薬草と陰謀⑤
「お主、王宮からの使いか?」
「ええ……そうです」
「どうしてここがわかったのか? ここを見破った者はいないのじゃが?」
「先日通った時に、一本道じゃなかったんですよ。で、その分岐ポイントを調べてたら、大きな絵を発見しました。素晴らしい絵ですね。どなたが描かれてんですか? 王宮画家にもきっと負けない腕前ですよ」
ユリアスは茶化しながら、褒め称えると、「ふざけるな!」と取り巻きの男が槍をユリアスに突きつけた。
「カナル、やめなさい。そなた、名前は? どこ出身なのかね?」
「ユリアスです。出身は西領です」
「西領? 魔導家か……珍しい」
「そうですよね。ここ周辺は商導家と武導家の直轄ですから。役人の警備で固められている関所もこの二つの者が牛耳っていますしね」
「ユリアス、お前さんの目的はなんなのか?」
「僕のですか? そりゃ、ここ周辺の治安維持です。最近よく小麦が盗まれて困っているんですよ。あ、でも別にあなた方を疑っているわけじゃないんですよ? なんか変な道があるな〜って入ってきたら、この集落にたどり着いたんです。まあ、途中追っかけられましたけど」
「我々を疑っているようだが、証拠はあるのかい?」
相手の出方を伺いながら、まるで世間話をするかのような口調で確信をついていくが、相手はそう簡単に揺さぶられたりしない。
むしろ、ユリアスの方が若干劣勢な感じだ。
それでもユリアスは怯むことなく、ニコニコと笑みを浮かべながら続けていく。
「その証拠を探しているんですよ。まあ、そもそも山賊という存在を中央は認めていない。だから、僕がこの場所を報告するだけであなた方は討伐対象になりますけど」
「見た所、お前さんにそんな力はないように思うがのう……人は見た目じゃないということかね」
「まあ、そうですね。一応、第一皇子の側仕えなんで」
「皇子の側仕えだと!?」
ずっと黙っていた取り巻きの男たちが急にざわつく。
ユリアスの田舎風な格好から判断して、貴族の端くれぐらいにしか思っていなかったようだ。
このまま黙って帰すわけには行かないと、後ろから声が飛び交った。
「長老、こいつ嘘を言っているだけですよ。側仕えがこんな森に来るはずがない!」
「側仕えなら、皇子の側にいるはず。離れているはずがない!」
「そうだ、そうだ。こういう調査はもっと下々がやりますって」
男たちの言い分はもっともだ。
普通の皇子ならこんな命令はしないだろう−−−『普通』の皇子ならね。
自分の仕える皇子も普通であって欲しかった……そんなことを考えながら、ユリアスは本題をもちかける。
「僕が皇子の側仕えかどうかは、あなた方にとって大した問題じゃないですよね? 問題はこの場所がバレてしまったこと。それはその辺の兵士であっても同じです。違いますか?」
「そうじゃよ。だから我々はそうならないよう、何重にも策を講じてきたのじゃ」
「なるほど。でも、それは杞憂に終わります。僕は誰にも……もちろん、皇子にも話すつもりはありません」
「信じられるかそんなこと!! そう言って逃げようとしてもそうはいかない!!」
「じゃあ、僕を殺しますか? そしたら、皇子が間違いなく全ての騎士兵士を使って、この森を捜索させますよ。そしたら、この集落もあなたがたの存在もあっという間にバレてしまいますね」
にこりと微笑みながら、ユリアスは淡々と話を続けていく。
さすがに、これには男たちも反論できず、黙るしかなかった。




