追う者と追われる者⑤
背の高いヒョロっとした眼鏡の男――目の前で剣を構えているその男は、問屋で働いていた「エルビン」という男だった。
つまり、彼もこいつらの仲間だったということだ。
ユリアスは、ひるむことなく、エルビンに向かって「メーテルさんを裏切っているのに、よくノコノコとあの問屋で働けたもんだ」とひどく冷たい声で言った。
エルビンは、剣を手で弄びながら、ユリアスに向かって一歩出た。
「ああ、お前か。問屋へ来て、スズランカについて裏でこそこそ嗅ぎ回っているっていうネズミは――」
「答えろ、スズランカをどこへ横流ししている? 誰の命令だ?」
「はぁ? なんでお前の質問に答えなきゃならないわけ? お前、自分の状況わかってる? 人質をとっているようだが、別にその男の生命は欲しくもない。殺したきゃ殺せばいいさ!」
その言葉に同意して、周りの男どももゲラゲラ笑い始めた。
ユリアスが剣を当てている男は「クソっっ」と舌打ちをし、視線を地面に落とす。
なんだか哀れな男に見えてきたが、そう言っていられる余裕はない。
確かに、人数的に不利なのはこちらだ。
その中で、ユリアスは足りない情報を得る必要があるから、なんとしても、形勢逆転しなければならない。
(さすがに、剣だけじゃ太刀打ちできないな……)
ユリアスは、ゆっくり呪文を唱え始めた。
『風よ、悪しきものをとらえたまえ!』
すると、どこからともなく突風が巻き起こり、周りにおいてあったバケツや農機具を宙に浮き、男たちめがけてふりかかった。
突然のことで避けきれなかった男たちは、みんな足をとられ、手に持っていた武器を落とした。
武器を拾おうとした瞬間、今度は自分自身が宙に舞い上がり、逆さになる。
「何だこれぇ!?」
「どうなんてるんだ!!」
「た、たすけてくれ〜!」
ユリアス以外の男が逆さ吊りになりながら竜巻の中で、ユリアスの指のテンポに合わせながらぐるぐる回転している。
「助けてほしいなら、質問に答えるんだね」
「た、たのむ……、こ、こた、える、から……うぇっつ」
時間が経過するほど、彼らの顔は青白くなっていく。
これ以上、頭に血が溜まっていくとさすがに死なせてしまう。
だから、ユリアスはこんどは上下を変えて回転させてみる。
「うぇぇぇぇぇぇ〜! 勘弁してくれ!」
「い、いったい、どうなっているんだ?!」
「おねがい、します〜! 助けてくださ〜い!」
そんな声も聞こえないふりして、ユリアスはさっきから人質にとっている男の脇腹を思いっきり蹴り上げ、気絶させた。
そして、用意していた縄で縛る。




