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リングワールド  作者: seisei
序章
7/29

パレード

本日四度目の投稿です。

 ノエルとポリーンはその日スキルを発現させた。


 ノエルはポリーンが無事でいてくれと祈りながら兵隊達の後ろを走っていたら不思議な事にスキルが発現したらしい。


 ノエルが発現させたスキルは【剣術(聖技級)】と【ゴールデントリプル属性魔術(光・火・風)】と言うとんでもないスキルだった。


 ノエルが獲得した【剣術(聖技級)】だがこのスキルは神々によって聖技級と言うとんでもないクラスが与えられた特別なスキルだ。


 ここでスキルの種類やどのように分類されているかを少しだけ説明させて欲しい。


 ただスキルの世界と言われるほどリングワールドでは多種多用のスキルがある。スキルの種類や分類については必要な時に説明するのでここでは少しだけ細かく説明するがそんな分類もあるだと軽く聞き流して欲しい。


 さて、ノエルのスキル名の中にある『聖技級』とはスキルによって発揮される技の凄さを表していて技クラスといわれいるものだ。


 クラスは神様が付けてくださいるものだが残念ながら殆どのスキルにはクラス名が付かないのが普通だ。


 そこで全てのスキルの上下を判断する必要から付けらているのがスキルランクだ。スキルランクは前にも説明したがカーラ神殿の司祭が経験等から付けるもので絶対的な尺度ではない。


 さて、この技クラスには次のように七つのクラスがある言われている。


クラス |技の効果

――――+―――――――――

無し  |初心者〜熟練者の技

大技級 |達人級の技

範囲技級|爆発的威力の技

広域技級|強大で広範囲な技

聖技級 |災害級の技

伝説級 |生きる伝説

神域級 |神?


 先程も言ったがクラス名がスキルに付くのは特別なスキルだ。神の恩恵が高いスキルであり、普通クラス名が付くだけでランクは相当高く評価される。もちろん発揮される技もクラス名の付かないスキルよりも格段に凄い事が多い。


 ノエルの【剣術(聖技級)】に付された技クラスの『聖技級』は上表の通り「もはや人間?」って程とんでもない技を繰り出すスキルだ。


 ちなみにノエルの【剣術(聖技級)】のようにスキル名クラスが表記されたスキルを《クラススキル》と呼んでいる。


 神々の恩恵が付いたクラススキルである。『大技級』ですらスキルとしては非常に強力なスキルなのだ。


 更にノエルのスキル【剣技(聖技級)】の『聖技級』は括弧で括られているが、この括弧はスキルの技クラスが聖技級に固定されていない事を表している。


 逆に技クラスが括弧で括られていないスキル名、例えば【大技級岩石斬り】などは大技で固定されているスキルである。このスキルは最初から最後まで大技級であって変わる事はない。


 一方ノエルのスキルのようにクラス名が括弧かっこくくられるスキルは、例えば【岩石斬り(大技級)】ならクラスは大技級に固定されず変化するかもしれない事を表している。


 二つの違いは括弧の付いていないクラススキルは最初からそのクラスの技を出す事ができる反面今後それ以上のクラスの技になる事は無いって事だ。一方、括弧の付いたクラススキルはクラスが固定されておらず最初から括弧内のクラスの全てのスキルが使えないが、一方で場合によっては括弧内のクラスが更に上のクラスにクラスアップする事もあるスキルなのだ。


 可能性の問題だがノエルの【剣術(聖技級)】の場合は聖技級の上の『伝説級』にクラスアップするかもしれないって事だ。


 もちろん伝説級なんてスキルは御伽噺おとぎばなしのクラスであって実際に存在するのか俺は知らない。


 このようにクラス名が変化するかもしれないスキルを《クラスアップスキル》と呼んでいる。もちろんクラスアップスキルのほうが一つのクラスに固定されたクラススキルよりも高いスキルランクに評価される事は言うまでも無い。


