あの人達のあの日あの時。(魚六のマサキ編)5
商店街の七夕企画の準備で大わらわになっている時、トラブルはやっぱり起こるものだ。
七夕らしく、夢を叶える企画で、結婚式を商店街でやることになって、近所の服飾専門学校の協力も取り付けて、もうあと2日くらいで本番だって時にウエディングシューズっていうのを担当していた学生さんが事故で身動き取れなくなったって一報が入った。
白っぽい靴でいいんじゃないの?と提案したけど、やっぱり結婚式用のドレスに合わせる靴は特別なんだそうで、ユキちゃん電話帳に載っている靴屋さんに片っ端から連絡入れても取り寄せるのに時間がかかるんだそうだ。服飾専門学校のも使えないし、ブライダルサロンとかの靴も挙式を自分のところで挙げてくれる人の為のレンタル品だからと貸し出ししてくれるわけもなく。
何とかしてやりたいけど、どうにも出来ないとあきらめかけていた時に靴屋のおばさんがやってきた。
花嫁さんの靴のサイズってわかる?って。
俺が、商店街の実行委員だから声をかけてくれたらしい。
もともと、靴屋のミキちゃんとはガキの頃は仲が良く、集団登校でも一緒の班だったし顔なじみだったから声をかけやすかったと言ってくれた。
もう6年経つか。ミキちゃんが亡くなって。
23歳で、職場で彼氏が出来てすぐに結婚の話がまとまって。
幸せそうにしていたミキちゃんが交通事故であっけなくこの世を去った。
おじさんもおばさんも、しばらく店を開けられないくらいのショックだったよ。
おばさんの真剣な表情に、早速靴を探しているユキちゃんに連絡をした。
後から聞いた話だけど、紳士物一筋だったおじさんが、ミキちゃんの為だけに特別に作ったウエディング用の靴を花嫁さんに合わせてもらうために連絡をくれていたんだそうだ。
まるで神がかった話なんだけど、花嫁さんとミキちゃんは足のサイズが一緒だったらしい。
無事に靴もそろって本番を迎えた。
商店街だから、牧師さんだか神父さんだかの伝手がないから、人前結婚式って形式で観客の前で誓いの言葉を宣言するっていうらしい。そういうの良いなぁ、皆が証人って。
バージンロードを歩く花嫁さんを見ているユキちゃんが、とても綺麗に見える。
なんだろう、ふと、花嫁さんにユキちゃんが重なって見えた。
誰かの隣に立つユキちゃんを想像したくなくて、花嫁さんがユキちゃんにお礼の意味を込めて投げたであろうブーケをついキャッチしてしまった。
なんも考えてなかったよ。やっちまった。
びっくりしているユキちゃんに、男がブーケ取るなよっていう女どもの視線が痛い。
しかし、思わずキャッチしてしまって、つい。勢いで取ってしまった手前ユキちゃんに
手渡すが、その時思わず心の声が出た。
「俺のところに嫁に来てほしい、それ前提で付き合ってください」
その途端に観客の女性からの黄色い悲鳴。
ユキちゃんも真っ赤な顔で受け取ってくれる。
真剣な気持ちだけど、もっと場所とかタイミングとか計って告るつもりだったのに。
なんか、誰かに背中を押された気分。ムードに酔っちゃったかな。
あとで、こっぴどくタカシに叱られた。




