表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/168

それぞれの役割②

「こちらです。さあ、早く、この道をまっすぐ行くと市場に出ずに、森を抜けられます。あなたの馬はこの白馬ですね。それとこの鞄。私たちが男たちを足止めできるのもあと少し、さあお早く」

「ありがとうございます」


 ユリアスは白馬を連れた少女から手綱と、没収されていた鞄を受け取り、馬へ飛び乗る。

 そして、馬の腹を蹴り、前に走らせた。


「お前たち、何をしたかわかっているのか!!」

「わかってやっているのよ!あの方は村を救ってくださる魔法使い様よ! あんたらに好き放題にさせないわ!」

「早く、あの馬を追え!!」

「行かせないわよ! さあ、みんな今こそ私らの力を見せつける時よ!!」


 遠くから、ぎゃーという叫び声が聞こえてきたが、戻ることはできない。

 あのたくましい女性たちならきっと大丈夫だろう、そう自分に言い聞かせる。

 ユリアスは振り返らずに、ひたすら言われた道を突き進んだ。


 しばらくすると、マニラに言われた通り、市場に出ずに森を抜けることができた。

 ユリアスは鞄の中から、市場で手に入れた方位磁石と地図を取り出し、現在地と進路を確認しながら、再び馬を走らせる。

 効率を考えると、関所のカミンズという役人を問い詰めるべきなのかもしれないが、おそらく一筋縄では行かない。

 皇子の側仕えには彼を尋問する権利も、効力もないし、下手に行動すればラザフォード殿下の品位を落としかねないから、ここは一旦王宮へ戻り、現状を報告することにする。


 目指すは王宮−−−


 ユリアスはひたすら道を突き進んだ。


  


                   ********



 「あれ、レイフォード、いつの間に戻ったんだ?」


 窓際にたたずむ、もう一人のラザフォードの側近であり護衛官のレイフォードを見つけたカイルは、彼にすぐさま声をかけた。


「ん? ラズと一緒に帰ってきたけど、ちょっとお使いを頼まれてさっきまで教会へ行ってた」

「教会へ? 何をしに? また、ラズと何か企んでないだろうな? 頼むからこれ以上厄介なことを持ち込まないでくれよ。今本当に、危機的状況なんだから」

「何かあったのか?」


 何も知らない目の前の側近にわかるように、大きくため息をついてみせる。

 お気楽な人ばかりに囲まれていると、なんでこう自分だけがやきもきしているのかと、自己嫌悪に陥りそうになる。

 ここに、現実堅実主義のユリアスがいれば、自分以上にやきもきしている彼をみて、冷静になれるのだが、彼ずっと王宮を離れているというか、離れさせられている。


「何かあったじゃない。向こう側が動き出したようだ。そして、陛下から臨時議会の召集があった。明日必ず出席するようラザフォード殿下宛にね。わざわざ宰相が直々に来たんだぞ?」

「なるほど。だからって、お前が焦る必要はないだろう? 焦ったところでどうしようもないし」

「そうだが、ちょっとはこの状況に危機感を持って欲しいんだよ。このままじゃ、我々の主人はどうなる?! 俺らも王宮にいられなくなるんだぞ?」

「別に、俺はここにいたいとは微塵にも思ってないから、そんなことどうだっていい」


 そうだった……こいつは自らの意思で王宮へやって来たわけじゃないんだった。

 

 カイルは額に手をあて、ため息をついた。


 レイフォードはラザフォードに大きな借りがあるらしい。

 それを返さなくては行けないから、ラザフォードの側で使えている。

 だから、場所は彼には関係ない。

 関係あるのは、ラザフォード自身なのだ。


 レイフォードの事情を思い出しながら、カイルは沈みかけている太陽に目を向けた。

 自分はラザフォードこそ国王にふさわしいと思っている。

 幼馴染の関係だからというだけじゃない。

 うつけの皇子として周りに認識されているが、彼の頭の回転の速さはピカイチだし、何せ状況を把握する能力が他のどんな人よりも優れている。

 まるで、こうなることがわかっていたかのように、はられた伏線を回収するかのように、いろんな揉め事を解決していくのだ。


 半年前のある貴族の領地争いだってそうだ。

 それぞれの言い分は正しいかのように見えたが、彼らの嘘を見破り、互いに利益が出るよう双方に新たなビジネスの提案をした。

 その結果、いがみ合っていた二人の貴族は和解し、今ではその土地で仲良く新たな農作物の品種改良ビジネスを始めたらしい。


 彼には生まれ持った特別な『何か』があるような気がする。

 でも、当の本人は、能力があるのに、それを隠そうとするのだ。

 

 うつけの皇子だと思われることにどんなメリットがあるのか?


 ずっと一人考えているが、未だに答えは出ないし、本人に聞いても真面目に答えてくれない。

 自分の主人は本当に王座につきたいと思っているのか?

 

 カイルはさっきまで太陽が輝いていた場所を、柱にもたれかけながら見つめた。


 

 


 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