 更にノエルの【剣術(聖技級)】は《包括スキル》と言う分類にもなるスキルだ。


 《包括スキル》とは簡単に言うと派生する技がどんどん増えて行くスキルだ。


 先程例に上げた【岩石斬り(大技級)】はクラスがアップして行く《クラスアップスキル》であるが【岩斬り】の技しか使えない単一技スキルである。


 一方ノエルの【剣術】は包括スキルで剣術に関するあらゆる技が使えるスキルだ。


 包括スキルではこんな感じで派生技のスキルを覚えて行く。


【剣術】

→派生スキル

 【突き】

 【籠手】

 【胴】


 何事も良し悪しもあるもので単一技の【岩斬り】スキルの場合は直ぐに【岩斬り】の技を使うことができるが包括スキルは技を覚えるのにそれなりの修行が必要なところだ。


 ただしノエルの【剣術】スキルはクラスが聖技級なので最初から大技級や範囲技級の凄い派生スキルが使えたはずだ。


 このようにノエルのスキルは何から何までチートなスキルだった。スキルランクは恐らくSSランクは下らないだろう。


 そんな凄い戦闘系のスキルを得たノエルがもう一つ発現させた魔術系のスキル【ゴールデントリプル属性魔術(光・火・風)】もまた何とも凄いスキルだった。


 彼が発現させた魔術系スキルは三つの包括属性魔術スキルが合わさったとてつもないスキルだったのだ。


 魔術には属性魔術の他に神聖魔術、召喚魔術、錬金魔術、精霊魔術などの多くの種類の魔術が有るが属性魔術は魔術の中では特に基本となるもので欠かせない重要な魔術だ。


 リングワールドにおける属性は【土・水・火・風・光・雷・聖・闇・空間・次元・時間・重力】の十二種類ある。


 属性魔術とはこれらの十二種類のそれぞれの属性の魔素であるマナを操る魔術なのである。


 この属性魔術のスキルだがリングワールドでは属性魔術は誰でも使える。【生活魔術】のスキルが無い俺でも念ずれば小さな火や息を吹きかける程の風を起こす事ぐらいはできる。


 一方でスキルが有ると魔術は実用レベルに一気に引き上げられ、目覚ましい効果を発揮する。


 しかし普通の人々が持つ魔術スキルはせいぜい【火弾】【風切り】【土弾】【水切り】のような単一の魔術を使えるスキルである事がほとんどだ。


 しかし本当の意味で魔術師と言えるレベルの魔術を使いたいのであれば【属性魔術(火)】スキルの様ないろんな派生魔術を操る事のできる包括属性魔術スキルを持っている必要がある。


 しかし最大の問題は包括属性魔術スキルは出現率がとても低いと言うことだ。


 ちなみにその発現率も属性によって下の表のように三種類に分かれいる。


属性  |名前  |発現率

――――|――――|――――――

地水火風|希少属性|千分の一

光雷聖闇|超属性 |数十万分の一

空間等 |神域属性|数百万分の一


 これらのどの属性を持つかで魔術師は以下のように呼び方が変わるのだ。


属性の種類|  尊称

―――――|――――――――

希少属性 |銀の魔術師

超属性  |金の魔術師

神域属性 |白金の魔術師


 包括属性魔術スキルの発現率はこのようにとても低いので二つの包括属性魔術スキルを同時に所有する確率は更に低くなるのは当然だ。


 ところが属性魔術は二つ以上を合成して使うと全く別物の強力な魔術になると言う特性がある。これを合成魔術という。


 合成魔術は、その混ぜ合わせる属性によって様々な魔法になる。


 例えば希少属性『火』と希少属性『風』を合成したファイアーボールは『フレアーインパクト』と言う十ある魔術の位階の中で四番目の第四位階の上級魔術になる。


 合成される一方の属性を希少属性よりも上位の超属性『光』にして希少属性『火』とを合成させたファイアーボールは『エクスプロージョン』という『フレアーインパクト』よりも三位階も上の第六位階の広域魔術になるのである。


 しかも合成魔術は複数の包括属性魔術スキルを持っているものしか使う事ができない。


 このように複数の包括属性魔術スキルを持つ事の希少性と合成魔術があまにも強力なために複数の包括属性魔術スキルを保持する者を特別にダブルと言ったりトリプルと言ったりして恐れ崇められるのである。


 ノエルが発現させた属性スキルは超属性の『光』と希少属性の『火』『風』の三つもの属性を操る事ができる包括スキルで、今後三種類の属性魔術を覚えるだけでなく三つの属性魔術を合成した様々なバリェーションの合成魔術を覚えて行く事ができると言うとんでもないスキルなのだ。


