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追う者と追われる者⑥

「さてと」


 男を縛り終えて、ユリアスは宙にぐるぐる回っている男たちを見上げ、右手を振り下げると、風がピタッと止み、男たちは地面に勢いよく叩きつけられた。

 さすがに殺しては聞きたいことも聞けなくなるので、配慮したつもりだったが、明らかに腕や足が変な方向に曲がっていたり、頭から出血している。


「手加減したつもりだったのに……」


 そう言いながら、ユリアスは一番元気そうな男の胸ぐらを掴み、剣を当てる。


「ひぇ、い、命だけは……どうか……」

「それは、アナタ次第なんだけど。スズランカの横領はだれの命令なのかな?」

「そ、それは、お、おれ、にはわかっ、らない」

「へぇ〜命惜しくないのかなぁ?」


 ユリアスは男の首元にピタリと剣を当てる。

 男はガクガクと震えていて、話す気がないというより本当にしらないようにも見える。

 ユリアスは地面で唸り声を上げている男の中から、エルビンに狙いをかえることにし、さっきと同様この男の脇腹を蹴り気絶させた。

 自分がやられると思ったエルビンは、折れた足と腕を引きずりながら、ドアの方へほふく前進で進んでいくが、そんなのすぐにユリアスに阻まれ、剣で動かせる方の腕を切られた。

 悲鳴が温室に響き渡る。


「小僧……お前、一体…なに…もの、なんだ」

「お前に話す気はない。さっさと黒幕の正体を話すんだ。次は左足だ」

「黒幕を突き詰めたら、お前も殺されるぞ。殺されたくないなら、知らなかったことにしとくんだな」

「今僕に殺されるかもしれないのに、心配してくれてどうも。質問を変えようか。裏で意図を引いているのは、商導家、武導家、それとも魔導家のどれなんだ? 何を条件にこんなことをしている? 魔導家を裏切って、メーテルさんたちを裏切って、その見返りはなんなんだ!?」


 エルビンは急にククククっと笑いだした。

 その笑い声に他の男も賛同し、「これはお気楽な坊っちゃんだ」「これだから貴族の坊っちゃんは」と思い思いの言葉を吐き捨てる。


「なにがおかしい!?」

「魔導家に忠誠なんかあるわけないだろう? こんな貧困で力のない公爵様にだれが仕えるよ? この葉っぱを売って小銭しか稼げない。ここの村人のほとんどは薬を作る薬草はあっても、病気を診る医者すら雇えない。この貧困の領地で見返りを求めるなら一つしかないだろ!?」

「俺らは、みんな一生懸命働いてきた。でも、いつまでたっても、子どもたちに満足に飯をたべさせてやれねーんだよ! お前にはわからないだろうけどな、この気持はよぉ! だれだって、楽して金が稼げるならやるだろ?」

「別に人を殺しているわけじゃない。これくらいのこと、役人たちはやってるさ! なぜ俺らはいけない?! 生きるために仕方ない俺らが、なぜ許されず、役人らは罰せられないんだ?」


 エルビンや他の男たちはユリアスを睨みつけて思い思いの言葉をぶつけた。

 エルビンの腕からは相変わらず血が流れ、地面に血の水たまりができ始めている。


「だからって、横領するのは間違っている! お前らが横領し、この薬草を横流しにしたせいで、小麦が盗まれているんだ。一歩間違えば、幻覚や意識障害で人を殺していた。金がほしいからって……」

「それは、お前が金に困っていないから言えるんだ!!」


 ユリアスは言葉をつまらせた。


 これはあの集落と同じ、やらなきゃ死ぬ……

 生きるか死ぬかのサバイバル――

 そこには道徳的正しさなんて考える余裕はないし、正義を求めれば、こちらが滅びる。

 

 だからといって、このまま見過ごせない。

 「貧困」という状況を見過ごしてきた魔導家の当主の責任も重いが、それ以上に人の弱みに漬け込んで操っているやつが一番許せない。


 ユリアスは剣を地面に突き刺した。


「黒幕はあんたらみたいに『弱み』に漬け込んで、新たな犠牲者を出す。それはだんだんエスカレートして、手がつけられなくなるんだ。そうなる前に、教えてほしい! 黒幕の正体と、ここの主人の居場所を!」



 シュッツ―――


 

 それは一瞬の出来事だった。


 ユリアスが気絶させた男の首を矢が射ぬき、噴水のように血液が噴射した。

 ユリアスの視界も服も赤く染まる。

 

 地面に突き刺した剣を抜き、構えたときには、縄で縛っていた男の胸を、そして、足を折って横たわっている男の胸にも刺さっていた。


 ユリアスは、矢を放った者を懸命に探すが、血が目に入りうまく視野を確保できない。

 そのすきに、その者がユリアスの背後に回って、剣を構えていた。


 キィィィィン―――


 剣の刃が勢いよくぶつかる。

 「はやく逃げろ!」とユリアスはエルビンたちに向かって叫んだ。


 相手はユリアスよりも体格がよく、黒いフードで顔を隠していてよく見えない。

 パワーでは明らかに小柄なユリアスが不利だ。

 それでも、男たちを逃がすためにユリアスは黒いフードを自分に引きつけようと剣で対峙する。



(魔力を使いたいけど、このフードだけ狙うのはこの状況で厳しい……)



 黒いフードはユリアスを力いっぱい押し出し、跳ね除けた。

 ユリアスはその反動で壁に叩きつけられ、地面に崩れた。


 

 




 


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