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ヘタレ女の料理帖番外編  作者: 津崎鈴子
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あの人達のあの日あの時。(魚六のマサキ編)1

 初めてユキちゃんを見かけたのは、ご近所でも有名な女傑、エミさんと同居するというので顔見世よろしく案内されている所だった。


 なんか無理に笑ってる気がして、ふとした時に無表情になる姿が心に引っかかっていた。


目を引くほどの美人ってわけじゃないけど、気になって仕方なかった。


☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・


商店街にお使いに来る回数も多くて、だんだんと笑顔が見られるようになってきたけど、背中に背負っているなにか翳りが時折表に出てくるので目が離せない。


そんな時、郊外に大型スーパーが進出してくるっていう噂が流れてきた。

確かに、駐車場とか千何台止められますよとTVでも宣伝をバンバン仕掛けて、知名度があるならば、客は流れていくだろうなぁと危機感を抱いている。


幼馴染で悪友のタカシとそこんとこ暇を見つけてはどう対策したらいいんだろうっていろんな意見を話していた。商店街の会合でもその話は出るんだけど、オヤジ世代は商店街の特性を生かして、とかお客さんに今まで以上のサービスをとか、具体案が出ない。偉そうにふんぞり返って若い奴に、今まではこうだったとか、ご高説ぶちかます暇があったら具体案出せ。もう新しい時代に合わせていかなきゃ生き残れないところまで来てるんだよ。それが爺様連中にはわかってもらえない。


 ゴールデンウィークになにか企画を出してお客さんを呼び込みたいなって今日も話してる時に、ユキちゃんが買い物に来ていたのが見えた。


 ユキちゃん、またドンヨリした顔で歩いている。

ユキちゃんに視線を向けているのをタカシに見られて、話を戻そうとするけど、タカシ悪戯を思いついたような悪い顔になっている。まぁ悪意の悪戯じゃないだろうから突っ込まない。


「今日もユキちゃんどんよりした顔、してるよね。気分転換にイベントの企画案出してもらってみようぜ」


タカシは明らかに面白がっている。くそ。


「ユキさん、いいところに!!」


タカシがユキちゃんを呼び止めた。ユキちゃんも素直だからすぐに寄ってきてくれる。

ユキちゃん、悪い男の誘いにホイホイ乗らないでくれよ。余計心配になるだろうが。

心の中で叫びながら、タカシのいう事ももっともだと思いつつ、実はちょっとユキちゃんと話出来て嬉しい自分も居たりいなかったり。ああ、今の俺ってわけわかんね。


「ユキさん、商店街で何かイベントをしようと思うんだけどなんかいい案ない?」


「なんで、私に、アイデアを聞くんです?」

ユキちゃん、その疑問は最もです。俺もそう思うわ。タカシの奴め!!


「第三者からの意見が欲しいからだよ」

ひと通りの話をして、考えといてねって買い物に送り出した。


「こら、タカシ全くお前は。ユキちゃん困ってただろう」

「でもさ、違う目線からアイデア出してもらうのって我ながらいい案だと思ったんだよね」

タカシの眼鏡が光る。こういう時はタカシの意見に逆らえない。ガキの頃からそうだった。


その日の夕方、客足が落ち着いてそろそろ閉店の準備しないとなって支度していたら。


店の電話に着信があった。ユキちゃんからだ。

ユキちゃん、さっきの俺らの話を真面目に考えてくれて、斬新なアイデアを出してくれた。

正直今まで考えたこともないような案だ。すごい面白そうだ。

そういやぁ、ゴールデンウィークには子供の日ってあったよなぁと思い出す。


案の定意見をつぶしにかかってきた酒屋のシゲさんに真っ向意見言って黙らせることが出来たのは

快挙だった。俺たち若手がいつも通りに案を出していたとしたら言葉でねじ伏せられていただろう。でも、ユキちゃんは負けていなかった。商店街の隠居しているばあちゃんたちも借り出しての一大イベントに、あの気難しい井戸端ばあちゃんたちをタダで手伝わせるなんて、ありえない奇跡まで引き出していた。


結局、ユキちゃんの案は可決し、予算面も大きな負荷もかからずボランティアを動員出来て大成功に終わった。しかも、子供の客に付いてくる大人のお客の落としていく金が半端なかった。これはタカシと俺には予想外の結末。


 祭りの後に、ユキちゃんが酒屋のシゲさんと話をしていたのを見て、心配になった。

シゲさん、ユキちゃんになんか言いがかりつけてないよな?心配になったが、シゲさんがあの秘蔵の大吟醸をお酌しているのを見てユキちゃんがあのシゲさんに気に入られたんだとわかった。


でも、ユキちゃんを気に入ってるのはイイことなんだろうけど、なんだろう、すごくモヤモヤしてシゲさんが離れたのを見計らって近づいた。


ほろ酔いの女の色気はすごい破壊力だ。思わずドキドキと心臓がうるさく鳴り響く。

潤んだ瞳に月が映る。幻想的な光景に思わず見とれてしまった。


そうだ、俺はこの頃からユキちゃんに恋をしていたのかもしれない。


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