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薬草と陰謀③

「お前は素直でいい子だね。名前はそうだな〜フレッドってどうかな?」


 手に入れた白馬に話しかけながら、ユリアスは例の道を探しに森へと再び入っていく。

 本来なら、薬草の特定を優先させるべきなのだが、薬草を調べるよりこちらを操作した方が、早く黒幕に近づける気がした。


 ひたすら一本道を突き進むと、例のポイントへたどり着く。

 この特徴的な木があるこのあたりに確かに分岐ポイントがあったのだが……


 今日は幸い霧もなければ、雨も降ってはいない。

 馬を降りて、手綱を引きながらゆっくりあたりを見渡すが、特に変わったところもなく、もう一本の道は現れない。


 ユリアスは白馬のひたいを撫でながら、首を傾げ、眉間に皺を寄せた。


(見間違えってことはないはずなんだけど……)


 急にバサバサと鳥が木々から飛び立つ音がした。

 あたりを警戒するが何も出てこない。

 でも、何だか不思議な気配をさっきから感じる。

 木と木の隙間から差し込む光のような視線で誰かに監視されているような……

 そんな気配だ。


 木々の隙間を目を凝らし、見て回る。


 地面、木の幹、木の枝、そして葉っぱ……視点をゆっくり、空へとずらしていった。

 季節は冬に近づいているので、だいぶ葉が落ち地面に積もっていく。

 そして風が吹くたびに木の葉が舞い上がり、ユリアスの頭上に降り注いだ。

 カラカラに乾いた葉に意思はなく、ただ風に流されるまま地面に落とされていく。

 ハラハラと舞い落ちた木の葉たちは、よく見ると左側に多く積もっており、よく見ると落ちる軌跡がなんとなく不自然。


「何だろう……まるで壁があるような……」


 ユリアスは、「まさかな……」とおもむろに、左側の木々の間に手を伸ばした。



 バシっつ−−−−−−−−−



 勢いよく矢が飛び、ユリアスの頬を掠め地面に食い込む。

 ユリアスは腰から剣を抜き、頭上を見上げ、「誰だ!?」と叫んだ。

 静かな森に緊張の糸がはりつめる。

 ユリアスは見えない敵から距離を取ろうと一歩、下がろうとした瞬間、木の葉に埋もれていた木の根に足を取られてしまい、姿勢を崩し、後ろへ倒れそうになった。


「うわっつ!」


 思わず、体をねじり防御の体制を取ろうとして手を前に出すと、倒れるどころか、反動で跳ね返される。

 まるで壁にぶつかった時のように−−−そして、ドンと勢いよく地面に尻餅をついた。


「いたたた……」


 痛さに耐えながら、剣をすぐさま拾いあげ、体制を立て直し、再び矢が来ないか警戒するが、敵襲はない。

 襲うなら今がチャンスなのに、なぜ襲って来ないのか?

 ユリアスは不審に思いながら、自分がぶつかった壁のようなものを、恐る恐る確かめる。

 

「これは……すごい……」


 それは巨大な絵だった。

 それも、とても精巧に描かれている木々の絵。

 濃淡も工夫されていて、本物そっくり、パッと見て絵だとわからないよう2次元ではなく3次元立体的に描かれている。


「目の錯覚を利用してるんだ……すごい……」


 ユリアスは率直にこの絵は素晴らしいと思った。

 こんなに本物そっくりに描かれていたら誰も絵だと思わないし、第一、こんな所に絵があるなんて予想もしないだろう。

 こんな騙し絵を置く意味と言ったら、もう一つしかない−−−そう思い、絵に近づき、両手で押してみるが、一ミリも動かなかった。


「押してダメなら−−−−−−」

 

 今度は壁の切れ目を探し、指をかけ、横に思いっきり引いてみる。

 すると、ギギギという鈍い音と共に、絵がゆっくりスライドし、奥にはあの分岐点の道が現れた。


「あった……うわっつ……」


 しかし、現れたのは道だけではなく、濃い霧も一緒に流れ込み、あたりを白く染め上げた。

 ユリアスは急いで、カバンから布を取り出し、自分の鼻を覆う。

 白馬にも布をかぶせようと近くが、ヒヒンっとブルブル首を振るので、なかなか掛けることができない。


「頼むから大人しくして。また薬草にやられてしまうよ」


 甘い香りがユリアスたちを囲んだ。

 このままでは、また白馬も自分も薬草にやられてしまうので、一旦この場を離れることが懸命なのだが、せっかく見つけた道を調べずにここから去りたくはない。

 う〜む、と唸りながら、ユリアスは誰もいないことを確認し、目を閉じる。


『風よ、この霧を晴らしたまえ−−−−−−』


 ユリアスの声が森に響くのと同時に、突風が吹き荒れ、白い霧が木の葉とともに吹き飛ばされていく。

 匂いがなくなって白馬も大人しくなったので、手綱を掴み取り、飛び乗った。

 

「もう大丈夫だよ。偉かったね……」と声をかけながら首を撫で、手綱を引き、現れた道の方向へ馬を進ませる。

 道に漂っていた霧は晴れたが、その代わり、なにやら金属らしきものがこすれる音がした。


 ユリアスも剣を抜き、敵襲に備えるが、相手が一人ということはないだろう。


「はぁ、さっさと終わらせて帰りたいのに……」


 多勢に無勢……この調査は前途多難だ。

 

 

 

 

  



 








 




 


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