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6 外交Ⅱ

さーて現実は・・・。


 「フム、お前がN国首相か」


 「は、はい、大統領。お初にお目にかかります」


 ジョーカー大統領にギロリと睨みつけられたN国首相は怖じけづきながらも辛うじて返事をした。


 「で、なんの用件だったかな、用心棒代を全額払うと言いにきたんだったか」


 「いえ、違います!金額は現行のままでお願いします。国民には今までの負担分もこちらの善意と説明してきたのです。増額など理解を得ることができません」


 「ふざけるな!」


 ドンとジョーカー大統領は会談室のテーブルを叩いた。

 チワワ、もといN国首相はビクリと硬直する。


 「貴様、大統領選挙前に儂の対立候補の方にだけ会談をしにいったって話だよなぁ」


 「そ、それは・・・」


 N国首相は顏を真っ青にし冷や汗をダラダラと流しながら言い訳をしようとした。


 「つまりそれは儂にケンカを売ったってことだ。で、負けたから赦してくださいだと?どの顏下げて言ってんだぁ?」


 「・・・」


 N国首相は被せるように凄む相手に絶句するしかなかった。


 「詫び入れてケジメつけんかい!」


 ヤクザのように、いやこれはもうヤクザそのものといった感じでジョーカー大統領が凄む。


 「もうし訳ありませんでした。偉大なる政治家である貴方のことが分からず敵方に与したことは謝ります。どうか平に平にご容赦願います」


 N国首相は椅子から飛び降りじ正座して床に頭を擦り付けるように謝罪した。


 「なんだそれは?」


 「土下座です。我が国の最大級の謝罪の姿勢です」


 「そんな形だけの謝罪はどうでもいい。金だ。金を出して本気の誠意をみせんかい!」


 「エッ、それでは・・・」


 「駐留経費は全額そちら持ち。それと今後いっさい減額はまかりならん」


 「そ、そんな、それはあまりにも酷い」


 「これ以上儂にガタガタ抜かすとI国のようにいちゃもんつけて潰すぞ」


 「そ、それは・・・、わ、分かりました。この進退に賭けてなんとかします」


 かつて行われた合衆国とI国の戦争の無茶苦茶な開戦理由とジョーカー大統領の頭のタガが外れたような公式発言にやりかねないと怖れたN国首相が折れる。


 「では会談は以上だな」


 「待って下さい!」


 席を立とうとしたジョーカー大統領をN国首相が呼び止める。


 「なんだ?これ以上なにかあるのか?」


 「関税自由化協定批准の件です」


 「なんだと?貴様が口出すことではあるまい。こっちの内政の問題だ」


 「しかし貴国の条約批准をアテにして我が国は関連法案の国会承認を終えようとしているところです。今更貴国に抜けられては・・・」


 「くどい!これ以上ガタガタ抜かすと経費を上乗せするぞ!」


 「・・・」


 N国首相は沈黙するしかなかった。


 所詮、世襲政治家3代目の坊っちゃん首相では人を押し退け押し潰してのし上がってきたジョーカー大統領とまともに交渉できる道理もなかったのだ。


 この会談の結果、与野党の猛反発を受けたN国首相が病気を理由に辞職することになるのはまた別の話しである。

外交Ⅲに続く予定です。

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