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リングワールド  作者: seisei
序章
4/29

近道

 思った通り山賊達はあれから直ぐに街道から外れて山の中に入って行った。


 街道から山に入って行く道は見るからに急造された獣道の様なもので人が一人ぎりぎり通ることができるような粗末な道だった。


 俺は山賊達に見つからないようにこっそり山賊達の後を付けて行った。


 山賊達はその道を草を踏みつけるようにして山の中に入って行った。


 しばらくすると山賊達はその急造の道から普通の道に出た。山賊達に付いてその道に出てみて俺は密かに安堵の吐息を付いた。なぜなら俺はその道を知っていたからだ。


 その道は魔物が住む森から魔物が湧き出てこないようにするために作られた結界道だった。道の中央に結界石が延々と打ち付けられいる。


 結界石は魔物と人との境界線を表す魔道具だ。結界石を超えると魔物の世界と考えた方が良い。


 俺は父さんの狩の手伝いをしていたおかげで山には詳しい。この結界道の先には魔物避けの小屋が有る事を俺は知っていた。


 俺はこの時、盗賊達が進んで行く方向から彼等が魔物避けの小屋を隠れ家にしているのだと直感した。


 しばらく俺は盗賊達の後をつけて行った。案の定、盗賊達は結界道を歩いて行くようだ。


 ある場所まで付いて行った俺は、笑みを浮かべて盗賊達が真っ直ぐ歩いて行くのを見送った。


 結界道はこのまま真っ直ぐ行くと急峻な崖まで続いている。その崖から先にも道が作られていているがそこには結界石は設置されていない。崖が結界となっているので魔物が近づかないからだ。


 崖の中腹に作られたその道はアップダウンのある悪路で、そこを小一時間も進むと魔物避けの小屋に至るはずだ。


 俺がここで盗賊達を見送ったのには理由がある。この道はそのまま歩いて行くと魔除けの小屋にしか行けないのだが、俺は魔物小屋への近道を知っていたからだ。


 小屋は魔物に襲われた時の緊急避難の場所だ。そこに到達するための近道は山の人には必須の知識だ。


 その近道は結界道を普通に進むと分かりにくように作られている。恐らく魔物から逃げた時に少しでも生存率を高めるための工夫だろう。


 そんな事も知らない盗賊達は恐らく最近あそこを根城にしたのだろう。


 俺は父さんに教わった近道を走って魔物の避難小屋に先回りをする事にした。魔物小屋はものの五分も走って行くとあった。




☆★☆




 小屋に着くと案の定、ポリーンをさらった奴の仲間らしき盗賊が小屋の前で見張りをしているようだ。俺はそれを確認すると直ぐに踵を返した。


 ポリーンはここに連れられてくる事はほぼ間違いない。しかも恐らくここに到着するのはポリーンのような荷物を運んでいるため一時間以上かかる筈だ。


 俺はこの時間差を有効利用して大人達を連れて来ればポリーンの助かる確率はぐんと上がる筈だ。


 俺は走ってさっきの結界道まで戻ると盗賊達の作った道を通らずに結界道をそのまま走って街道にまで到着した。一瞬俺は街道から俺の村に行くかラル街に行くか迷った。村に行っても頼りになる大人はいない上に俺なんかの話を真に受けてポリーンの救出に駆けつけてくれないかもしれないと咄嗟に判断した。


 俺は街に向けて走り出した。街には代官の守衛隊がいるし、俺には心強いもう一人の友達ノエルがいた。彼は代官の親戚の息子だ。つまり貴族の子供という事だ。


 俺は友達のノエルの両親がどんな身分か知らないし確か三男で俺達と同じ無能力者なので大した発言力は無いだろうが俺よりはるかにマシな事は間違いない。


 俺は街までひた走った。歩くよりもかなり早いペースで街に到着したと思う。俺はノエルの家にやってきた。ノエルの家は門衛を置くほどの身分では無いが俺の家よりもずつと立派な建物だ。なんだか声をかけるのが躊躇われる。


 ドアを見つめているとテレパシーかと疑うほどのタイミングでノエルが出てきた。


 ノエルは驚いた顔をして俺の顔を見ている。何で俺がいるんだろうと思っているようだ。そんな彼に俺は叫んだ。


「「「ノエル。緊急事態だ」」」


 俺の叫び声にますます驚いたノエルは口をポカンと開けて絶句している。


「ポリーンが盗賊にさらわれたんだ。結界道の崖前の避難小屋が根城になっている。お前の力で大人達を救出に向かわせてくれ。ポリーンの親を動かすのが一番確かだろう。俺は直ぐに取って返して様子を見に行く」


 俺はまだ絶句しているノエルにそうまくし立てると踵を返した。


 俺はそのまま走り去ろうとしたがノエルは俺の服を後ろから掴んで引き止めた。荒々しく引き止められた俺は驚いてノエルの顔を見た。いつもの冷静なノエルが珍しく必死の顔で叫んだ。


「「「ポリーンを命懸けで守れよ」」」


 ノエルの必死な顔を見て俺は珍しい事もあるもんだと驚いたがそんな無駄口を言っている暇もないので。


「「「絶対に守る!」」」


 俺は叫び返すと踵を返して走り始めた。


 ノエルは頭の切れる男だ。貧乏貴族の三男坊だが精神年齢が大人の俺でも舌を巻くほどに頭が切れる凄い奴だ。俺なんかよりも頼りになる。


 俺が叫んで伝えた程度の情報が有ればノエルなら全力で大人の救援者を連れて来てくれると俺は確信していた。

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