 このように超属性の包括属性魔術スキルを持ち三つの包括属性魔術スキルを持つノエルのような者はゴールデントリプルと呼ばれ数千万人に一人の確率でしか出現しない超チートスキルなのだ。おそらくゴールデントリプルもSSランクスキル以上のスキルと評価されるはずだ。


 ちなみに合成魔術だが、属性の二つを合成するだけでとんでもない威力に跳ね上がる。それが三つの属性を合成したら威力は数千倍になる。


 しかもトリプルの場合、三つのうち魔術の主属性を変更するだけで様々なバリュエーションの魔術になるのである。


 ダブルに比べトリプルがどれほど多様で凄い威力の魔術を使えるようになるか分かって頂けただろうか。


 ちなみにノエルのように剣術系包括スキルを持っていてそれが聖技級のクラスアップスキルである上にゴールデントリプルの包括属性魔術スキルを持つ者など皆無のはずだ。


 説明が複雑で申し訳ない。ノエルのスキルがあんまり凄いので力が入りすぎる。


 ははは。しかしこれだけでは無いのだ。驚くのはこれからだ。


 なんとポリーンのスキルはさらに桁外れなスキルだったのだ。


 彼女のスキルは【プラチナフォース属性魔術(空間・聖・光・水)】と言うとんでもないスキルだったのだ。


 そもそも発現率が数十万人に一人と言われる超属性魔術スキルの『聖』一つを保持しているだけで聖人と呼ばれ尊崇されるのだ。それほど超属性『聖』は希少な存在なのだ。


 ところがポリーンは発現率がほとんど無いほど低いと言われる神域属性魔術スキルの『空間』を持っているのだ。この一つのスキルを持っているだけでも彼女は特別な存在としてVIPに祭り上げられていたはずだ。


 そんな超レア属性を持っていて且つ超属性『聖』を同時に持つなどは奇跡としか言いようがない。


 彼女の場合は確率論などそもそも馬鹿馬鹿しいくなるような確率であまりにもありえない確率なため神々の強い意志が介在している事は疑いようがないであろう。こんな凄いスキルを持っている者は数万年前の神話時代から数えても両手の指で足りるのでは無いかと思われる。


 ノエルのゴールデントリプルでもその汎用性や威力は想像を絶するものがあるが、ポリーンのフォースがどれほどのバリエーションと威力を持つのか。想像もできない。


 おそらくフォースを完全に操る事が出来るようになれば神域魔術を扱える筈だ。彼女のスキルはSSSランクかもしくはEXSランクに認定されるはずだ。


 蓋を開けると俺の幼馴染二人はとんでもないスキルを隠し持っていたのだ。


 カーラ様の神殿の司祭様によると二人がこの日までにスキルを持てなかったのは、あまりにも強いスキルを持っていたので弱いスキルが位負けして発現しなかったのだろうと言う事だった。


 二人はこれから発現したスキルの効果により更に多くのスキルを発現させてゆくそうだ。




☆★☆




 この日、二人の凄いスキルが発現し、一躍二人は英雄のようにもてはやされる事になった。


 もちろん無能力者の俺は表舞台に出る事は無かった。確かに俺は一時的にポリーンの危機を救ったかもしれないが多少の時間差でノエルが助けてくれたはずだから俺の活躍など無かったも同然だ。


 俺はその日から舞台裏でひっそりと失われた血が戻るまで静養するしかなかった。普通の生活ができるようになるまで三ケ月の時間が必要だった。


 その間にノエルとポリーンは地方レベルの英雄から国レベルの英雄に祭り上げられていた。


 ノエルは男の子の憧れの聖騎士団にポリーンは癒しの女神サイレスの教会にスカウトされて都に登る事になったと噂で俺は知った。


 俺はあの日以来二人と会っていない。二人は英雄や聖女とはやし立てられて俺の事など忘れてしまったのかさもなくば無能力者などに興味を無くしてしまったのだろう。


 俺は十二歳の幼馴染達の事を温かい気持ちで密かに応援するファンの一人になる事にした。


「あのポリーンちゃんが聖女様だよ。ラークちゃん。凄い子に好かれていたんだね」


 母さんのエルダが笑って言った。


「ああ。無能力者同士、哀れみ合ってただけさ。彼女は見た目だけでも聖女様になれるような女の子だよ。俺とは元々釣り合わないさ」


 俺は母さんにはにかんだ笑いを向けた。一時はポリーンと将来結婚する事になるかもなんて思っていた事を思うと恥ずかしい。


「あんたは本当に大人だねぇ。あんたみたいに何でもそつなくこなす子はいない。あんたの弓の腕はスキル持ちの父さんとほとんど変わらないそうだよ。いっそあんたを【万能】ってスキル持ちにしたら丁度似合うのにね」


