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それぞれの役割⑥

「服用及び、摂取すると幻覚症状が現れる危険な薬草の一覧よ。でも、残念ながらこの中にはそんな甘い匂いがするものはないし、煙で摂取しても幻覚症状は起きないわ。ほとんどが口から体内に取り込まれた時の中毒症状ね」

「本当にこれだけなんでしょうか? ここにはないものも中にはあったりするのでは?」

「そんな未確認植物があるなら、こっちこそ教えてもらいたいわ。見た所ただの薬玉だけど、本当にこれを燃やすと幻覚症状に見舞われるの?」

「ええ……現に僕はこのせいでひどい目に会いました」

「その時、何か飲まされたり、口にしたりしなかった? 」

「いいえ、特に何も。水ぐらいしか飲めなかったので、ひどい二日酔いで」

「二日酔い? あなたお酒飲めないでしょ?」

「無理やり飲まされたんです……さすがに自分からは飲みません」


 ユリアスはそう言われ、その時のことを思い出そうとする。

 確かに、あの時は水ぐらいしか口にしていない。

 前日はぶどう酒をたんまり飲まされ、気づけば意識がなかった。

 その間誰かに何か飲まされたりしたのだろうか?

 腕を組み考えるが、わかるはずもない。


「あと考えられるのは、組み合わせね。一つだけじゃ薬にも毒にもならないものが、あるものと一緒に摂取することで効果を発揮する薬草もあるわね」


 頬杖をつきながら、ペラペラをページをめくるアニシナは、思い出したように言った。

 それを聞いたユリアスは顔をあげ、「それだ!」と目を見開き声をあげた。

 

「燃やすと甘い匂いがする薬草はどれですか?!」

「燃やすと甘い匂い……それだったら『ユズリ草』か『スズランカ』だけど、可能性としては低いわ。どちらも綺麗な花だけど、危険だから栽培されてない。だから、市場にも出回らない」

「でも、絶滅したわけじゃないですよね? 栽培している人がいるはず」

「そうだけど……」

「その二つの薬草はどこに行けば見られますか?」


 身を乗り出し、次から次へ質問してくるユリアスの姿にアリソンは目を丸くした。

 魔導家領地の西領では、事件などに首を突っ込むことなくのほほんとしていたユリアスとは、全くの別人。

 いつからこんなに積極的な少年になったのだろう−−−?

 薬草なんかより、そのことの方が興味深いのだが、質問を返さないときっと答えてはくれないだろうと思い、「そんなの決まってるじゃない、魔導家に行けば見られる」と少し呆れ口調で返した。


「え? 魔導家ですか?」

「そうよ。何言っているの、当主の次男坊なのに。魔導家は薬草で稼いでるでしょうが!」

「それはそうなんですが、そんな薬草聞いたことも見たこともなかったので」

「一般的には知られてないわよ。薬剤師でも知らない人のが多い。だって、悪用されたら危険でしょうが。でも、それが必要な人もいる。あの甘い匂いは体をリラックスさせるから、怪我や病で苦しんでいる人の近くで『お香』として焚く時もある」

「じゃあ、燃やすのですね」

「ええ、そうよ。まあ、こんな大量にじゃないけど。いい? この薬草は一部の薬剤師しか扱ってはダメで、入手もできない。入手するなら魔導家の薬剤問屋へ行くしかない……この意味がわかる……わね?」


 アリソンの真剣な目をしてユリアスに低い声で言った。

 ユリアスはコクリと頷き、「わかります」とだけ言いながら、薬玉を巾着袋へしまった。


「薬室長、ありがとうございました。助かりました」

「あまり、無茶しないように。ここはいろんな人がいるから」

「そうですね。無茶したくないんですけど、こればかりは……仕事ですからね」


 あはは……と苦笑いしながらユリアスはこの場を後にしようとした時、「ユリアス様、ちょっとお待ちください!」とさっきの薬剤師とは別の女性に呼び止められる。


「ソフィアさん、どうしましたか?」

「その薬草をお探しだと聞いて……」


 ラザフォード殿下付きの薬剤師のソフィアは何やら帳面を抱えていて、さっきのアリソンと同じように、ユリアスの目の前で帳面を見せた。


「その二つの薬草……もしかしたら、この王宮内にあるかもしれません。先日その種を取り寄せるように言われお渡ししました。ここにその記録もあります」

「え? それって危険な薬草でしょう? 簡単に手に入らないんじゃ」

「はい、王宮は特別対応なんです。それも権限がある方ならすぐ取り寄せできます」

「それってもしかして−−−」


 ユリアスは脳内の記憶時計を勢いよく巻き戻した。

 

 

 





 




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