スキル発現
本日三話目の自動更新です。
次に俺が意識を取り戻した時、ポリーンが大泣きしながら俺の左手を両手で包み込むように掴んでいた。
「ポリーン。無事だったんだ」
俺はポリーンの可愛らしい顔を見た瞬間に安堵で大きなため息をついていた。
「ラークごめんね。私のために。ごめんね」
ポリーンが大泣きしながら僕の胸にすがりついてきた。
何が起こったか俺には良く分からなかった。
周りを見ると大人達が慌ただしく何かを調べているところだった。
「君。大丈夫かね?」
兵隊らしい背の高い人が俺の顔を覗きながら尋ねてきた。
「はい。大丈夫です」
俺はそう言いながら立ち上がろうとしたがダメだった。意識が遠のきそうになったのだ。立ち眩みという奴だろう。
「動かない方がいいぞ」
背の高い兵隊がそう言って俺をその場に寝かせつけた。
「回復魔術で治してもらったんだろうが出血が酷い。安静にしていることだ。この回復魔術は君がかけたのか?」
その兵隊がポリーンに尋ねた。
「分かりません。死なないでと必死で祈ってました。助けてくださったのは女神様でしょう」
ポリーンが半ば惚けた顔で言った。美しい顔をした女の子と言うのはこんなにも綺麗に泣けるのかと俺は妙な事に感心していた。俺のそんな思考を遮るように聞き覚えのある声がした。
「ラーク。大丈夫か?」
その声のする方に俺は顔を向けた。そこには全身が血だらけになったノエルが笑いながら立っていた。
「お前。その血。大丈夫か?」
俺は思わず尋ねていた。
「ああ。大丈夫。俺の血は一滴も混じってない」
不敵な顔でノエルが言った。
「君は本当に凄いな」
背の高い兵隊がノエルの方を見ながら感嘆の声を上げた。
「九人もの盗賊を君一人でやっつけたんだ。我々が駆けつけたら全てが終わっていた」
「いいえ。この大男はそのラークがやっつけたから俺は八人しか倒してませんよ。それに外の奴らは魔物と戦った後でみんなヘロヘロだったし。俺の手柄じゃないですよ」
ノエルは何でもないと言わんばかりに答えた。その不敵な顔で答えるノエルを見て俺は何となく理解した。
「ノエル。お前、発現したのか?」
スキルが発現したのかと聞いたのだ。ノエルは貴族の三男だから剣術は習っていた。俺などよりも相当に強いはずだがかと言って大人の盗賊八人を斬りふせるほど凄腕だった訳ではないはずだ。
しかしノエルと兵隊との会話から察すると盗賊達を殺してポリーンを解放したのはどうやらノエルだと言う。であるならノエルが急に強くなった言う事だ。
「さすがラーク。話が早いな。俺はこの兵隊さん達を連れてポリーンを助けに来る道中でスキルが発現したんだ。だから他の人を置いてサッサと助けに飛び込んだ。俺が外の連中や魔物をやっつけて避難小屋の中に入って驚いたぞ。ラークとこの盗賊が血だらけで倒れているし。ポリーンも気を失って倒れているしで」
ノエルはいつもの尊大な雰囲気を絶やさず言った。十二歳の子供とはとても思えない堂々とした話し方だ。
「俺はこの盗賊に斬られたんだ。俺を助けてくれたのもお前か?」
俺はノエルに尋ねた。
「いや。どう見てもお前は助かりそうになかった。ポリーンが泣きながらお前にすがっていたらいつの間にかお前の傷は癒えていた。おそらくポリーンのスキルが発現したんだろう」
何とも不思議な話だった。十二歳の今まで無能力者と馬鹿にされ続けたノエルとポリーンはこの日こうしてスキルを発現させたのだ。