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出会い②

 父上との約束は、とりあえず、最低二週間は殿下に仕えぬくこと――

 

 ユリアスは、役に立たないと言われている魔導家の汚名返上をすべく、宮中にラザフォード殿下の身の回りの世話をする側仕そばつかえとして送り込まれた。

  

 本当ならば、ユリアスとまた従妹にあたる者が、側仕えとして送り込まれるはずだったのだが、その者が数日前、足を滑らせ腕の骨を折ってしまった。

 その従兄弟は宮中に参上することを夢見て、勉学、作法、武道に全ての時間を注いで鍛錬していたのに、巡ってきたチャンスをものにできなかった。

 ユリアスの父でもある魔導家当主は、そんな彼を気の毒に思ったが、さすがに足を折ったものを側仕えとして送り出すわけにもいかなかった。

 そして、次期当主になる予定の長男を側仕えとして送り出すこともできない。


 あらゆる手を尽くしたが、身分のいい適役を立てることがどうしてもできなかったので、胸を張ってあまり推薦できない次男坊のユリアスを側仕えとして送り出すことしか方法がなかった。



 人当たりはいいユリアスだが、どこかぼーっとしていて、何を考えているのかわからない。

 勉学はよくできる兄に比べて半分もできず、妹の方がよくできる。

 運動神経はというと、剣を握らせたら防御をとるや否や、自分の剣で自分の腕を切ってしまうというドジっぷりで。

 もちろん喧嘩も弱く、いつもボコボコにされるので、兄が助けに行かないと大変なことになる。

 背はそこそこあって容姿も悪くはないのに、ボサボサの茶髪と黒縁メガネのせいで見た目も貧相貧弱に見えた。

 せめて見た目だけでも、魔導家当主の次男としてちゃんとさせたかったが、誰が何を言ってもユリアスは自分のスタイルを貫いている。


 −−−とまあ、魔導家領地内ではユリアスは本家の残念な次男坊として見られていた。

 


 そんなユリアスだが、決して人望がないわけではない。

 出来が悪くとも、みんなから好かれていて、いつも誰かに声を掛けられている。


 そんな彼を、いろんな勢力が渦巻く王宮に送るなんて――

 

 側仕えの候補者としてユリアスの名前が挙がった瞬間、領地の民衆並びに、当主の側近たちは猛反対した。

 ユリアスを側仕えに送るのは、魔導家の為にも本人の為にもならない、と。

 

 しかし父親はユリアスにもっと公爵家として、魔導家当主の次男として、しっかりしてもらいたいと願っていたので、みんなが反対の意を示す中、ユリアスを側仕えとして送り出すことを独断で決めてしまった。

 もちろん、本人の同意を得ずに――


 「ちゃんと魔導家を継げる立派な長男もしっかり者の長女もいるのだから、自分がしっかりしていなくても何ら問題ないじゃないですか。将来だって、兄の手伝いをしてのんびり過ごすつもりなんで、王宮なんか面倒な場所になんか行きたくないです!」

――なんて、ユリアスもまた強く反発したが、当主である父親に敵うはずもない。


 頑なに拒む息子に対し、

「お前が二週間たたずに返品でもされたら、魔導家のみんながバカにされるんだ。頼むから、魔導家のみんなの為に、家族の為に頑張ってくれないか? このままだと、農民一揆なんてもんが起きる。なんとか王宮に見放されていないことを民に示さないと、私は吊し上げにあう。そんな父親を見たくはないだろう?」


 なんて、目を潤ませながら真剣に当主もとい父親に懇願されたので、首を縦に振るほかなく、ユリアスは魔導家のためと言って、腹をくくることに、しぶしぶ決め、一人王宮に参内したのだった。




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