 母さんは大きなため息をついて言った。


「スキルなんてもんは生きて行くだけのためには不要なもんだよ。ここで静かに暮らす分には無くても困らないさ」


 俺は母さんを慰めるように言った。


「ふふふ。逆にあんたに慰めてもらっちまうなんてね。に、してもノエルちゃんもポリーンちゃんも薄情だね。一度くらい見舞いに来たらいいのにね」


「英雄になって忙しいんだろ。それに俺みたいな無能力者と会うのが恥ずかしいだよ。そんな年頃だよ。またいつか会えるだろう。そん時は俺は二人の足元に跪いて見上げる事になるんだろうけどね」


 俺はそう答えた。


「あんたは大人だねぇ〜」




☆★☆





 俺はラルの街に来ている。今日は幼馴染のポリーンとノエルの門出だ。もちろん舞台裏の俺は観衆の一員に紛れて二人を見送るだけだけど。


 ラルの街にはそんなに人がたくさんいたのかと思うほどに賑わっていた。


 ああそうか。近隣の村からも噂になっている英雄と聖女様を見ようとしてやって来たのだろう。


 娯楽の少ない辺境の中で心踊るような物語の主人公のような二人。今日を外せばお目にかかる事が出来ないと皆思っているのだ。


 噂では二人を題材にした物語が作られたと聞いた。確か『聖女の危機を助けた小英雄』とか何とかだ。今や二人はアイドルのような存在なのだ。


 群衆の後ろから少しだけ通りが見えるこの位置では顔もろくに見えないだろうと思ったが一番視界がひらけているところを探してその場に立ってポリーンとノエルがやってくるのを待った。


 群衆の前の方で話している声が聞くとは無しに聴こえてきた。


「俺はこのラルの街育ちだから聖女ポリーン様は良く知っているさ」


「本当? どんな方なの」


「ああ。聖女様は、才女で暗算スキルや編み物スキルもお持ちなのさ。そんなに可愛い感じじゃなかったんだと思うけどな」


 明らかに誰かが知ったかぶりをして言っているようだ。


(彼女は元無能力者だったんだぞ。そしてとても頭が良くて何よりもとても可愛らしい女の子さ)


 もちろん声には出さなかったがその知ったかぶりをしている男に俺は心の中で指摘していた。


「「「おお。やって来るぞ」」」


 その男が叫んだ。すると周りの人もざわざわと騒ぎ始めた。


 音楽が遠くから聞こえて来た。軍楽隊と言うのだろうが少しばかり下手くそな音楽が近づいて来た。


 どうやらそれがポリーンとノエルらしい。音楽の音が近づいて来るにしたがって群衆の歓声が響いてきた。僕のところからも軍楽隊の派手な制服がチラチラと見えている。それから音楽の音が俺の前を通り越していった。


 そして一際大きな人々の歓声が俺の直ぐ前の人達があげたのでポリーン達が前を通ったんだと俺にも分かった。


 俺はジャンプしてみたが俺と同じようにジャンプする大人の背中が見えただけで何も見えなかった。


 ポリーンが偶然俺の顔を見つけて駆け寄ってきたり、ノエルか俺の存在に気付いて手を振ってくれるようなイベントが起こったらと期待していたが何も無く二人を引き連れた一団は集団となってただ通り過ぎて行くだけだった。


 せめて一目ポリーンやノエルの顔が見たかったがそれも叶わなかった。


「おお。聖女様。なんて神々しい。有難や有難や」


「凄く綺麗な方じゃないの」


「おお。エルハルト卿の三男様も立派ですな。白い馬が良くお似合いだ」


 最前列に立ってポリーン達を見送っていた群衆の中からそんな声が聞こえて現実にポリーン達が俺達の前を通り過ぎたのだと理解した。


 俺は二人の門出をこうして送ってようやく全てが終わったと思った。


 楽しかったポリーンとノエルの関係もただの記憶として過去に追いやられるのだと思った。


 俺は過去と決別して現実と言う未来に向けてたった一人で歩き始めたのだった。


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