリサが正座から膝を崩し、クルミがその膝の上に座る。

「なんか、違う……」

「それは言わない約束よ、クルミちゃん」

 とりあえず真似てみた二人はお互いに深いため息をつくと、元通りそれぞれ座り直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