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セーラー服の魔法使い  作者: 雨音静香
第四章 幼女と誕生会
108/812

108 幼女、鑑賞する

「うわ、うわぁ、うわ~~~~」

 言葉を失いながらも感動で声を漏らす月奈は目をキラキラと輝かせて、千穂たちのパフォーマンスに見惚れていた。

 各人が歌い踊る完成されたパフォーマンスに、大人たちですら引き込まれていく。

 そんな中、千穂が大きく手を振って見せた。

「じゃあ、みんな、いくよ~~~」

 高らかに上げた右手で、千穂が指を三本立てると、子供たちも大人たちも慌てて倣う。

 その様子を踊りながら確認していたクルミが、くるりと回転しながら、千穂の横に立って「せーーーのっ!」と掛け声を掛けた。

 直後、メロディーにノって、アリサが右手を高く振りあげて「スリー」と歌いながらジャンプを決める。

 次いで茉莉が左から右へと顔の前を横に指を動かしながら「トゥ」と笑みを浮かべた。

 最後に、彩花が唇に人差し指を当てて「ワン」と艶っぽい声を出す。

 三人のカウントダウンに合わせて、指を折っていた千穂が、歌をセリフで引き継いだ。

「かがやけ、魔法~~~」

 合わせて子供たちから「「「まほう~~」」」の声が掛かる。

 その様子に頷きながら笑みを交わし合った5人が、千穂を中心に茉莉と彩花が顔を寄せ、アリサとクルミがその前にしゃがみ込むフォーメーションを取って声を揃える。

「プリティーウィッチ・フローラル」


 一番の歌詞を歌い上げ、千穂たちがポーズを決めたところで、エリー達メイド組が自然な流れで背後から合流した。

 それに驚きの表情を浮かべる穂乃香を含む観客を他所に、メイド組は颯爽と白いエプロンを脱ぎ捨てると、黒いとんがり帽子をそれぞれが被る。

 瞬く間に魔女姿へと変身したメイドたちはそのまま千穂たちのダンスに加わった。

 さすがにいつの間に練習したのだとツッコミの言葉がのどまで出かかった穂乃香だったが、護衛隊の業務、任務の中にはプリッチ研究という冗談のような項目がある。

 それは番組の視聴や研究、討論だけに収まるモノではなく、主演を務める千穂たち五人で結成されたユニット『プリッチ・フラワーガールズ』もまた研究対象なのだ。

 つまり、研究の一環として『プリッチ・フラワーガールズ』の過去のステージ映像まで取り寄せていた護衛隊に死角はない。

 プロのバックダンサー顔負けの切れのあるダンスで、背後を固めながら、千穂たちのフォーメーションに合わせて完璧に合わせてくるエリー達に、千穂たちは驚きと呆れとが混ざった不思議な感情を抱かされた。

 だが、今、ステージを作り上げる仲間としてみれば、これ以上頼りになるメンバーはいない。

 自然と各人の動きに力が籠り、それがパフォーマンスの極みへ高まっていった。


(ヤバイ、体がノッてるっ!)

 普段よりも高く跳ねる体に、興奮で笑みを引き出されたクルミが、フィギュアスケート張りの回転ジャンプを決める。

 マーガレットの黄色い魔女衣装のスカートが着地したクルミを追って舞い降り、回転の余韻をツインテールの髪が躍りながらなぞった。

 驚くほど乱れていない呼吸で、クルミは次の見せ場を担当する茉莉へと視線を向ける。

 その視線を軽く頷きで受け止めた茉莉はしゃがみ込んでから、そのバネを活かして体を反らせながら、やすやすとバク宙を決めた。

「「おーー」」

 観客からの驚きの声を耳にしながら、茉莉は立ち上がりながらポーズを決める。

 その背後でいざという時の補助に回っていたメイドな魔女たちが、ダンスに合わせて離れていくのを気配で察しながら、茉莉はその完璧な動きに苦笑しつつ、アリサに視線を向けた。

 直後、アリサが披露するのはフラメンコを思わせるアレンジダンスである。

 軽快なステップを踏むアリサの足の動きに合わせて、赤いスカートが炎のように舞い踊った。

 そうして目を引いたところで、アリサは彩花に視線を飛ばす。

 受け止めた彩花が、艶やかな笑みを口元に浮かべて踊るそれは、日本舞踊に通じるモノだった。

 曲に合わせてアレンジされているために、彩花の動きは素早いのに、それでも手の動きが、足の運びが、振り返りの所作が、和を感じさせる。

 子供たちよりも大人たちの視線を引きながら、彩花はバトンを千穂に受け渡した。


 バトンを受け取った、千穂は普段はバレエ風のダンスを決めるところで、満面の笑みを浮かべながら穂乃香の手を取った。

 千穂以外のプリッチメンバーもバックダンサーのメイドたちも、一瞬驚きで動きを止める。

 その中で穂乃香を連れ出した千穂が、自らの肩に穂乃香の手を置かせると、ゆったりとした動きでワルツを踊り始めた。

 穂乃香の腰に手を当てながら踊る姿は、周囲のダンサーたちが動きを止めていることもあって、演出として観客たちの歓声を誘う。

 だが、アドリブで踊り出した千穂に、驚かされたダンサーたちは、この後の動きを想像できずに動き出せず、急に踊りに引き込まれた穂乃香は目を白黒させていた。

 観客だけが、穂乃香と千穂のダンスに酔いしれる。


「ごめんね、踊りたかったんだ」

 耳元に口を寄せ囁く千穂に、穂乃香はクリルクルリと体を回転させられながら苦笑する。

「仕方ないなぁ、千穂お姉ちゃんは」

「えへへ、ごめん~」

 穂乃香から苦笑混じりと言えど許しを得た千穂は、可憐に微笑んだ。

 そのまま、穂乃香を回転させながら体を離すと、固まったままの仲間たちへと振り返る。

「じゃあ、最後行くよー、せーーーの!!」

 大きめな声で、指示を飛ばした千穂は、そのまま観客たちに向き直って指を三本立てた。

 掛け声担当のクルミが、いち早く千穂にカウントダウンの呼びかけを取られたと察して渋い顔を見せるが、曲は止まらない。

 クルミには少し遅れたものの体に染みつくほど練習を重ねたアリサの体は自然と動き出していた。

「スリー!」

 ジャンプを決めながら腕を振り上げたアリサに次いで、茉莉が「トゥ」を決めた時には、皆が次の動きを思い描いて動き出す。

「ワン!」

 蠱惑的な笑みで彩花の声が響くと、千穂が目でクルミに合図を送った。

 その視線の意味を察してクルミは渋い顔を笑顔に切り替えると、一番前へと躍り出す。

「かがやけ、魔法~~~」

 クルミのセリフに次いで、千穂たちがポーズを決めて居並んで、声を揃えフィニッシュを迎えた。

「「「「「プリティーウィッチ・フローラル!」」」」」

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