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緊急議会②

 トラヴァスが席に戻ったちょうどその時、ざわついていた薔薇の間が、急に静まり返った。

 扉の方を見ると、第二皇子が入場してくるところだった。

 急に立ち上がり、うやうやしく会釈する者もいる。

 ラザフォードより人気のある第二皇子は、会釈する者に軽く手をあげ、笑顔で挨拶をかわしていく。

 

 今日はいつにもまして機嫌がいいな……

 一体何が起きるんだ−−−?


 カイルは不信感を顔に出さないようにしつつ、隣に座って座って第二皇子の様子を見据えている第一皇子の顔色を伺った。

 ラザフォードはじっと黙ってシュナイゼル皇子の動向を観察している。

 いつもヘラヘラと笑っている口元はキュッと結ばれ、目も真剣だった。

 

 カイルは静かに息を吐き、ことの成り行きを主人の隣でじっと黙って見守るしかできない。 

 たとえ、何が主人に言い渡されたとしても……


「皇帝陛下のおなーりー」


 大きく入り口の両扉が開かれ、皇帝陛下−−−二人の皇子の父親が入場する。

 一同起立し、こうべを垂れた。


 議長よりも一段上のひな壇に置かれた専用の椅子に座ると、陛下は議長に合図し、議会の開始を指示した。

 そして議長は議事進行係の者へ指示を出すと、議事進行係が大声で開会を宣言した。

 

「ただ今より−−−緊急議会を開会する。一同、礼−−−」


 皆が一斉に皇帝陛下へ向けて左胸に右手のひらを当てて一礼をする。

 議長が頭を上げるのとほぼ同時に、皆も頭をあげ、皇帝陛下の後ろに大きく掲げられたこの帝国の紋章のエンブレムをじっと見つめる。

 そのほんの数秒間、この広い空間に冷たい空気が張り詰め、誰もが微動だにしなかった。

 しかし、頭の中ではいろんな思惑と策略がうごめいているのは確かで、目線はチラチラと各当主の顔や皇帝の隣にいる二人の皇子に向けられている。


 議長は皇帝陛下に目線を送り、少し間を置き、本日の議題内容の説明を始めた。


「本日の議題は、王位継承に関するものである。王位継承権のある者から次期皇帝を選ぶにあたり、確定事項を発表する」


 その言葉で、会場が一気にざわめき、どよめきが走った。

 この緊急議会は話し合いの場ではなく、決定を皆に示すだけのものらしい。

 異議があっても唱えられなさそうだ。


「静粛に!! 皇帝陛下の御前である! 心して聞くように!」議事進行役が大声で叫んだので、一同は開けていた口をピタッと閉じ、視線を下へ向けた。


 皆が納得している訳ではないことは一目瞭然なのに、強行的に踏み切るようで、不可解な点が多い。

 まだ皇帝はご健全そうなのにどうして、早々に退かれるのか−−−−−−?

 


 会場が静まり返ったのを見計らい、議長が「陛下、お願いいたします」と促すと、皇帝陛下が立ち上がり数歩その場で前に出る。

 どちらかというと白髪に近い長めの金色の髪を後ろに束ね、頭上に皇帝の象徴の王冠をのせているその人はの目元はラザフォードに受け継がれ、鼻筋はシュナイゼルに受け継がれているようだが、彼を取り巻く雰囲気はどちらとも似ていない。

 冷酷、温和、誠実、狡猾、全てが混ざり合い一瞬では人物像を悟られないようにしているようだった。


 陛下は、全員に聞こえるようはっきりと、ゆっくりとした口調で語りかける。


「皆も知っていると思うが、私は『賢者』を見つけた者ならどんな者であろうとも次期皇帝にするつもりでいる。先代の賢者が亡くなってからもう随分たつのに、未だにその座が空席なのは問題である。このまま『賢者』不在を放置していたら、ますますこの国は荒れ取り返しのつかないことになる。小国だったこの国をここまで大きくできたのは、紛れもなく賢者の『英知の力』のおかげだ。その力を持つ者をここへ連れてきた人物にこの王冠を渡したいと思う。」


 カイルも各当主たちも、ラザフォードも、事前に仕入れていた情報通りの内容なので、特に驚く様子もなかったが、次の一言で、彼らだけでなく、この会場に集められた全員が目を開くことになった。

 


「私は、次の春を迎えるまでにこの座を降りる−−−つまり、新年に執り行われるこの議会で『賢者』を見つけ出し連れてきた者が次期皇帝である!!」


 皇帝が近くに控えていた侍従に合図し、「何か」を持って来させた。

 それは両手に乗るぐらいのだだの箱。

 思ったより小さいので、後ろの席の者たちは背筋を伸ばし、なんとか見ようと目を凝らしているので、皇帝はそれを皆が見えるように掲げた。




 


                    







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