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薬草と陰謀④

 道の奥から茶色の集団がやりのような武器を携え、こちらへ向かってくる。

 人数は10名ほど。

 全員顔を隠すように頭から頭巾を被り、木の葉と同じ茶色の上下服で、ズボンは普通のものよりふくらはぎの部分が膨らんでいる形状の独特でエキゾチックな感じだ。

 腰には短剣となにかが入っている袋をつけており、足は革の独特な模様が入ったブーツを履いている。

 頭巾の隙間から見えている目を見る限り、歓迎ムードは一ミリも感じない。

 もたついている白馬をあっという間に取り囲むと、槍を一斉に白馬へ突きつけた。


「馬を置いて去れ。今なら見逃してやろう、小僧」


 この集団のトップと思われる男が低い声で唸った。

 背丈はユリアスと同じか少し低いぐらいだが、見る限り体格はユリアスよりがっちりしている。

 1対1でも敵いそうにないが、今は10対1だ。

 はあ……とため息をつきながら、ユリアスはその男に向かって言う。


「残念ながら、この子は渡せません。大事な馬ですから」

「ではお前の命を差し出すか?」


 男が槍をユリアスの首元へ突きつけようとしたので、ユリアスも剣で交戦した。


 キイイイン……


 乾いた高音が森に木霊する。

 

「あなた方の狙いは馬ですか? それとも小麦ですか?」

「どちらもだ。この場所を知って無事で帰れると思うなよ、小僧! お前ら、やれ! 馬は傷つけるなよ!?」


 おう!という掛け声と共に、ユリアスを馬から引き剥がそうと茶色い集団は襲いかかった。

 白馬は主人の危険を察知し、後ろ足を蹴り上げる。

 ユリアスもまた、手綱を引き、道の奥へ白馬を進ませようと馬の腹を蹴りながら、槍を剣で蹴散らせていく。


『風よ、我を守る盾となれ!』


 ユリアスが叫ぶと、たちまち突風が吹き荒れ、ユリアスと男たちの間に割って入る。

 風は生きているへびのようにうごめき、男たちの行く手を阻んだ。

 その隙にユリアスは現れた道を突き進む。


「あいつらが、山賊かな……全くこっちは一人なのに手加減してくれないんだな……」


 余裕の言葉を漏らしながら、森の奥へ入っていく。

 特に変わったところはないが、どうやら崖の際を走っているようで、水の流れる音が聞こえてきた。

 行き着いた先になにがあるのか、ユリアスはだいたいわかってきた。


 川と道を守る集団……そして盗まれた小麦たち……

 目にしたものを見たとき、絡み合った糸が、するする解けていく。


「これが山賊の集落か……」


 道を抜けると、小屋のような簡素な家が立ち並び、格子状の檻には鶏や豚やらが飼われている。

 驚くことに、大木の上にある家もあった。

 ユリアスが見たことのある村でこんな形態の村は初めてだった。

 それはまるで、本の童話から飛びたしてきた情景で、こんな状況じゃなかったら心が踊っただろう。


「そいつを捕まえろ!!」

「誰かその小僧を!!」


 追ってくるのに、もう暫くかかるかと思ったが、意外と早く、茶色い集団は槍を担ぎユリアスへ向かって突進してきた。

 さすが山賊、足は速いらしい。

 ぼんやりしていると、また捕まってしまうので、そのまま馬に乗って集落に入ることにしたが、それが悪かった。


「馬やよ、馬や!」

「見てみ、白いお馬さんよ〜!!」

「本当に真っ白〜初めてみる〜雪みたいだ」

「すごい。すごい」


 わ〜きゃ〜と、どこからともなく子どもたちが道に溢れ、ユリアスのいく手を阻んだ。

 さすがに子どもを蹴散らして進むわけにはいかないし、ましてや剣を抜くことなんてとんでもない。

 白馬も子どもたちが近づいてくるので動揺し、ヒヒンっと前足を浮かせて急ブレーキをかけた。


「名前はなんていうの?」

「これ、お兄ちゃんの馬なの? どこからきたの?」


 白馬が止まったのをいいことに、子どもたちは遠慮なくユリアスたちに近づき、質問攻めにする。

 子どもに阻まれているユリアスたちに、やっと茶色の集団が追いつき「お前たち、そいつに近づくでない! 離れろ!」と怒鳴って、やっとこの場が静まり返った。

 

「子どもの前で殺傷はできぬ、お前、命が欲しけりゃ、すぐさまその馬から降りて、剣を捨てろ!」

「…………」


 子どもたちの前で剣を抜けないのはユリアスも同じ。

 ここで戦うのは得策じゃないと考え、大人しく男のいう通りにすることにした。

 


「いてっつ!!」


 あっという間に、ユリアスは手足を拘束され、家畜を入れるような格子の小屋に放りこまれた。


 とりあえず山賊の存在と本拠地に潜入することに成功したが、これでは薬草についての調査ができない。

 どうしたものかと考えていると、一人の老人が他の男たちを従えユリアスの目の前にやってきた。

 もう誰も頭巾を被っていないのだが、男たちの頬と額には赤い染料で不思議な幾何学模様が描かれて、首には何かの骨で作ったネックレスを下げている。

 いかにも山賊って感じだ。


 老人は紫の民族衣装だが、他のものは緑もしくは黄色の裾野長い民族衣装を身にまとっている。

 紫はおそらくこの民族で高貴な色らしい−−−つまりこの老人が山賊を統べるおさなのだろう。

 

 その長老は黙ってユリアスを見つめる。



 










 






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